箱根屋沢 | 鬼川の日誌

箱根屋沢

 西丹沢・箱根屋沢  17,9,22   

 

 

 ここは登攀を楽しめそうな滝が連続する沢だが、F8(F9もか?)はアブミを使う滝として知られている。それでしばらく使ってなかったアブミを持ち出してジムで練習することになった。やはり立ち込み方やレストの仕方などいろいろと扱い方を思い出す必要があった。しばらくやってないと何かとやはり不安があるものだ。

 今回は5名。1人この沢の経験者だがその時はアブミは使わなかった(巻いた)そうだからF8登攀は全員初めてということになる。

 

 箱根橋の傍に車を置いて橋の袂から入渓するからアプローチ歩きゼロである。これは隣の悪沢も同じだが、ここに置くと大滝橋の方に降ってくるからそれから少し歩かなければならないがたいした距離ではない。

 

 

 入渓すると直ぐに左岸に立派な仕事道がある。もしかしたら屏風岩山の管理道途中からここに降れるのかも知れない。また直ぐ先に堰堤がある。9:10頃。

 

 

 堰堤は三つあるが梯子で越えられる。三番目はもう完全に岩に埋め尽くされていて堰堤の上と下が平になっていた。(昭和47年築らしい。)

 

 

 小滝を越えて行くとF1、10mナメ滝。

 

 

 見たところまあ問題なさそうでハーケンがあるという話で取り付いてみる。中間の棚の上辺りに一つ、滝の落ち口下にスリングの付いたものがあった。易しいが高さがあるので一応ロープを固定してフリクションノットで登って来てもらう。

 

 

 先に進むと直ぐにF2らしきが見えるが手前の小滝にロープが下がっている。どうみてもこれは要らないと思うのだが。F2は2段滝で一段目は3mほどの石積み堰堤のようだ。これにはロープがある。10:00頃。

 

 

 段目は4mほどの垂直の滝。右手流れ沿いが登れそうだがシャワーになるので左にぶら下がっている細いトラロープで上がってみた。しかしそこから滝落ち口までが足元ザレの悪いトラバースになる。私は行くしかないので慎重に渡った。皆さんは滝左のコーナーも登れそうだということでロープをセットして登ってもらうことにした。十分ここで登れる。

 

 

 次がF3(9m)である。10:20頃。見た目悪そうだが右手がほぼ階段状。

 

 

 問題なさそうだが一応ロープをお助けで固定する。

 

 

 続いてF4。12mで高さがある。水線沿いは渋そうだが右手が登れそうだ。下部は問題なさそうで上部が(写真では寝て見えるが)立った板壁状で少し手強そう。しかしハーケンはあるということで取り付いてみる。いい位置にハーケンがあり最後に壁を棚に上がる所が少し注意がいるだけで難しくはない。A0するならしっかりしたスリングがある。

 

 

 上から見るとこんな感じです。

 

 

 この上で11時頃まで少し休んで更に進む。なかなかいい感じの沢です。所々に桧か杉の丸太が転がっているが倒木を切ったものではなさそう。上で伐採のチェーンソウの音がするから一部が転がり落ちたもののようだ。もちろん倒木も結構多い。

 

 

 先に小滝が現れるが登るほどでもなく、私は滝左手を登ってみたが皆は滝左側を簡単に巻いていった。この上5,6mほどがF5かな?(以前は2段10mほどの滝だったようだが1段目が埋まってしまったのかな?)皆は滝左から取り付き落ち口を抜けていったが、私は流れの中を直登して抜けた。

 

 

 この上は階段状滝。

 

 

 がF6(8m)滝。F3と同じく黒光りしていて(コケ?)いかにも滑りそうである。私は滝の水線ぎりぎり左を登った。コケもあるが石が黒っぽいようだ。思ったほど滑りはしなかったので難しくはない。

 

 

 ロープをセットして登って来てもらう。ここの終了で11:40を過ぎたかな。

 

 

 この先にF7が見えてきた。

 

 

 滝左の乾いた壁の上のほうに赤い大きな残置スリングらしきがあるが、その途中にハーケンなどあるかどうかはっきり分からない。場合によっては降りることもありで滝右手の登りやすそうなところから取り付く。ちょうど滝中にカムを決めてトラバースして左手の乾いた壁に進んでみるとハーケンがあった。一登りで赤い残置スリングにヌンチャクを掛けることが出来た。これで一段落ではあるがその上の草付き、潅木を掴むまでがちょっと難しい。その一段上あたりの潅木登りで引いてきた25mロープが一杯だという。30mにすればよかった。ちょっと失敗。潅木にロープを固定して師匠に30mロープを持ってフリクションノットで登ってきてもらい、もう一段上の少し安定した立ち木に支点をセットして(結果的にはここまで25mもぎりぎり届いた)後続3人に登ってきてもらった。ここまでの滝では一番大変だったが、どう登るか良くわからないからだった。しかし今回はF8のアブミ登りが目標であるから突破するしかない。(もちろんF7を巻いて再度滝に戻ることは可能であるが。)

 

 

 皆がF7を登り終えてF8(15m)下に到着して少し休憩。F8はつるっとした板状壁でアブミ登りしか抜けようがない。これに取り付いたのは13:10頃になっていた。

 

 

 ハーケンは古いものが多いが沢山打たれている。ハーケンを信用すれば登れるというやつだね。中にはスリングをタイオフしたほうがいいのもある。基本クラックに沿って打たれているので隣のクラックに移るところやちょっと遠い所もあったが架け替えはそう難しくはない。しかし15mほどと高さがあるので結構疲れるしフィフィでレストしながらなので時間が掛かる。

 

 

 私は崖の上から伸びている立ち木の太い枝の下までハーケンが打たれていたのでこれを目指し、最後はこの下向きに這った枝伝い(基本木登り、スリングをタイオフしてずらしながら)に立ち木に到着した。しかしこれから崖に移るところが泥壁でホールドなく一歩が冷や汗ものだった(立ち木に支点は取ったが)。その上もグズグズで悪かった。枝のもっと下辺り(壁の3/4くらい)から左に滝の中に入る方が最後が登り易かった様だしルートはそちらのようだった。

 

 

 上に着いて支点を作りビレイして次の人に登ってきてもらったのだが、私も枝登りで時間が掛かったし、2番手が登ってくるのにも酷く時間が掛かる。下では時間が足りなくなりそうということで、女性2人はアブミ架け替えを練習でやっただけで降りて、F8の右手の崖を巻くことにしたようだ。3番手で師匠が登ってきた時で15時に近くなった。確かにもう時間がない。

 

 

 巻いて崖の上にいる2人と連絡を取り、私たちF8を登った3人もF9を前にしてその右手の崖を登り2人と合流することにした。沢はここまでとする。

 このF9が最も登り難いと言われているようだ。A0でなんとか場合によりここでもアブミを使うこともあるとされているようだが、滝下に近づいてじっくり観察・検討することも出来なかった。しかしその情報源は8年ほど前のもので、その時登り辛かったという滝の左手ののっぺりした壁(の写真)が、今回の写真ではボロボロになっているようで全く様子が違っているのかもしれないし、ハーケンなどもどうなっているか探ってみないと分からない。

 

 

 急な崖を登り上で2人と合流し、屏風岩山の管理道尾根まで登る。この仕事道に出てみるとなんとなく見覚えがあり、今登ってきたのは悪沢の時の降りで間違えて入りおかしいと登り返した尾根だった。あの時強引に進んでいたら箱根屋沢に入ってしまうところだったわけだ。ともかく尾根に出て休憩を兼ねて沢装備を解く。

 尾根はだいたい800m標高地点辺り。地図表記650mへと降る管理道尾根の(下に向かって)右手に小さい尾根が出ているのが分かる。

 登山靴に履き替えて看板のある650m地点(この辺り一帯悪沢の時から間伐・木材の切り出し作業をずっとやっているようだ)が16:05頃で、F9の右手の崖を巻き登り始めてちょうど1時間。この看板の所で道が分岐するのだが大滝沢の林道の方に行く左手ではなく右手(真っ直ぐ)に行くと箱根屋沢の仕事道に出られるかもと伐採作業中の人に聞いてみたが、道はそう単純ではないとかで今日辿るのは無理なようだ。もう時間がない。今日は普通に大滝沢林道に出る。16:20頃。ここから約20分ほどで車を置いた箱根橋に着いた。

 

 

 なんやかやいい時間になってしまった。沢の最後の辺りからぽつぽつ雨が降ったり止んだりしていたが酷くなることはなく車まで帰り着いた。天気予報は下り坂で帰り頃降られるかもと思っていたが持ってくれた。

 

 F8のアブミ登攀を2人が出来なかったが慣れないアブミ登攀は一人ひとりとても時間が掛かる。私たちの力では5人も登るのは無理だった。登れなかった2人にはまたチャンスを見つけて登ってもらいたいものだ。それにF9は登れないかもしれないが探ってもいない。この後の滝は易しいという話だが、詰めにまで行ってないのも心残りだし宿題が残った感じですね。

 

 帰途レストランに寄りご苦労さん会。そして皆さんを駅に送り帰る頃は土砂降りの雨になった。

 

   (了)