スキーの祭典 2
祭典(山スキー) 17,2,19
さて2日目は箕輪山から鉄山の方の枝尾根に登り迷い沢を降るというちょっと厳しいコースを計画していた。何年か前鉄山避難小屋に到達し鉄山山頂を目指したがその先の尾根が風強くあと少しで撤退したことがある。このときはほぼ予定をこなせたからまだよかったのだが、昨年はまるで雪が少なく箕輪山の登りがスキーアイゼンを付けるようなカリカリな上、ブッシュで出来たトラップだらけの酷い斜面で、ガスも深く途中で撤退した。どうもここ箕輪山近辺は鬼門のようである。
案の定今回は天気は悪くはないようだがまた風が強そうである。
リフトトップに上がるととんでもない強風である。猛烈に寒い。私は直ぐにダウンを着込む。板にシールを張り着けて歩きの準備をするうちにこれは尋常ではない風だと思われたので、用意した目出し帽を被る。ともかくシール歩行の用意は出来た。
皆も苦労してシールを貼る作業をしているのだがなかには風に舞い上げられた雪がシール面と板の間に入り込む上、シールの接着力が弱いのかシールを張り付けること自体が上手くいかない人が何人かいた(水洗いができるし軽くて扱いやすいという最近売り出し中のシール)。とうとう接着できず板を担いで登り始める人もいた。また接着力が弱いからか歩いているうちにシールが剥がれてくるとかのトラブルになった人もいた。この強風の斜面の途中では再接着したり、テープを巻いて補強したりする作業自体が酷く厄介なので苦労することになる。
雪面はなんとかスキーアイゼンを着けなくても登れるかというくらいだが硬いカリカリ斜面だし、風に吹き晒されて凹凸激しく波をうっている。その上凍った雪で覆われたブッシュだらけで、ルートを取るのも容易ではない。
リーダーが頑張って引っ張るので皆も必死で着いていく。写真も最初のうちだけで手が冷たくて手袋から手を出す気にならない。そのうち寒さで電池切れになってしまった。
烈風吹きすさびいよいよ厳しいのでリーダーも3分の2程度登ったところで撤退することに決めた。この強風の中でシールを剥がし滑る準備をすること自体もかなり大変である。私は目出し帽を用意していたからまだましだったし、女性陣は顔を覆う用心をしているし顔に化粧で何か塗っているので、それほどではなかったようだが、用意の悪い何人かは顔に軽い凍傷を負ったようだ。
だがさらに問題はこの凍り付いたブッシュだらけ、障害物だらけでスキー板を横にする幅もないようなところ(横滑りも出来ない)、しかもカリカリで面がデコボコと波打っているようなところばかりという、およそ滑るとはいかないところをどう突破するのかこれが大変だった。
横滑りで降りるのが基本だが板を横滑りさせる幅もないところでは後ろ向きにずり降りる(後ろ向き横滑り)。段差を踏み越える。ともかく歩くように進む。少しいい面があればそこで小さくターンする。もちろんキックターンで方向を変える。などなどあらゆる手(足)を使って降っていく。ここでは滑るという概念とは程遠いが、あらゆる事態でともかく板のいい位置に乗っていることが出来るかが勝負。そうでないとバランスを崩してすぐ転倒する。まあ長い距離滑り落ちるようなところではなかったので私は恐怖心はなかった。しかし板に乗っていられない人は全くのお手上げだったようだ。最初から滑りを早めに諦めて板を担いでツボ足で降りた人もいたがそれも賢明な判断(登りからツボ足で着いて来ていた人はそのまま下った)。
ある程度降ってカリカリだがまあ普通の雪面になったところで、早めに降れた人と風の少し弱いところで一緒に皆が降りてくるのを待った。遅れた人たちは手も足も出ずに固まってしまったのだろうか?かなりな時間降りてこないのでやきもきしたがどうしようもなかった。迎えに登り返すしかないかと思い始める頃最後の人たちがブッシュの向こうに顔を出したときはほっとしたね。
ようやく全員揃ったところでスキー場に滑り降り、これを降ってセンターに到着してこの日は早々と終了ということになった。それにしてもあの烈風は厳しかった。冬山の洗礼といったところか。皆も洗礼の水をたっぷり浴びて凍り付いた思いだったろう。今回は撤退して直ぐにスキー場に降れる位置だったから良かったものの、山の途中では遭難の危機となりかねないほどだった。
リーダーもスタートの強風を感じた時点で止めることも考えたようだがやはりそれでははるばるここまで来て不満も出る。十分冬山の烈風の厳しさを思い知ったであろうとき、かつ危なくない時点(これの判断は難しいが)で切り上げるということにしたようだ。昨日より3人少ないとはいえ11人もの大人数をリードするのは実に大変である。