東沢釜ノ沢 4
釜ノ沢東俣 16,10,10 (続き)
両門ノ滝の東俣の滝を右手の藪から巻いていく。20mはある大滝だから巻きも厳しい。いつもは踏み跡を追って大分上に行き、少し滝の落ち口目指して降る。今回はこの上部分をカットして、滝直ぐ横を回りこんでみたが、これはホールド微妙で結構危なかった。足を滑らせれば滝を転げ落ちる。私は何とか慎重に回り込んだが、安全のため皆にはいつもの巻き道の上部にある立ち木にロープをセットして垂らし、これを掴んで回り込んでもらった。
皆が滝上の安全地帯に上がったところで私がまたロープを回収に行く。立ち木まで行きロープを二重にして掴んで滝上に降りたところで、ちょうど巻き道のトップに単独のおっさんが顔を出したので、ロープを使いますかと声を掛けたら使わせてくださいというので貸してやった。おっさんが降りたところでロープを回収する。
この滝の上が本流のヤゲンの滝と右手から迷い沢が合流する地点だ。ナナカマドが赤い実をつけていた。8:30頃。
右手の尾根の巻き道からの薬研(やげん)の滝。これも結構大きな滝(15m)でどうみても登れそうにはない。
この巻き道の最上部(滝の落ち口)辺りも足元が崩壊気味で安全のためロープを固定する。
この上に続いて5,6mほどの豪快に水を落とす滝。これは滝左も登れそうだが、左手の壁にある踏み跡を追って巻く。
巻き終えて河原に降りたところで、師匠が背中を蜂に射されたようだという。季節柄弱り気味の地蜂がザックと背中の間に潜り込んでしまったようだ。幸い一人が毒吸出し器(リムーバー)を持っていたので、休憩がてら治療する。思いもかけないこともあるものだ。
ここで10分ほどは休んでいたと思うが単独のおっさんは現れなかった。この上の左岸台地にテント場に良さそうな場所がある。
休みを除くと魚止ノ滝から約2時間だ。9:10頃。
西沢渓谷入口からおよそ6時間くらいだから、普通に朝東沢を遡り始めれば十分に到達する。朝の2時間の差はかなり大きい。
この先が広河原と呼ばれるゴーロ帯だが、倒木で凄く荒れている。多分14年春の大雪によるものだろう。関東甲信越の一帯の沢はほとんど何処も酷い被害を受けて、きれいな沢が倒木だらけになっている。もともとゴーロで歩きにくいのに倒木が拍車を掛けて最悪だ。余りに酷いので、左岸や右岸の樹林帯にしばしば逃げ込んで進むが、マシとはいえこちらもそう歩き易くはない。
9:20頃。
9:40頃。
10:15頃。紅葉もいまいち。
ゴーロ帯がほぼ終わり先に大きなナメ滝が見えてきたのが10:25頃であるから、ゴーロ通過に1時間10分以上掛かっている。これは大分消耗した。
滝下に10:35頃。東俣は10年以上ぶりだからこの滝の記憶があまりない。滝は右手を登る。難しいところはない。
登ると水師沢の出合である。写真の正面。私たちが滝右手を登っているうちに、追いついてきた単独のお兄さんが左手を登ってきた。倒木に甲武信を指す標識がある。
水師沢を分けて本流側。倒木だらけである。10:50頃。
しばらく倒木の多い急な沢を遡る。この辺から疲れが出てきつくなってくる。
倒木の積み重なった先に最後の大きな滝が見えてきた。この見える滝の上で木賊沢が合流し二俣となっているようだ。11:20頃か。少し休憩する。
休憩場所からそのまま踏み跡を辿って最後の滝の巻き道に入るがこれが結構悪かった。倒木が酷かったことや疲れて滝の近くを登るルートを探ってみることをしなかったが、もっといい登り方があったかもしれない。巻き道は見える滝の上の木賊沢の左岸の尾根をかなり登り、一旦木賊沢に下りてこれを横切り、本流の左岸の尾根を更に登っていく。(写真は木賊沢を渡るところ、踏み跡がある。)
大分登って本流のナメ滝に出る。11:50前頃。
まだ先はずっと続いている。結構コケが生えていて滑る。
予想した5時間になってきた12時頃上の方沢の終点にポンプ小屋が遠く見えてきた。10年以上前にも見た光景だ。先ほどのお兄さんはポンプ小屋にもう着いていた。荷も軽いようだし軽快なものだ。それに比べこちらは疲れ果てて直ぐ上なのになかなか足が進まない。
それでも12:10頃にはようやくポンプ小屋到着。休憩を兼ねここで沢装備を解く。この休憩でようやく息をついた。ここの水は冷たくておいしかった。下山用にも少し汲む。
元気な1人は山頂を往復してくるというので、先発してもらい戸渡り尾根の分岐で落ち合うことにした。私は久しぶりの負荷を掛けた登りでもうよれよれである。他のメンバーも山頂に登る元気はないようだ。少し登って甲武信小屋に12:45頃。
更に遅れた人を待って小屋を出発したのは13時頃になった。私たちが戸渡り尾根分岐で待つまでもなく、元気な1人は山頂を往復して直ぐに合流した。体力の違いを思い知らされる。
この戸渡り尾根は長く段差が深くきつい道だ。またほとんど紅葉もしてなかった。下のほうはシャクナゲのトンネルである。当然今は花はない。次の花芽も少ないようだ。
徳ちゃん新道と近丸新道との分岐に14:50頃だから相当時間が掛かった。これまで近丸新道を降る事が多かったので今回は徳ちゃん新道を降る。歩き始めはヤセ尾根だが降るにつれこちらの方が尾根が広く歩き易いと思う。
見るべき紅葉もなく黙々と降り、16:25頃新道入口に辿り着いた。まだ駐車場までは林道を30分近く掛かる。
17時前には駐車場に着き荷を積み込む。それにしても何とかへたり込まずに辿り着いたけれど、久しぶりに重い荷を担いでの沢登りは大丈夫だろうかと、心配で仕方なかったのだが予想通り酷く草臥れた。その点80歳に近い我が師匠は私より余程元気に歩き通したからまあ凄いの一言。今回は雨模様でやむを得なかったがやはり初日両門ノ滝上のテント場まで行くのが合理的ですな。
途中日帰り温泉でさっぱりして帰るが、高速道路が事故渋滞で酷く時間が掛かった。皆さんを集合場所に下ろしたのが22時頃で、家には23時を過ぎてしまった。運転疲れも重なったが、翌朝全身がバリバリの筋肉痛だった。必死でストレッチして筋肉をほぐし身体を慣らした。2日間は酷かった。やはり普段に歩くこと、それもある程度の負荷をかけた歩きをやってないと、こうした大き目の山行で酷い目にあうことになる。まだ何とか歩き通せたからいいものの、途中でへばりかねない。下手をするともう一泊となる。普通は最低でも2週に一度くらいは山に行っているからこんなに衰えることは余りないのだが。
(了)