八ヶ岳バリエーション
大同心稜、阿弥陀北稜登攀 16,3,19~21
私は大同心稜は09年2月と12年1月に、阿弥陀北稜は09年1月
に登っている。いずれも厳冬期。とりわけ12年1月の大同心稜の時
は順番待ちで岩峰取り付き手前で1時間半。マイナス20度の寒さの
中で実に大変だった。今思っても良く体が動いたものだ。
それからも4年が経つ。09年といえば一昔前となる。
もう私は厳冬期のバリエーションには耐えられそうもない。
今回は両方を登る春山合宿ということで、このところかなり暖かく
なってきたし私でも何とかなりそう。
こうした雪(冬)山バリエーションもアイスクライミングも(こちらは私は
参加してないが)企画が少ないこともありなかなかの人気だ。
今回参加者が初日が12名、2日目は14名とバリエーションとしては
大人数となるそうで、この人数が同じところを登ればそれだけで大渋
滞ということになる。とりわけ阿弥陀北稜の岩場はスタカット登攀せざ
るをえないから、6,7パーティーあるとすればこれだけで1時間以上
の待ちになってしまう。
そこで1日を2班に分けて別々のルートを登ることにしたようだ。
19日電車で移動中は雨だったが、茅野駅に着く頃は晴れてきた。
バスは満員でいつものように美濃戸口から歩き始める。雪が溶けて
水浸しの雪道で歩きにくい。雨上がりのガスで美濃戸ではいつもの
阿弥陀岳も見えない。
美濃戸からの道も酷くびしょびしょのうえ雪も残り結構滑る道だ。
こういう腐れ雪の道にはチェーンアイゼンが役に立つ。
堰堤前広場13:10頃。赤岳鉱泉に行くらしいグループが他にも大
勢いる。3連休でもありまた酷く混むだろう。
今年は何処も雪が少なくもう春山の様相。
14時過ぎいつも大同心を眺められる橋に来ても何も見えない。
赤岳鉱泉14:30頃。アイスキャンディーは賑わっている。
今日は12名もいるので貸切部屋。大勢だとこれが可能だ。
早速持ち寄ったお酒が出て宴会モード。
しかしまず明日の班編成を決める。
Jリーダー班(4名)は初級者の訓練で阿弥陀岳の一般ルートを登る。
(この夏のヨーロッパアルプスに向けての訓練も兼ねてか?)
もう1つ(In班8名)は予定通り大同心稜を登る。この中では私が経
験者なので班全体の先導役を務めることになった。
班を2人1組の4パーティーに編成する。
今山行の直前15日に阿弥陀岳(南稜)で雪崩遭難事故があった。
この時は大同心稜も取り付きまで胸までのラッセルだったそうだ。
今度も今日の朝方まで雪(雨?)の悪天で、明日はいい天気の様で
似たような状況なると少し心配。しかし今度はさほど降ってはいない
と思われ大丈夫そうだ。
必要事項の確認が終わったらいつものように賑やかで楽しい宴会
に突入である。これでほぼ満足なほどだから宿の豪華な夕食後は
もう飲めず早めに寝る。
部屋は厨房の上でとても暖かった。寝るにはちょっと暑かった。
朝食は早いもの順なので昨夜の混雑ぶりから5:30頃から並び始
めた。こういう待ちはいやなもので、出来るものなら土日の混雑は
避けたいのだが仕事を抱えてる人もいるから仕方がない。特に私の
ように「腹に一物?」抱えているのが嫌いで、ともかくすっきり出さない
と一日中不快な思いをするものにとって、朝のお勤めが何より大切。
ところが宿泊者の割にトイレが少ないので大行列が避けられない。
これが大変である。
ともかく皆さんなんとかかんとか頑張って準備を整える。
大同心稜組みは7時少し前に出発する。
ロープが張られ大同心が正面に見える大同心沢入り口は直ぐ。
明瞭な踏み跡が続いている。ちょうど7時頃。
7:20頃には樹間に朝日を浴びた阿弥陀岳が見えてくる。
急な雪稜をゆっくり登る。朝一だしトップの私はそんなに急げない。
しかし道はしっかり踏んでありラッセルということはない。
8時過ぎ頃の赤岳から阿弥陀岳の稜線。奥は中央アルプス。
今日は最高の天気だ。風もない。
朝日に眩しい硫黄岳。小同心岩峰と大同心の基部。
12年には基部を見上げる辺りから行列だったが、今回は私たち
より先には2人組みだけ。この辺で休んでいたので2人を追い越す
とき聞くと小同心にいくというから、私たちの前には誰もいない。
いつもここはガイドパーティー(冬山バリエーション講習会)などで
混むのが当たり前で待ちを覚悟してきたからこれはほとんど奇跡的。
大同心岩峰の基部を回り込む取り付き点に8:30過ぎ頃。
今日は全く寒くはない。これはありがたい。
私の相棒にビレイの準備をしてもらい回りこみルートに入る。
回りこみルートは歩き易い明瞭な道になっていた。途中のランニング
ビレイ支点もしっかりしたロープが用意され、これならコンテでも問題
ないがともかく回り込み終了点までいき相棒にコールする。しかし回り
こんでいるので聞こえないようだ。これまでマルチルートで組んだこと
もない相棒で次の手順を取ってくれているのか分からない。(その辺
の打ち合わせもやってないし、ツルベ登攀は無理だな。)
止むを得ないので終了点にロープを固定して戻る。
ここはそれほど問題ないと分かったので相棒にロープを固定してもら
い、後の3パーティー全員ロープにカラビナを掛けて通過してもらうこ
とにした。後ろから小同心に行く2人も登ってきたし。
私と相棒で終了点でロープを回収しコンテに結び変えている間に
3組に先に進んでもらった。
いつもなら全部雪壁になっているはずの崖も左半分にしか雪がない。
その雪壁の適当な場所で上の崖を乗り越えていくとその上の雪壁
に出るがここも半分草付きが露出している。
中間点にあたる休憩場所でもある棚にはほとんど雪がなかった。
やはり全体に雪が少ない上この間の温かさで溶けたらしい。
9:15頃到着。
私たちが着いたとき大同心岩峰に3人か(?)クライマーが張り付い
ているのが見えた。
後の阿弥陀岳がきれいです。
この棚から右手に回り込んでいくとルンゼ状を越えて行くはずと
進むと、乗り越え用にしっかりと結びが付いたロープが下がってい
て、これでは全く問題ない。
この先岩を登り、草付きを慎重に越えるときれいな雪壁に出た。
ちょっと怖いような大きな一枚バーンで滑落したらえらいことになる。
各組コンテで進む。アイゼンをしっかりと食い込ませピッケルを刺し
一歩一歩確実に登れば問題はない。何とも爽快な斜面である。
一歩がきついが切れ落ちる足元とバックの大展望が素晴らしい。
ところでこのとき9:35ころで、棚から20分近く経ってるのだが、
大同心岩峰に張り付いていた3人組のクライマーがまだ全然進んで
いないようだ。同じところに写っている。その後のことは分からない
のだが相当厳しい場面だったのかもしれない。
小同心岩峰の頭に人が見える。
私たちの最後尾のパーティー。
各パーティー確実に慎重に登ってくる。
硫黄岳の向こうの蓼科山も山頂だけにちょこんと雪が載っている。
雪壁の先、大き目の上の岩峰下がいい棚になっていた。
ここで後続パーティーの登りを待つ。Os組。
Tb組。
In組。皆が棚に着いたのが9:45頃かな。
中央アルプスと北アルプス。大キレットが確認できる。
小同心から登るクライマーたち。
棚からは稜線に直ぐに到着。9:50頃。
相当順調に登れたので時間も早い。大展望を満喫しゆっくり休憩。
富士山も遠くに見えた。峰が二つに見え右は雲の様だ。
この後2組に別れ、1組(5人)の元気組は横岳を登り地蔵尾根を
降るルートへ、私たち3人は硫黄岳を回り鉱泉へ帰るルートを行く。
横岳組は10:10頃に出発した。
5人が目の前の岩峰を登るのを見送ってから私たちも硫黄岳を
目指す。
(続く)
バリエーションは基本はツルベで登らなければならない。とうことは
当然お互いが各ピッチをリード(ビレイ)出来ることが求められる。
いくつかそのペアでマルチのルートを登っていることが望ましい。
お互いが今何をやっているのか、次に自分は何をすればいいのかと
いうことが分からないでは先に進まない。
一番問題になるのはこうしたコールが聞こえないとかいう場合どうする
か、これを事前に確認しておくことなのだが、それなりにペアでの行動
の経験がない限り難しいのである。
今回のようににわか作りのペアになるような場合は、余程お互いが
力がありマルチの経験も豊富な場合を除いて、ツルベなどと力まない
ことだ。大同心稜はほぼコンテで登れるルートだからそう問題ない。
私は大同心稜は09年2月と12年1月に、阿弥陀北稜は09年1月
に登っている。いずれも厳冬期。とりわけ12年1月の大同心稜の時
は順番待ちで岩峰取り付き手前で1時間半。マイナス20度の寒さの
中で実に大変だった。今思っても良く体が動いたものだ。
それからも4年が経つ。09年といえば一昔前となる。
もう私は厳冬期のバリエーションには耐えられそうもない。
今回は両方を登る春山合宿ということで、このところかなり暖かく
なってきたし私でも何とかなりそう。
こうした雪(冬)山バリエーションもアイスクライミングも(こちらは私は
参加してないが)企画が少ないこともありなかなかの人気だ。
今回参加者が初日が12名、2日目は14名とバリエーションとしては
大人数となるそうで、この人数が同じところを登ればそれだけで大渋
滞ということになる。とりわけ阿弥陀北稜の岩場はスタカット登攀せざ
るをえないから、6,7パーティーあるとすればこれだけで1時間以上
の待ちになってしまう。
そこで1日を2班に分けて別々のルートを登ることにしたようだ。
19日電車で移動中は雨だったが、茅野駅に着く頃は晴れてきた。
バスは満員でいつものように美濃戸口から歩き始める。雪が溶けて
水浸しの雪道で歩きにくい。雨上がりのガスで美濃戸ではいつもの
阿弥陀岳も見えない。
美濃戸からの道も酷くびしょびしょのうえ雪も残り結構滑る道だ。
こういう腐れ雪の道にはチェーンアイゼンが役に立つ。
堰堤前広場13:10頃。赤岳鉱泉に行くらしいグループが他にも大
勢いる。3連休でもありまた酷く混むだろう。
今年は何処も雪が少なくもう春山の様相。
14時過ぎいつも大同心を眺められる橋に来ても何も見えない。
赤岳鉱泉14:30頃。アイスキャンディーは賑わっている。
今日は12名もいるので貸切部屋。大勢だとこれが可能だ。
早速持ち寄ったお酒が出て宴会モード。
しかしまず明日の班編成を決める。
Jリーダー班(4名)は初級者の訓練で阿弥陀岳の一般ルートを登る。
(この夏のヨーロッパアルプスに向けての訓練も兼ねてか?)
もう1つ(In班8名)は予定通り大同心稜を登る。この中では私が経
験者なので班全体の先導役を務めることになった。
班を2人1組の4パーティーに編成する。
今山行の直前15日に阿弥陀岳(南稜)で雪崩遭難事故があった。
この時は大同心稜も取り付きまで胸までのラッセルだったそうだ。
今度も今日の朝方まで雪(雨?)の悪天で、明日はいい天気の様で
似たような状況なると少し心配。しかし今度はさほど降ってはいない
と思われ大丈夫そうだ。
必要事項の確認が終わったらいつものように賑やかで楽しい宴会
に突入である。これでほぼ満足なほどだから宿の豪華な夕食後は
もう飲めず早めに寝る。
部屋は厨房の上でとても暖かった。寝るにはちょっと暑かった。
朝食は早いもの順なので昨夜の混雑ぶりから5:30頃から並び始
めた。こういう待ちはいやなもので、出来るものなら土日の混雑は
避けたいのだが仕事を抱えてる人もいるから仕方がない。特に私の
ように「腹に一物?」抱えているのが嫌いで、ともかくすっきり出さない
と一日中不快な思いをするものにとって、朝のお勤めが何より大切。
ところが宿泊者の割にトイレが少ないので大行列が避けられない。
これが大変である。
ともかく皆さんなんとかかんとか頑張って準備を整える。
大同心稜組みは7時少し前に出発する。
ロープが張られ大同心が正面に見える大同心沢入り口は直ぐ。
明瞭な踏み跡が続いている。ちょうど7時頃。
7:20頃には樹間に朝日を浴びた阿弥陀岳が見えてくる。
急な雪稜をゆっくり登る。朝一だしトップの私はそんなに急げない。
しかし道はしっかり踏んでありラッセルということはない。
8時過ぎ頃の赤岳から阿弥陀岳の稜線。奥は中央アルプス。
今日は最高の天気だ。風もない。
朝日に眩しい硫黄岳。小同心岩峰と大同心の基部。
12年には基部を見上げる辺りから行列だったが、今回は私たち
より先には2人組みだけ。この辺で休んでいたので2人を追い越す
とき聞くと小同心にいくというから、私たちの前には誰もいない。
いつもここはガイドパーティー(冬山バリエーション講習会)などで
混むのが当たり前で待ちを覚悟してきたからこれはほとんど奇跡的。
大同心岩峰の基部を回り込む取り付き点に8:30過ぎ頃。
今日は全く寒くはない。これはありがたい。
私の相棒にビレイの準備をしてもらい回りこみルートに入る。
回りこみルートは歩き易い明瞭な道になっていた。途中のランニング
ビレイ支点もしっかりしたロープが用意され、これならコンテでも問題
ないがともかく回り込み終了点までいき相棒にコールする。しかし回り
こんでいるので聞こえないようだ。これまでマルチルートで組んだこと
もない相棒で次の手順を取ってくれているのか分からない。(その辺
の打ち合わせもやってないし、ツルベ登攀は無理だな。)
止むを得ないので終了点にロープを固定して戻る。
ここはそれほど問題ないと分かったので相棒にロープを固定してもら
い、後の3パーティー全員ロープにカラビナを掛けて通過してもらうこ
とにした。後ろから小同心に行く2人も登ってきたし。
私と相棒で終了点でロープを回収しコンテに結び変えている間に
3組に先に進んでもらった。
いつもなら全部雪壁になっているはずの崖も左半分にしか雪がない。
その雪壁の適当な場所で上の崖を乗り越えていくとその上の雪壁
に出るがここも半分草付きが露出している。
中間点にあたる休憩場所でもある棚にはほとんど雪がなかった。
やはり全体に雪が少ない上この間の温かさで溶けたらしい。
9:15頃到着。
私たちが着いたとき大同心岩峰に3人か(?)クライマーが張り付い
ているのが見えた。
後の阿弥陀岳がきれいです。
この棚から右手に回り込んでいくとルンゼ状を越えて行くはずと
進むと、乗り越え用にしっかりと結びが付いたロープが下がってい
て、これでは全く問題ない。
この先岩を登り、草付きを慎重に越えるときれいな雪壁に出た。
ちょっと怖いような大きな一枚バーンで滑落したらえらいことになる。
各組コンテで進む。アイゼンをしっかりと食い込ませピッケルを刺し
一歩一歩確実に登れば問題はない。何とも爽快な斜面である。
一歩がきついが切れ落ちる足元とバックの大展望が素晴らしい。
ところでこのとき9:35ころで、棚から20分近く経ってるのだが、
大同心岩峰に張り付いていた3人組のクライマーがまだ全然進んで
いないようだ。同じところに写っている。その後のことは分からない
のだが相当厳しい場面だったのかもしれない。
小同心岩峰の頭に人が見える。
私たちの最後尾のパーティー。
各パーティー確実に慎重に登ってくる。
硫黄岳の向こうの蓼科山も山頂だけにちょこんと雪が載っている。
雪壁の先、大き目の上の岩峰下がいい棚になっていた。
ここで後続パーティーの登りを待つ。Os組。
Tb組。
In組。皆が棚に着いたのが9:45頃かな。
中央アルプスと北アルプス。大キレットが確認できる。
小同心から登るクライマーたち。
棚からは稜線に直ぐに到着。9:50頃。
相当順調に登れたので時間も早い。大展望を満喫しゆっくり休憩。
富士山も遠くに見えた。峰が二つに見え右は雲の様だ。
この後2組に別れ、1組(5人)の元気組は横岳を登り地蔵尾根を
降るルートへ、私たち3人は硫黄岳を回り鉱泉へ帰るルートを行く。
横岳組は10:10頃に出発した。
5人が目の前の岩峰を登るのを見送ってから私たちも硫黄岳を
目指す。
(続く)
バリエーションは基本はツルベで登らなければならない。とうことは
当然お互いが各ピッチをリード(ビレイ)出来ることが求められる。
いくつかそのペアでマルチのルートを登っていることが望ましい。
お互いが今何をやっているのか、次に自分は何をすればいいのかと
いうことが分からないでは先に進まない。
一番問題になるのはこうしたコールが聞こえないとかいう場合どうする
か、これを事前に確認しておくことなのだが、それなりにペアでの行動
の経験がない限り難しいのである。
今回のようににわか作りのペアになるような場合は、余程お互いが
力がありマルチの経験も豊富な場合を除いて、ツルベなどと力まない
ことだ。大同心稜はほぼコンテで登れるルートだからそう問題ない。