上州武尊岳 | 鬼川の日誌

上州武尊岳

  上州武尊岳山スキー  16、2、10夜~12


  私は今シーズン初めての山スキー。今回は5名。
 車で片品村の宿に着く頃はまだ雪が降っていた。少しまとまって降
 り続いたようで、明日からは晴れの予報で雪崩が心配になる。先日
 ここ前武尊岳で雪崩死亡事故があったばかりだし。またこんな気象
 時に至仏山に入った2人が帰ってこないというニュースが入っていた。

  11日、朝食を済ませて宿の車でオグナほたかスキー場まで送って
 もらう。宿の人に雪崩事故の場所を聞くと私たちが行く荒砥沢より奥
 の方のようだ。

  スキー場のリフトを乗り継いで行く。
 

  4つ目のリフト終点でシールを装着する。
 前面に皇海山から日光白根山、燧ケ岳までの長大なスカイライン。



  9:40過ぎに歩き出す。


  ここはいきなりの急坂が続く。昨夜までの雪がかなり深く積って
 いる。いい天気で登りのアルバイトで汗をかく。


  ボーダーたちも登ってくる。この辺はシラビソかダケカンバ。
 赤城山は近いがその右手奥は秩父の山から八ヶ岳の方面になる?



  今日の雪は湿って重いのでシールに団子が着く場合があるし登り
 にくいようで、キックターンにてこずっている人がいる。苦労している
 人は大体足を広げすぎの場合が多い。抜き足ターンなどが出来る
 上手な人なのだがシーズン初めてだし、シールがいまいち信用なら
 ないのかエッジが立ってしまって滑っている。

  抜き足ターンであれ何であれ、足を広げすぎては下の足を引き付
 けるのがとても大変になる。小さく足を刻んで丸くターンするときの応
 用でシールで頑張れる最大斜度まで両足を出来るだけ立てていき
 (このときストックを後ろに付き補助する)それから足を開けば角度は
 小さくてすむ。(雪質によっては難しい場合もあるが。)開く角が小さ
 ければ下側の足を引き寄せるのも簡単。シールで出来るだけの斜
 度に立ちこむことがポイントだが、シールが信用できないとなかなか
 立てない。

  急斜面を回り込む辺りで燧ケ岳がきれいである。その手前は尾瀬
 岩鞍スキー場のようだ。



  光線の具合で空が真っ青に写る。まもなく山頂。


  登りに少し手こずった分1時間掛かって前武尊山頂。10:45頃。
 銅像がまるで埋まってないから全体として雪は少ない。
 休憩を兼ねシールを剥がして滑走面にワックスを塗り滑走の準備。


  奥に浅間山らしきが見えている。


  山頂を奥へ回りこんでドロップ開始地点に行く。11:10過ぎ。


  さて沢の落ち口に行くが昨夜まで雪が降っていたのでかなり深く
 積もっている。その上酷く湿った重い雪だった。昨年はパウダー
 でとても気持ちのいい斜面だったのだが。
 
  滑り出してみると重くて滑らない。それでつんのめる様に先頭が
 転倒した。転倒すると身体が深く潜って板を外さないと起き上がれ
 ないほどだ。

  その後は律儀に皆さん順番に転倒しては潜り、起き上がるのに
 四苦八苦して、手を貸したり、借りたり。全然進まない。
 私も樹林帯を抜けた辺りで大転倒して雪にはまり込んだ。普通なら
 転倒しても足を板毎持ち上げて板を斜面下側にもって行き、エッジ
 を利かせて立つ事が出来るのだが今回は全然それどころではない。
 文字通りはまり込んだ。皆が先に進んでいたので手を借りることも
 出来ず、結局板を外し、深雪に潜ったときのセオリーどおり、ストッ
 クを十字に置いて身体を支え起き上がるしかなかった。フカフカの
 雪では板を履くのもなかなか大変だ。 



  こうした悪い雪でも上手な若者はほぼ直滑降気味に降りていった。
 私にはあの真似はできないが、滑らないのだから下手なターンで
 躓いているよりは真っ直ぐ降りたほうがいいらしい。

  そんなわけで荒砥沢の源頭部にやっと着いた。この調子では目の
 前の尾根を登り返して越え、武尊牧場の方に行くのは難しそうだ。
 ということで最初の計画は止め源頭部で昼飯休みして荒砥沢を降る
 ことになった。
 12時頃に動き出したか?


  ところが荒砥沢を降るのもかなり四苦八苦。雪が悪いので何でも
 ないところで女性陣がたびたび転ぶ。相変わらず雪は深いので転
 ぶだけで起き上がるのにかなり苦労する。
 要するに酷く時間がかかる。

  しばらくすると私の板の滑走面に雪がべったり張り付きまるで動か
 なくなった。シールを剥がしたときにワックスは塗ったのだが。やむ
 を得ず板を外して雪を落としワックスを塗りなおす。
 そういえば転倒した後板がまるで滑らなかったがあの時あたりから
 付き始めたようだ。板がボロということが大きいのだが雪が湿って
 いる。これでもまた時間を食う。


  何度か沢は渡り返しながら進むが、右岸を進んでいて厳しい崖
 にぶち当たった。無理して渡り転倒などすれば沢に落ち込み雪に
 埋まってしまいそうな崖だった。これは巻くしかないので一歩一歩
 階段登りで上がって行く。雪が深いので板は外せない。
 やばい崖をトラバースして尾根の向こうに出た。
 そういえばここ前武尊岳山スキーでの最初の頃荒砥沢を降ったが、
 こういう崖を越えたことがあったようだと思い出した。
 このときで12:40頃。


  樹林帯の片斜面を滑っていくうちに1人が張り出した木の下に
 板が入ってしまい大転倒。旨く転んだらしく足を痛めるようなことは
 なかったが、これまた抜け出すのは1人では出来ない状態。
 やっと抜け出すもその後もはかばかしくは進まない。


  余りにも進まないし沢の中で平坦になってきたのでシールを付け
 て進む事にした。


  私は最後尾を歩いていたのだが、皆のシール跡から離れて行く
 踏み跡が出て来て何これ?と思い、そちらに目をやるとカモシカが
 崖の下にいるのに気が付いたた。まだ子どもの様だ。余りにも雪
 が深く思うように歩けなかったらしく、シールを付けて後から来た
 リーダーに追いつかれそうになって横に逃げたらしい。人間に追い
 つかれそうになるなど思いもしなかったろうからあわてただろう。
 逃げた先が崖で進退窮まっているようだ。
 まあ最後尾の私が行ってしまえばまた戻ってくるだろう。それにして
 もこうした悪い雪はカモシカの子どもには厳しい試練だろう。無事に
 春を迎えてくれることを祈るばかりだね。


  14:15頃ようやく林道に出た。しかしこれからも長かった。


  沢の中ではずっとリーダーが引っ張ってくれたが、林道では順に
 ラッセルを交代しながら進む。


  この林道は尾根の先端を大きく回り込んでいる。


  スキー場のある尾根へ橋を渡る。


  15:40頃へとへとになってスキー場に到着。きつかった。


  宿に帰り着けばいい風呂とおいしいお酒が待っている。
 この宿の食事は大変おいしくいつも食べきれないくらいのご馳走だ。
 1日苦労した分楽しい宴会でした。

  12日も快晴。同じくオグナほたかスキー場のリフトを使って登る。



  今日はリフトの右手に見える前武尊岳の斜面を滑る予定だ。


  4つ目のリフト終点でシールを付ける。


  リフトの直ぐ上で9:40頃。今日のほうが更に展望がいい。


  あらかじめ上着は脱いで歩き出したがそれでも暑い。春山の様。
 陽光にダケカンバの樹皮がきれいだ。昨日の長丁場の疲れでこの
 登りは私はきつかった。昨日シール登行が不調だった人は今日は
 調子を取り戻したようでがんがん登っている。
 きついけれどこの辺はとても気持ちのいいところ。


  10:10頃、樹間に燧ケ岳がくっきり見える。望遠で引っ張る。
 急斜面の向こうのそれも素晴らしい。


  やがて山頂に続く気持ちのいい斜面。日向ぼっこをしたいくらい。



  この辺りからは至仏山と燧ケ岳が両方見える。
 至仏山に入った2人は遭難したとニュースが入っていた。


  先日の雪で至仏山はとりわけなだらかに真っ白だ。
 燧ケ岳を私たちが滑れるのは5月に近い頃か。
 日光白根山もひときわ目立つ。左下は丸沼高原スキー場か。
 このスキー場の山頂に行くと日光白根山が本当に目の前だ。



  10:20過ぎには前武尊山頂。昨日より20分以上早い。
 同じくシールを取り、滑走の準備。


  赤城山。


  10:45頃には山頂を少し降り左手に回りこんでドロップ地点に。


  ここからスキー場に出るまで20分弱。私は不調で相当ゆっくりと
 降ったのだがあっという間に滑り終わった。写真を撮る余裕もなく
 下に着いてしまった。
 ここの滑りが私は何故だ?と思うほど酷く不調だったのだが、疲れ
 たからとばかり思っていた。しかしそればかりではなくどうやら新し
 い靴に慣れなくて片方がちゃんとスキーモードになっていなかった
 ようだ。これではへぼが滑れるはずもない。


  その後降って昼飯休憩。2人はもうこれで終わり。
 1日券を買った3人は午後ゲレンデスキー。またリフト山頂まで。
 リフト下に無数の動物の足跡。兎の足跡が圧倒的に多い。これは
 良くわかるがその他は知らない。カモシカは大きいのでこれだけ
 雪があれば深く沈んでいるから足跡というよりは人間が通ったかの
 ような深い溝になる。


  ゲレンデではあるがほとんどオフピステ斜面を練習する。私は
 午前中酷く滑りが悪かったから修正する必要もあったし。
 オグナほたかスキー場のリフトすべてに乗り滑れるオフピステ斜面
 をほぼ滑って1日を終えた。


  前武尊の方に向かうリフトの左手にわりと大きなバーンがあり、
 ここのオフピステを2回滑り、3回目に登ったときリフトの終点を管
 理している人が私たちに「山に行ったの?」と話しかけてきた。
 私たちはこの時は空身で、何故私たちが山をやっていると思った
 のかは分からないが、オフピステに2回も入るのを見ていたのかも
 しれない。

  「山の斜面が大きく波打ってなかったか?」これは雪崩の前兆だ
 と心配していた。今年はとにかく雪が悪く事故が起こりやすいらしい。
 昨日と今日私たちの行ったところはそんなことはなかったが、実際
 事故があったばかりだ。話の内容からどうやらこの人は私たちの
 レベル所ではない相当な山スキーヤーらしかった。
 前武尊の事故の装備の不備(3点セット、ビーコン、スコップ、ゾンデ
 棒はもってなくては!)や至仏山の遭難はあの気象で山に入る方
 が問題だし、下から日帰りできるはずがないのにと嘆いていた。
 
  私の今シーズン初めての山スキーは2日間めったにないほどいい
 天気に恵まれた。春山のように暖かかった。しかし全体として今年は
 酷く雪が少ない上、直前に降った雪は湿って重くとても滑りにくい雪で
 手こずらされた。技量が足りないこともまざまざと思い知らされた。
 それはよく分かってはいるけど。
 まあすべてがあつらえた様にいい事ばかりとは行かないのは当たり
 前なのでこんなものでしょう。
 用具の扱いをおろそかにしないことも肝に命じましょう。