城山 | 鬼川の日誌

城山

  城山(南西カンテ)  14,12,13


  いつのまにか今年も終わりに近付きました。年々時間の経過が早く
 なるように感じられるのは、私たちの体内時計の秒針であるタンパク
 質の新陳代謝速度が遅くなるからである。つまり年をとればそれだけ
 新陳代謝は遅くなるのは当然で、私たちが感じる時間の歩みは遅く
 なり、物理的な時間の歩みに付いていけなくなる。だからまだ体内時
 計の感覚では半年くらいが経ったかなという時間で、既に1年が経過
 していることを年末になると自覚させられて、もう1年が終わりかと愚
 痴ることになるわけである。
 こういう説を提出してくれたのが分子生物学者の福岡ハカセであるが、
 これはなるほどと思わせられた。

  また福岡ハカセは『生命とは動的平衡にあるシステムである。』とい
 う説を唱えているのであるが、現在のバイオテクノロジーに対して、そ
 れが決定的な有効性を持ち得ないのは「動的平衡にある生命を機械
 論的に操作するという営為」そのものが不可能だからではないか、又
 私たちはこのデカルト以来の機械論的生命観を克服しなければなら
 ないのではないかという警告を発している。

  今年一杯日本いや世界中を騒がせた「STAP細胞」問題は、理研
 の笹井センター長が自殺するという悲劇を伴い、とうとうその存在は
 科学的には否定された。どうやらその万能性は「(意図的に)混入さ
 れたES細胞のものだった」らしい。意図的となると完全な不正で、誰
 が混入させたのかは分からないとはいうものの、科学的探究とは別
 次元の話となってしまう。明らかにSTAP細胞は今のバイオテクノロ
 ジーの学者たちにとっても逸脱の産物となってしまう。「リケジョの星」
 はまだ若いのにこれからどうなってしまうのだろう。人一人死んでいる
 から問題は深刻である。 
  
  しかし逸脱を指弾する人たちもまた「成果を上げたい、世界に認め
 られたい」とかあるいは「予算獲得を有利にしたい」とか、科学とは別
 次元の動機に濃く彩られて物事を進めていることも否めない事実だ。
 そしてそれが現代に生きる科学者たちのほぼ普通のあり方であり、
 さらに「生命を機械論的に操作する」ということに何の疑問も持って
 ないという点では同じ穴のムジナなのである。

  **  城山

  私たちにも可能なマルチピッチのルートというとそう沢山はないの
 であるが、この城山南西カンテ(5.7、115m)はその一つだと思われる。
 今回5人(3人、2人の2隊)で挑戦することになった。
 先週の谷川岳に引き続き、この週末も強い寒波が襲来し日本海側
 から北海道にかけては大荒れの予報であるが、関東地方は冬晴れ
 ということで出かけた。

  高速を降りて直ぐの公園から城山が間近に見える。


  城山の入口には沢山の車が駐車していたが、南壁には2組5,6人
 が取り付いているくらいで、皆もっと難しい壁に行っているようだ。
 

  私たちが南壁の下で準備していると、見た事のある人を先頭にした
 6人ほどのグループが前を通りかかる。聞くと同じく南西カンテに行く
 という。彼らは登山道を進んで取り付きに行くようで、私たちはこの
 南壁のルートを1ピッチ登って行くので、ちょうどいい時間差になるだ
 ろう。

  この城山南壁の練習ルートは朝一の取り付きとしてはそう易しくな
 い。その中では南西カンテへのトラバース入口に一番近く易しいので、
 私たちはホームボーイ(5.8)に取り付く予定にしていた。ところが既に
 ロープが掛けられ練習中である。やむなく隣のルートに取り付いたが、
 これがグラシアス(5.9+)かアミーゴス(5.9)で私がリードで取り付いた
 がかなり手強かった。テンション混じりで何とか終了点に到達した。
 支点をセットしフォロー2人に登ってもらう。


  もう1組はアミーゴスかとんとん拍子(5.8)を登ってきた。こちらは
 斜上バンドを移動しなければならない。


  私たちが先にトラバースルート入口まで登る。


  トラバースは登山道並みであるが一応スタカットで進む。


  進んでいくと一旦樹木で行き止まりになる。上を見ると垂壁にボルト
 が打ってあるからルートのようだ。(黎明ルート、115m、10a、?)
 しかし1ピン目がかなり上で取り付くのは怖そうだ。
 樹木を掻き分けるようにして先に行くと南西カンテの取りつきである。
 
  ところが先に行ったグループが降ってくる。風が酷くて撤退してきた
 という。確かに凄く強い風が吹いている。懸垂用に降ろしたロープが
 吹き流されてそっぽに落ちている。こういうときは先頭は担いで降り
 ないと、ロープがとんでもないところで引っかかったりしかねない。

  先行Gが撤退し終わったところで、偵察を兼ねてSさんが取り付い
 てみる。しかしやはり風の当る面に出たところで、煽られとても無理
 と降りてきた。それに風に吹かれるととても寒くまともなクライミング
 になりそうもない。これでは私たちも撤退するしかない。


  やはり冬である。北海道の方にある低気圧だからとそれほど影響
 があるとは思わなかったのだが、吹き返しの北西風が凄い。煽られ
 て危ないだけでなくともかく寒い。これではまともなクライミングは無
 理である。そんなわけで残念ながら撤退する。

  取り付きから登山道を辿って南壁まで戻る。ちょうど昼頃。  


  まだ時間も早いので少し練習することにする。
 とんとん拍子(5.8)とブルースカイ(5.9)にロープを張り練習する。


  練習風景です。


  ブルースカイはこのハングの乗り越しが結構厄介でした。
  

  とんとん拍子でもホールドはかなり細かい。


  私もブルースカイのハング越えで苦労しました。


  14時を過ぎるとますます風が強くなりとても寒いので、少し早いが
 切り上げました。
 
  今回残念ながら南西カンテを登ることは出来ませんでした。伊豆
 とはいえ冬は冬です。天気が悪ければやはり寒く、マルチルートは
 登ることは出来ません。
 今度は穏やかな晴天の日を狙って取り付いてみたいものです。