烏帽子岩左稜線 | 鬼川の日誌

烏帽子岩左稜線

  小川山、烏帽子岩左稜線  14,9,22夜~24日


  小川山にマルチの長いルートがあるので、行って見たいという話が
 出てから何ヶ月か経った。このルートはクラックのクライミングとナチュ
 ラルプロテクションを使用するということで、ジムでのクラッククライミン
 グの練習や幕岩正面壁のクラックルート、小川山3峰レモンルート、
 そして太刀岡山左岩稜などに行ってきた。(クラッククライミングとして
 は太刀岡山の3ピッチ目までのクラック登りの方がこの左稜線よりも
 一段難しかった。)

  この間一緒に練習してきた1人が直前軽い怪我をして参加できなく
 なり4人となったが、予定通り22日夜小川山廻り目平に行く。4人な
 らツルベと行きたいところだが、クラックの様子が分からないので、
 カムが足りないかもしれない。それであれこれ考え、ツルベではなく
 リードは1人、ダブルロープにフォロー2人、その1人がもう一本の
 ロープを引き、最後の1人を引き上げるという変則スタイルで行くこと
 にする。リードは交代するので、結び替えが必要となる。時間が掛か
 りそうだが。

  23日朝、8月初めに取り付き口を確認しているので道は迷うことは
 ない。渡渉時6:35頃。

 


  とてもいい天気だ。文字通り烏帽子です。
 


  取り付き口7:20頃。
 準備して朝一最初の取り付きということで私から登り始める。

 


  1ピッチ目(5.6、NP)。ルンゼ状でホールドも豊富そうだ。
 7:25頃。

 


  ここはハーケンはないので、立ち木やカムで支点を作るがほぼ問
 題なくテラスに出る。ここで切ってもいいのだが、余りに何もないので
 目の前の3m程のクラックを登り、その上の立ち木を支点にする。
 しかしここは4人が集まるにはちょっと狭かった。

 


  フォローが登り終ったところで結び替えて2ピッチ目(5.7、NP+
 ハーケン)リードをMさんに行ってもらう。8:00くらいから。
 クラックの右手にハーケンがあったが、潰れていてヌンチャクも細引
 きも通らなかったそうで、結局カムを支点にして登ったそうだ。この
 辺がちょっといやらしい。

 


  2ピッチ目終了点。
 


  3ピッチ目(5.7、NP)はSさんリード。ダブルクラック。スタスタと問
 題なく登って行く。クラックといっても岩ががさがさでわりとホールドを
 見つけ易い。8:35頃。

 


  フォローで続き3ピッチ目終了点。9:00少し前。
 


  次ぎの4ピッチ目(5.8、NP+ハーケン)は譲られて私が行くこと
 になった。少し長いピッチ(40m)だが、クラックではなく立ったフェ
 ースの登りだ。所々ハーケンもある。最後テラスに上がる前がちょっ
 といやらしい所があるが問題ない。(Mさん、Sさんの写真)

 

 


  4ピッチ目終了点の岩に懸垂で降ったのかと思われるスリングと
 環付ビナが残置されていた。ここで降るというのもいまいちピンとこ
 ないが。4の終了点から3の終了点の皆を撮る。9:25頃。
  


  フォローの様子。
 

 


  5ピッチ目はただの岩稜歩き。Tさんが横移動だけでピッチを切って
 しまったので、またリードを交代して登る。6ピッチ目Mさん。

 


  通常とは違ってしまったが、この後の6ピッチ目(ビレイしていて写
 真は撮れず)、7ピッチ目Sさんは樹林帯の中でどこでもピッチを切
 れるので、ロープを目一杯伸ばして距離を稼ぎピッチを切る。

 


  8ピッチ目は私の番だが、この8ピッチ目でほぼ普通のピッチと同
 じくらいになったようだ。この8ピッチからまた樹林帯を抜けて高度感
 溢れる登りとなった。終了点はスラブの頭という感じでしたが、絶景
 ですね。小川山の名だたる岩が総て見える。

 


 


  終了点にはハーケンもあり、手頃な木の根っこもある。
 仲間の登りをビレイする。高度感満点。皆が登っ来たのが12時頃
 になったようだ。

 


  9ピッチ目は満を持してTさんのリードです。取り付きの立ったスラ
 ブ(これも写真を撮れなかった)を登っていく。やがてコールがあり
 フォローで追いかけるとTさんは10ピッチ目「怖いトラバース」の手前
 でピッチを切っていた。これでピッチは同じになったと確認。
 立ったスラブの向こうは下からは全然様子が分からないので、無理
 に進むところではなく当然ピッチを切るところだ。

  私がフォローの一番手だったので、ここでロープをまた結び替えて
 10ピッチ目の怖いトラバースをリードする。ここは狭い棚を立って進
 もうとすると押し出される感じでちょっと無理と思われたので、その棚
 を手のホールドにしてぶら下がり(足はスメア)トラバースする。これ
 でそう問題はない。トラバース自体は短く3、4m程。
 一旦先に進んだがロープが屈曲するのでまた戻り、渡り終えた近く
 の岩を支点に後続をビレイした。トラバースのビレイはこの方が分か
 り易い。その位置から次ぎの11ピッチ目を撮ったのが下の写真です。
 皆がトラバース部を渡り終えたところから、11ピッチ目の取り付きま
 では歩きです。手前が休める棚状になっているので、ここで昼飯休憩。
 12:45頃から。

 


  11ピッチ目Sさんのリード。出だしが両側削げ落ちた狭いリッジを
 渡るので、見た目とても怖いが取り付くと足を乗せる広さはあり全く
 問題ない。このピッチは易しいけれど、かなり爽快な岩稜登りで楽し
 いところです。天空に突き立つ岩登りですね。

 


  Sさんのビレイでフォローが続きます。ここは私が最後で追いかける。
 


 


  12ピッチ目はMさんリード。一旦少し下がってこれまた狭い岩稜を
 登りますがここもホールド豊富です。13:50頃。
 (登っている岩稜の上の垂壁に核心の13ピッチ目クラック。)

 


  12ピッチ目の終了点から11ピッチ目終了点にいる私たち後続を
 Mさんが撮った写真です。気持ちのいい眺めです。

 


  そして核心の13ピッチ目のクラック(5.7、NP)。
 先行の2人組みの登りを待ちます。リードは当然ながらまあまあの
 登りで上りましたが、フォロワーは荷を担いでいることもあるけれど、
 クラック登りはあまりやってないらしくジャミングが出来ないようだ。
 「A0していいですか!」「ダメ!」とか言われながら、もがき登り時間
 が掛かる。

 


  さて私たちの番でこの間一番クラック登りを練習してきたMさんも
 リードしたかったようだが、譲ってもらい私が取り付く。先行組みの
 フォロワーのもがきに目処が付きそうなのを見計らい直ぐ後ろに
 続く。
 このクラックは12ピッチ目の登りの岩稜から少しはみ出ているので、
 (12ピッチ目の写真を見ると分かるが)下はスコーンと切れ落ちて
 いて足元がない。 
 その点は怖いがクラックはちょうどハンドサイズで、足のジャミング
 もよく決まるので何とかなる。それにしてもここはジャミングの技術を
 習得してきたからこそリードで取り付ける所です。
 この間練習して来て良かった。(Sさんが撮ってくれた写真。)

 


  クラックを終えて岩稜を少し移動すると立ち木がありこれにビレイ
 支点を取る。場所も安定している。支点を作ってから下の皆の写真
 を撮る。背景は登ってきた岩峰。一番右のコブの下が怖いトラバー
 スの10ピッチ目で、次ぎのらくだの背が11ピッチ目、そして皆がい
 る所が12ピッチ目終了点。素晴らしい展望。ここで14:35頃。

 


  Sさんがフォローで続きます。(Mさん写す)
 


  Sさんが撮った続くTさんとMさん。
 


  皆さん核心のクラックを登り終える。
 

 


  もうここで15時に近くなっていた。大分時間に押されてきたので、
 結び替えに時間を取られたくなく、交代せず私がトップで行くことに
 する。14ピッチ目はただの歩き。
 15ピッチ目は懸垂下降。しかしここは岩稜伝いに降る必要があり
 振られやすいから要注意。ロープも途中引っかかりそうで投げ下ろ
 せないので担いで降る。25mあれば十分なので、50mロープなら
 1本で結び目を作らないほうが良い。ロープの回収時にクラックなど
 があり引っかかり易いところがあるので、慎重に回収した。
 この懸垂下降には結構時間が掛かった。

  16ピッチ目は出だしのクラックのある岩を登り、その先のナイフ
 リッジをトラバースする。さらに先に見えるチムニーを登る。広いの
 で問題なく、チムニー内のテラスに這い上がる。その右手の岩を上
 がるとまた懸垂下降点があり、これが17ピッチ目となる。
 下はチムニーをテラスに這い上がるところ。後ろが15ピッチ目の
 懸垂下降の岩稜です。

 


  17ピッチ目の懸垂下降後はただの横移動で18ピッチ目を終了。
 この辺は余裕なくほとんど写真を撮れなかった。
 もう時間は16:30近くになっていた。19、20ピッチ目は既に無理。
 これは補足ピッチということでもあり、ここから廻り目平に降れるので
 これで今回は終了とする。

  結果的にはツルベで2隊でもカムが足りないということにはならな
 かったようだし、5ピッチ目以降の易しいところは、1組1本ロープに
 なるがツルベにした方が早く進めたと後から思い当たったりした。
 ともかく変則スタイルだったので結び替えとロープの処理に大分時間
 を取られた。
 まあしかし左稜線を登りたいと話が出てから、クラック登り、ナチュ・
 プロの扱いの練習などを積み重ねてきて、その仲間達の力で念願の
 烏帽子岩左稜線をほぼ完了することが出来たのでとても良かった。
 (19・20ピッチ目は残念だが、今回これなかった人もいることだし
 また次回に行く積もりだ。)

  樹林の中を降り始めるが、途中で踏み跡を見失ったりした。しかし
 右手下方向に降り続けて、およそ1時間程で登り口目印のケルンの
 門に辿り着いた。

 


 


  テントに帰り着いたのは暗くなる寸前だった。ガチャ類をそれぞれ
 整理して、結構寒いので暖かい物に着替えテントに入り落ち着いた。
 忙しかったが手早く用意した鍋を囲み、左稜線成功を祝しての乾杯
 は最高でしたね。しかし長時間の行動で疲れたか余り飲めなかった。
 ともかく目標達成が素直にうれしい。
 
  ところが昨日から少し風邪気味だった私がどうやら疲れたようで、
 この夜から風邪が本格化してしまった。もともと1人次の日は早め
 に帰らねばという話だったこともあり、次の日はどこも登らずテントを
 撤収し帰京することにした。
 せっかく廻り目平の平日でクラックの練習も出来ただろうけど残念。
 私もここ数年風邪を引くこともほとんどなかったのに。黄蓮谷右俣
 の疲労が取りきれなかったのかな。
 
 (まあこの日帰ってから薬を飲んで1日寝ていたらほぼ収まったから
 軽くて済んだが。)