奥穂高岳・南稜 2 | 鬼川の日誌

奥穂高岳・南稜 2

  奥穂高岳・南稜登攀  14,5,4・5  続き


  4日今日はアタックの日である。
 この日蝶ヶ岳から、槍・穂高連峰の朝焼けを見ていた仲間が撮った
 写真である。モルゲンロートが素晴らしい。遠くからはきれいなものだ。


  私たちは装備を整え4:30頃に外に出る。


  もうランプはいらない。


  トリコニー岩峰を目指して登り始める。


  私たちの取り付き点。振り返ると霞沢岳と乗鞍岳。

  5:15頃、班毎にロープを結ぶ。ロープは各隊1本。50mロープ
 3人なので、中央に1人結べば25mは誰でもロープを引いてリードが
 出来る。雪壁はランニング支点は余り取れないし、岩場ではコールが
 届くところでピッチを切りたいから、これくらいあれば十分である。


  取り付き点ではガイド山行らしき若者一隊が先に登っていった。
 ガイドがアイゼンの蹴り込み方をレクチャーしながら登っているから、
 まだ初心者の隊らしい。一旦小ピークに上がり、少し降って次ぎの
 岩がちの薮を越える所でこの隊を追い越して先に進む。
 先行N隊が撮った朝焼けの乗鞍岳をバックにしたK隊。


  先行のN隊が若者隊を追い越していく。


  6時頃休憩。霞沢岳、乗鞍岳、焼岳。


  そして目の上の穂高の岩峰群。


  この辺が取り付きの尾根の斜面の一番上辺りで、これからその
 右手の深い沢状に移動し、この相当立った雪壁を登る。(最初から
 この沢状を登っているパーティーもいる。)沢が終わる辺りからは
 草付きの凍ったいやらしい斜面だ。

  この辺りから先に登っていったN隊と私たちK隊とはすっかり離れ
 離れになった。体力差が出るな。7時頃私たちは少し休憩した。
 素晴らしい景色と高度感。


  私とKさんは前回(6年前)に登った時のイメージがあった。下の写真
 は大分先に進んだN隊が上からK隊を撮ったものである。この時は彼ら
 の声が届いていた。7:40前頃。


  N隊はここで、私たちに上に向かって左手に登れと指示したらしい
 (後で聞いた)のだが、聞き取れなかった。
 しかも私たちは前回、別な一組が右手に回り込んで(第一岩峰を
 大幅に省略して)かなり早く登りきったということが頭にあったのと、
 見覚えのある斜面を登っているということがあった。それで左手に
 あったらしい雪庇の突破口に気が付かずに進んだ。

  やがて前回と同じ難所に差し掛かった。たしか前回はこの難所で
 先のパーティが進まず、1時間近く雪壁の途中で待つことになった
 ところだ。その時はこの頭の上の雪庇を掘りぬき、上の棚に出て、
 第一岩峰に取り付いたはずの所だった。
 前回の私たちと同じように後から来たグループは、私たちが詰まって
 いるので少し戻っていったが、そこに雪庇の突破口があったようで、
 やがて私たちの頭の上を進んでいった。

  下の写真は6年前私たちが待たされた時に撮った写真である。
 右手が詰まっていたので、上に少し上がり、上に見える雪庇を掘り
 ぬいた。写真には右手のハイマツの上の雪壁を登っている人がいる。
 今回はこの人と同じ所を登ったわけだ。(雪庇が前回より大きい
 ように感じたのと、右手を回り込むイメージがあったため。)


  難所に差し掛かったときトップはMさんだった。下が切れ落ちた
 難所だが身体を入れ換える余地がないので、ここは頑張って薮を
 つかみ少しリードしてもらうしかなかった。


  Mさんが安定した場所まで行った所で、私が続きその後トップを
 交代し先に進む。先は一旦崖を降りて、露出したハイマツの凄い
 急斜面となっていた。ともかくハイマツを掴みここを登るしかない。
 前回より大分雪溶けが進んでいたようだ。
 ハイマツから雪の斜面に変わるところで、ハイマツで支点を作り、
 フォローの2人に登ってきてもらう。

  そしてこの先Kさんトップで、雪壁を第一岩峰への取り付き点を
 探しながら登る。取り付けそうなところで、ビレイしてもらい私とMさん
 が続く。下の写真は岩峰取り付き点付近からラストのMさんが登って
 いるところを見下ろしたもの。恐ろしいほどの急雪壁である。
 既に8:30頃。


  第一岩峰に取り付き、ハイマツ斜面を少し登り、各々いい場所を
 探して少し休む。これが9時頃である。


  休憩点からの前穂と明神、そしてその奥。


  岩峰に取り付き登っていくと、私たちの先にいるパーティーが絶えず
 頭の上にいる格好になったので、私たちは岩峰を横から巻き上がる
 形で進んだ。前もこの辺りは巻き上がったかもしれない。
 リードは横に出て進めるかどうか探りながらだが、足元がすっぱり
 切れ落ちているから、なかなか心臓に悪い。所々ホールドの悪い岩も
 ある。こういうところでは手足とも身体を支えられるか十分確認しながら、
 何とか乗りあがり後続をビレイする。




  N隊はなかなか追いついてこない私たちを待ちながら進んで行った
 ようだ。8:50頃にはチムニーでもたついているおっさんグループが
 いたので左側からトラバースして登ったようだ。


  そして早くも9:30頃には第一岩峰最終の頂稜のトラバース地点を
 登っている。ここは厳しいところだ。


  9:50頃には第二岩峰に登ったか。登ったところでも私たちを少し
 待っていたようだ。


  私たちは10時少し前頃に第一岩峰頂稜部に顔を出した。頭の上の
 別グループのアンカーらしきが、岩峰頂稜最後のトラバースをビレイして
 いるようで動かないので、私はその下横の岩場をトラバース気味に登れ
 るか探る。登れそうだと判断してまた巻き上がり、上のビレイヤーの下
 の岩にいい支点を見つけてビレイの態勢を作りコールする。
 ちょうどこのとき上にいたN隊から声が掛かり、ようやくN隊の姿を確認
 できた。
 その時Nさんがビレイする私を撮ったのが下の写真(拡大)である。
  N隊は南稜の頭へ向かって登り始める。10:10頃。


  その時に私の隊3人が並んで岩にぶら下がっているのをNさんが
 撮ったのが下の写真(これも拡大してある)。
 私たちもだが、Nさんの足元も切れ落ちて極めて恐ろしい光景である。
 この2枚はいい記念になる。


  またその時同行Mさんが写してくれた記念すべき一枚。


  この後第一岩峰頂稜部の最後のトラバースを私が引き続きビレイ
 して、Kさんがトップで行く。先でアンカーを打ってビレイしてもらって
 その後二人が続く。ここも恐ろしいところだ。
 頂稜部のトラバース後、これまた両側すっぱりと切れ落ちた雪稜を
 渡って、第二岩峰に取り付く。
 ここはほぼ垂直で、深いバケツはあるものの雪がかなり緩んできて
 掴みどころのない微妙な雪壁となっていたが、慎重に乗りあがる。
 
  私たちも10:40頃には第二岩峰上に上がりこれからの南稜の頭
 を目指した長い雪壁を登り始める。
 所々岩も露出していて斜度があるので、結構悪いところもある。


  11時頃先のグループに追いつき休憩。背景が素晴らしい。


  同じ頃N隊は一段上で休んでいた。


  N隊は11:30頃には南稜の頭を通過している。


  11:40頃には奥穂山頂に到達したようだ。




  私たちはもう少しで南稜の頭というところだった。この頃
 から曇ってきて風も出て寒くなってきた。


  南稜の頭を12時前に通過した。


  Mさんも頑張る。


  これはジャンダルムのようだ。


  12:10前にはようやく山頂に着きました。風が出て寒くN隊は待って
 いられず降ったようだ。


  到着記念写真です。 




  山頂の展望。北方。


  ジャンダルムは威圧的です。踏み跡が見えますね。


  乗鞍、御嶽、中央アルプスか。


  吊尾根から前穂、明神。


  そして笠ヶ岳。


  山頂の展望を満喫しながら休みました。


   (続く)