阿弥陀岳・中央稜 | 鬼川の日誌

阿弥陀岳・中央稜

  阿弥陀岳・中央稜登攀  14,4,5・6



  5日茅野駅集合。タクシーで舟山十字路まで。
 今回は入門とはいえ、冬山バリエーションで12名と大所
 帯である。しかし何名かは夏に事前偵察を兼ねてここを
 登っている。
 

  広河原沢二俣でテント泊なので、荷が重い。


  二俣にテントを張る。少し風があり寒いが外で自己紹介
 を兼ねて宴会。結構皆さんお酒を担いできていて盛り上
 がる。その後テントに入り夕食を取り、またそれぞれの
 テントで宴会話が続く。
 私のテントにはNさんが来て、やはり黒戸尾根の笑えない 
 苦労話になった。
 夜半からは雪が降り出し、明日はまた寒気が入るとか、
 黒戸尾根のこともあるので少し心配である。
 明日の朝は4時出発なので、3時頃には起きなくてはなら
 ない。時間はたっぷりあるが、心配の種があるからかなか
 なか寝付けないものである。


  朝方予定通りに起きて朝食をかき込む。3時頃では
 カップラーメンでも重いくらいだ。その代わり途中で腹が
 減るだろう。ちょこちょこ食べることになる。
 ハーネスを付け、アイゼンを履き、クライミング装備で外
 に出る。まだ完全に真っ暗で雪が降っている。
 しかし思ったほど冷え込んでなく一安心だ。

  4時出発。テント場の目の前の山腹に取り付く。これは
 昨日偵察隊が確認しておいたところだ。山腹はかなり急
 な登りである。50分くらい急登をあえいだところで温度
 調節休憩。こうした山行に慣れてなくハーネスをまだ付け
 てなかった人達はここで付ける。 


  5:30くらいに薄ら明るくなってくる。


  また1時間くらいで休憩。シラビソ樹林帯の深い雪の中。


  6時を過ぎると完全に明るくなる。トップは交代しながら
 ひたすら樹林帯を登っていく。結構な急斜面の登りが続く。
 踏み跡はまったくないから、夏にここを登った経験が生か
 されたということのようだ。
 この辺で撮った写真の色がおかしい。


  やがて上に見える岩(第一岩峰)を目指しての急登と
 なる。これが6:10頃である。 


  岩の基部から右手に岩峰を巻くのだが、一歩が厳しい
 らしく先頭がなかなか進めない。少し下からトラバース
 気味に取り付いたほうがいいかもと、私が進んでみたが
 そのうち先頭のバッター交代で上が進み始めた。私もすぐ
 トラバースを止めて上に行きこれに合流。
 ここは基部を忠実に回り込む。棚になっている。
 6:30頃。


  巻いたところでルンゼ状の急雪壁を登る。行く手が樹林
 に阻まれるが、上に第二岩峰が見えているので、シラビソ
 の密な枝を掻き分けて岩峰下を目指す。


  ここでは先頭が少し登りすぎた。ここだと岩峰を左に巻
 くはずが、左手は越えられそうにない岩壁にぶち当たる
 ことになる。後ろの人が少し降って沢状をトラバースする
 ルート(テープ)を見つける。


  第二岩峰はその左手の急雪壁を巻き気味に登っていく。
 相当に急である。6:55頃。


  第二岩峰の上に出たところで休憩。7:10頃。
 雪は降るし辺り一帯はガスに包まれ何も見えない。気温
 も下がり寒くなり、厳しい冬山の様相となってきた。


  岩っぽい雪壁を登り詰めていくと、やがてハイマツ帯を
 登るようになり、尾根が判然としないが上へ上へ歩き易
 いところを探しながら進む。


  いよいよ山頂に近づくとかなり悪い岩っぽい壁を越える。
 先頭が頑張って道を切り開く。(後で降りの場面の写真を
 仲間が撮ってくれたところで結構悪かった。)
 これを越えると御小屋尾根との分岐点で標識がある。

  この辺りは両側が鋭く切れ落ちている。これを進み一度
 登りかけた小さな岩峰を巻き気味に進む。その先も小さ
 な岩のピークとなりその先が悪いらしく、リーダーがロープ
 を張る工作をしているようで、歩みがストップする。
 私はこの辺最後尾で待つ。
 夏にこの御小屋尾根を阿弥陀岳の山頂から降ったとき
 には想像もできないほどの雪稜・雪壁になっていて驚く。  



  このとき一瞬の晴れ間がでた。8:15頃。


  ロープを引きリードするNさんが微かに写っている。
 右手は大きく鋭く切れ落ちている。


  Nさんはロープ一杯でバイルを刺してアンカーにして
 ロープをフィックスし、皆が順にカラビナを掛けて通過する
 のを支えてくれた。 


  阿弥陀岳山頂はすぐ上である。8:30頃には到着。
 Nさんは帰りに皆が通過するのでそのままの体勢で待っ
 ていてくれた。


  山頂も一瞬は晴れるが全体に雲がかかり展望はない。
 誰かが甲斐駒ケ岳が見えたといったが、私は見逃した。


  山頂も寒いし展望もなく、早々に引き上げる。


  またNさんのセットしたフィックスロープにカラビナを掛け
 元の岩峰に帰り着く。
 その先から振り返った阿弥陀岳山頂。8:50頃。


  御小屋尾根との分岐を過ぎてから、悪かった岩稜を通
 過するのも、リーダーがビレイしてNさんがリードで降り、
 ロープをフィックスした。皆はこれにカラビナを掛けて降る。
 結構悪い。
 仲間の下の写真はその岩稜の通過の場面である。
 これはとても絵になるいい写真だ。風も結構吹いていると
 分かる。これも一瞬の晴れ間だった。右手の割れピーク
 の岩峰が山頂へのフィックスロープを張ったところ。その
 すぐ右が阿弥陀岳の山頂がある。9時頃。


  これからハイマツ帯を踏み跡を追って過ぎ、第二岩峰の
 急雪壁をバックステップで慎重に降る。基本先に降った人
 と同じところに足を蹴り込むのがいいのだが、歩幅が違う
 し見え辛い。それで余りこだわらず、蹴り込み易い所に蹴
 り込んで自分の前爪の先端にしっかり立つことを心がける
 方がいい。
 後ろ向きから前向きに切り替えるところがまた問題だ。

  岩峰下からルンゼを降り、第一岩峰の基部の棚を回り
 こんで、また急な部分をバックステップで降る。ここは
 短い。これを過ぎればほぼ危ない部分は終わりである。

  段々緩やかになってくる。10:20頃。


  
  ほとんどシラビソとダケカンバの樹林帯。ダケカンバの
 幹は赤っぽくていい色をしている。


  10:30頃少し休憩して、テント場に11:10頃に到着。
 4時頃出発したから7時間強で往復出来た。トラブルも
 なく皆さん順調に頑張ったから立派なものだ。
 テントに薄く雪が積もっていた。




  さてこれからテントを撤収するのだが、時折雪が激しく
 なったりして、天気が更に悪くなっているようだ。
 片付ける間も結構手が冷たかった。
 それにしても余りいい天気ではなかったけれど、酷くは
 ならないうちに登頂でき、降り付いて良かった。なにより
 風があまり強くはならなかったので助かった。
 茅野駅に着いて、電車を待つ間かなり激しい吹雪となり、
 遅くなっていたら厳しかったかもと思わされた。
 朝早く出て正解だった。
  
  重い荷を担いで舟山十字路へ降る。
 わずかな時間だけど重いものを担ぐと辛く感じて、この頃
 はすっかり荷に耐えられなくなっている事が良く分かる。
 定点にテントを張るまで頑張るのでやっとだとつくづく思う
 ようになってしまった。テントを担いでの長期縦走はもう
 無理なのかもしれない。

  今回はNさんに大分お世話になった。

  (いい写真はほとんど仲間のものです。)