大きさと形  | 鬼川の日誌

 大きさと形 

  1月24日滝子山寂廠尾根からの南アルプス。とてもいい天気で陽だまりハイクでした。
  


鬼川の山行日誌と独り言




   大きさと形

 (1) どんな物体もその形が変わらなければ単に大きさが大きくなる
 ことだけで体積に対する表面積の比率はどんどん減少する。
  
  たとえば一辺の長さnの立方体を考えれば

 表面積/体積=6xnの2乗/nの3乗=6/n
 
  nがどんどん大きくなればこの値はどんどん小さくなる。
 要は表面積は長さの2乗に比例してしか増加しないのに体積は
 長さの3乗に
比例して増加するからである。

  よく知られていることだが同じ熊でも寒い地方に住む熊ほど
 体が大きい。ツキノワグマよりヒグマそれよりもシロクマ。
 
  一見すると大きい方が外気に曝される面積も大きいのだが体積
 に対する表面積の比率では小さくなるので単位体積あたりの熱の
 産出がほぼ同じとすればでかい方が有利なわけだ。

 (長さnが2倍になれば単位体積当たりの表面積は半分になる。)

  これが熊だけでなく虎もそうだが一般に寒い地方の動物の方が
 大きいことの基本的な理由なのだそうだ。

 
 (2) 逆に大型で複雑な生物が次第に進化してくるに際しては、
 体表面に依存する様々な機能を、表面積が相対的に減少する
 なかで何らかの形でカバーしなければ相対的に増大するからだの
 全体重を支えきれなくなる。
 
  消化された食物は体表面を通って中に入るし、呼吸された酸素
 は体表面を通して吸収される。

  そこで体の内部器官が発達してくることになる。肺というのは
 本質的にはガス交換をするために体表面が複雑に内部に陥入
 した1個の袋であるし、
 循環器系は物質を大型生物の体表面から直接拡散しても届かない
 内部に配達するためのものである。

  われわれの小腸の絨毛は食物を吸収するために利用できる
 表面積を増加させている。
 小型の哺乳類はこれをもっていないし必要ともしないのだそうだ。

  「比較解剖学はだいたいにおいて体積に比例して表面積を
 増やそうという努力についてのお話である」とある生物学者は
 言っている。
 
  
 (3) 星の場合も事情は基本的に同じである。
 月の大きさと地球の大きさは直径で約4倍ほどの差がある。
 月の半径をrとすると
 表面積ではr²と(4r)²とで16倍
 体積ではr³と(4r)³で64倍の差となる。
 (平均密度も違うようで相対質量は100倍近いそうだ。)
 
  単位体積当たりでは月の方が地球より4倍も面積が広いこと
 になり、体積当たりの内部熱量が同じとしても月の方が4倍も
 熱を失い易い。
 
  また表面の大気に対する引力は質量に比例し、半径の2乗に
 反比例する。
 月の質量をMとすると月面上の引力と地球上の引力の比はM/r²対
 100M/(4r)²となり月面では地球の16/100ほぼ16%の引力しかない。
 これが月が大気を保持できない理由であるそうだ。
 (大気がなければ余計熱は逃げていく。)

  地球の大きさがその位置とともに大きな意味を持っている。