自殺を防ぐために:高橋祥友著『自殺予防』 | “迷い”と“願い”の街角で

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ご存知のように、日本では現在、毎年3万人以上の方が自殺により亡くなっており、多くの場合、自殺の背景には、心の病があるということも、広く知られてきているところです。


高橋祥友著『自殺予防』では、自殺問題の基本を押さえるように、日本や世界における自殺の現状、自殺者の心理や自殺と心の病との関係、各国の対応のほか、自殺者遺族へのサポートについて書かれています。どうしても固めの内容の本であり、情けないことに、なかなか頭にも入ってこないのですが、強く印象に残るとともに、これだけでも社会に広まれば大分状況も違ってくるのではないかと思う内容がありました。


自殺を予防すべきという発想について、極端に言えば、自殺は本人の意思によるものであり、防ぐことは不可能であり不要であるとの反対意見も存するように思います。


これに対し、本書では、「自殺はけっして自由意思に基づいて選択された死ではなく、むしろ、ほとんどの場合、さまざまな問題を抱えた末の「強制された死」である」とします。だからこそ、自殺を防ぐ必要もあれば、問題を取り除くこと等による予防も可能な場合が多々あると言えるのでしょう。


また、自殺は、その遺族にも大きな影響を及ぼします。これについては、以前、カーラ・ファイン著:飛田野裕子訳『さよならも言わずに逝ったあなたへ―自殺が遺族に残すもの』 を、ご紹介したことがあります。自殺は、その原因も、影響も、本人のみに限られたものではありません。


また、本書でも触れられていますが、「『死ぬ、死ぬ』と言っている人間は、死なない」という言説は誤解であり、このことは、近時、広く知られるようになってきました。少しでも多くの人が、種々の誤解を捨て、「強制された死」としての自殺の現状さえ認識できれば、自殺へ引きよされられそうになる人を繋ぎとめ、様々な自殺対策が効果を発揮する土壌となるように思います。



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