※これは妄想腐小説です BL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~
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この家に“ただいま”というようになって、1ヶ月が経った。
何がどこにあるかはもう覚えたし、俺の部屋だと用意された所にも慣れてよく眠れている。
そして腹が減って立てなくなるなんて事もなくなった。
ただ、こんな快適に過ごさせてもらっていいのか……というのは毎日思う。
『……』
「フッ、またそんな顔をしていたら大野さんにお菓子攻撃されますよ?」
お菓子攻撃…
1回出されたおやつが高そうで遠慮したら、次の日にはおやつの時間関係なく何個も大野さんに手渡されたんだよな…
『…すみません…』
「フッ、その無理に頑張る敬語も直りませんね。」
『…でも、これは……』
「私が正式に家庭裁判所に認められて後見人になったからって、無理はしなくていいんですよ?
敬って欲しいとかというのも一切ありませんし、寧ろ普段通りの大嶺君で過ごして欲しいと思っているんですから。」
…そう、俺の親代わりになってくれたのはこの綾野さんだった。
本当は大野さんだと思っていた。
大野さんがなってくれるもんだと…
だって俺が頼った大人は大野さんだったから…
だけど、その事については成瀬さんが色々説明してくれた。
綾野さんは社長という肩書きがあって家庭裁判所を納得させるのに早く済むという事や、緊急時に直ぐ駆けつけられるくらい時間に融通がきくし、運転免許を持っている事も大きいらしい。
そして大野さんと違い、綾野さんなら相談員みたいな他人とも話す事ができるというのが1番みたいだった。
大野さんは人が嫌いらしいから…
成瀬さんの話しの中で、それに俺は1番驚いた。
だって、それならなんで俺に話しかけたり俺を心配してくれたりしたんだって…
でも成瀬さんはこう言ってくれた。
〚そういう惺史君が連れてきた君だから、俺達も君の力になりたいと思ったんだよ。
そこに一切の疑いが湧かないくらい惺史君は人をよく見ているからね。〛
それで納得できた事もあった。
初めてこの家に来た時に、どうしてあそこまで初対面の人達が俺の事を迎え入れてくれたかという事を。
そして成瀬さんはこうも言ってくれた。
〚書類上は綾野君になるけど、君の側には変わらず惺史君がいてくれる。
だから君も変わらなくていいんだ。君が選んだ惺史君は絶対に嘘をつかない信用できる人だから。
君はいい人に出逢えたと私も思うよ。〛
と……。
その言葉で俺は安心できた気がした。
俺は大野さんに見捨てられた訳じゃないんだって……
「…その様子だと気を緩めるにはまだ早いみたいですね。
私もいつか大野さんのように話してもらえる日がくるんでしょうかね?フフ。」
『…綾野さんも……敬語ですよね?』
「私のこれは癖のようなものですから今更直りませんね。」
『…大野さんは歳が近く見えるので…その……話しやすくて……』
「ああ、なるほど。
私も若作りした方がよければなにか__ 」
『そんなのしなくていいから!』
「…おや?」
『あ……』
「フフ。そろそろからかうのは辞めにしましょうね。
さ、出来ましたよ。
では、これをお重に詰めるのを手伝ってもらえますか?」
『…凄い……これがTVとかで見るおせち…になるんですか?』
「そうです。大嶺君の好きなように詰めて下さいね。」
『…でも俺、こういうの初めてで__ 』
「何事も最初というのはありますよ。
上手くやろうとしなくていいんです。大嶺君が思う通りで。
それに毎年作っている物なので大嶺君にも見せたいなというのが1番ですからね。」
『…毎年……』
「フフ。来年は大嶺君に料理の手伝いをお願いするかもしれませんね。」
来年か……
『…はい。来年は…手伝います。』
「っ!…嬉しいです。楽しみですね。」
今年が終わるのに、1年後の話しをするなんてなんか不思議な気分だ…
だけど……
楽しみだと俺もそう思うんだから…不思議だな……ハハ。