※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























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スッ
〖おい?大丈夫か?寒いのか?〗










僕が震えている事を心配してくれた彼は、僕の背中に手を当ててそう言ってくれた…











『大丈夫、寒い訳じゃないから……』



〖…じゃあ、怖くて震えてんのか?〗



『……怖い…か……ある意味そうかもね……』



〖あん?どっちなんだ?〗



『……』



〖あ、あの人間に逃げられちまったな…でも今から行けばまだ間に合うか?〗



ギュ
『…行かないで。』



〖お前、さっきからなんなんだ?
ああいうのは捕まえた方がいいだろ?〗



『……僕が…困るんだ。』



〖は?〗



『今、あなたに行かれると困る……グッ……動き出さないようにしっかりと僕を押さえててくれないと……』



〖っ、お前……もしかして怒って震えてたのか…?〗














そうだね……


握った手がちょっと痛いね……





でも、今にも走り出しそうになってる足を必死に止める位、理性というものがあるから、まだ冷静でいられてると思うよ……













『…あなたは“なんでも屋”さんの人…で、いいんだよね?』












じゃなかったら、僕が困るんだけど…












〖ん?ああ、そうだぞ?だからこうしてお前の側にいんだろ?〗



『良かった……なら、なんか話して?』



〖……は?〗



『なんか楽しい話し…して?』













急に何言ってるんだ…って、なるよね。


でも、何かで気を紛らわせないと僕、本当に困るんだ…







じゃないと、追いかけて蹴り倒してでも捕まえて…あの人に何をするか分からないから………









だって、今まで頑張って耐えてきたんだ。






“僕から近寄って無理矢理に誘った…” なんて嘘を言われ、“関係を続けてくれなきゃ奥さんや会社にバラす…” なんて言ってもいない事を言ったと言われて……


“脅迫されたから仕方なく関係を続けるしかなかった” なんて大勢の前で言葉を口から出したあの男に、僕は沸き起こる怒りをぶつけないようにと頑張って耐えてきたんだ……











それなのに、あの人はのこのこと僕の前に現れた……











会わないように…

いや、会えないようにと書面で取り決められた事や他の事も僕は全て律儀に守ってきたっていうのに……












ギリッ
『…なんな…の……』



〖……〗












暴力って大嫌いなのに…自分がしてしまいそうになるのが怖い…


そんな事をしたら、僕の周りの人に沢山迷惑をかける事が分かっているのに…抑えられるか自信がないのが……怖い……






楽しくいたい…

楽しくありたい…



楽しい事で心も体もいっぱいにして、怒りなんてどこ吹く風で軽く流せる、そんな人間になりたいって思って生きてきたのに……








あの人の顔を見た瞬間、驚きの次は直ぐにぶわっと怒りが沸き起こったんだ……



僕、全然まだまだ……ダメだな……













〖…なぁ?さっき逃げた人間ってお前の知ってる奴?〗



『……』



〖…そっか。
楽しい話しなぁ~……なんかあっかな?〗



『……してくれるの?』



〖お前がしろって言ったんだろ?〗












…なんだろ、この人……


初対面なのに…居心地いいというか、なんか空気感がすっごい楽なんだけど…?











〖俺、ヒロと違ってそういうの直ぐに思いつかな……あ、あるわ。〗











あるんだ……?










〖あのな?昔、風神と風を使ってどこまで空高く上がるかっつう遊びをしてたんだわ。〗










……はい?……風神?









〖で、結構上まで行ったんだけど、その先に丁度層の厚い雲があってよぉ~。〗









……雲って、あの空にある雲?










〖そこに突っ込んだら全身ビチャビチャになったんだわ。
着物なんて絞れるんじゃねえかな?ってくらいにな。
でも、地上に戻ってきたら乾いてたんだよ。
落ちてくる間に乾くって…な、面白くね?〗











……ごめん……どこらへんが面白いのか僕には分かんない。


というか、なんか楽しいっていうより不思議な話ししてない?









〖あん?これじゃダメってか?でも、他には……あ、あるわ。〗











まだ、あるんだ!?


直ぐに思いつかないとか言ってなかった?










〖この前、依頼でヒロと空き家に行ってきたんだけどよ~?〗










いや、“ヒロ”って誰!?



でも、依頼でって事は“なんでも屋”さんのもう1人の人かな~?

ロクちゃんが他に2人いるって言ってたし。











〖空き家っつっても数年前までは人間が住んでて、家具とか色々まだある家だったんだわ。
で、そこで失せ物探ししたんだけど……〗










失せ物…?

あ、なくしちゃった物か~。










『見つかったの…?』



〖ああ、失せ物は直ぐに見つかった。つうか取りに行ったって方が正しいしな。〗



『それは良かったねぇ~。』



〖ああ。その時点で依頼の方は達成だったんだけどな?
ヒロがなんか家の中で物音がするってビビりはじめて…〗



『……え?』











誰もいない空き家なのに物音って……


それってまさか___










〖だから俺、その音がする部屋はここだぞ?ってある部屋のドアを開けてヒロに教えてやったんだわ。〗



『っ!』



〖そしたらヒロがすんげぇ大声で叫んで、中の奴も驚いて叫んでた。〗



『怖かったらそりゃ叫ぶって!……って、え?中の奴?』










…え?

まさか、見えちゃったの…?












〖おう。どっかの人間のおっさんが勝手に住んでたんだわ、そこ。
な、面白いだろ?〗










まさかの人間っ!?










『っ!面白くないよ!怖いよっ!そりゃ叫ぶよ!!』



〖お前もかよ。ただの人間だぞ?〗



『おっさんは怖いよ!まだお化けの方がいいよ!』



〖へ~?ヒロはどっちも嫌だっつってたけどな~。〗



『嫌で言ったら僕もそのヒロさんと同じでどっちも嫌だから!』



〖…おい。ヒロはやらねぇぞ。〗



『急になんの話し!?』



〖お前がヒロと同じとか言うからだろ。〗



『だからなんの話し!?』



〖ヒロは俺のだ。で、俺はヒロのだ。〗










そっちね!












『取らないよ!』



〖ならいい。〗



『……はぁ~』










もぉ……


でも、なんかちょっと疲れたけど……











 
〖震え止まったな。〗



『っ!』



〖やっぱり俺の話が面白かったって事だろう?よくやった、俺。〗



『……プッ、アハハハ♪』










なにそれ…

話しとかじゃなくて、あなたが面白いから!





ほんと、この人といるの楽だわぁ~。











『ふふ♪本当にありがとぉ。』



〖また話しをしてやってもいいぞ。〗



『アハハハ♪じゃあお願いするよぉ~……って、あなたの名前は?』



〖藍だ。〗



『らん?』



〖ああ。〗



『分かった。ありがとぉランちゃん♪』



〖……ちゃん?〗



『うん、“ランちゃん”に決定~♪』



〖…ま、いいけど。〗



『ランちゃん、本当にありがとぉ。
さっきのムチャ振りした話しもそうだけど、あの人が走ってきた時…守ろうとしてくれた事も……』



〖それが今日の俺の仕事だから礼はいらない。〗



『…それでも、ありがとぉはちゃんと言いたい。』



〖じゃあ…どうも?〗



『うん。…それでね、ランちゃん?
ちょっとお願いあるんだけど、いいかなぁ?』



〖また面白い話しか?〗



『いや、今日の分はもう十分だよぉ~。
ほら僕、もぉなんか元気になったでしょ?』



〖完全体じゃねえんだろ?それ。〗



『…ランちゃん、なんか鋭いねぇ?』



〖で、どうするんだ?
このまま家に帰れんのか?それともどっか行くか?〗



『…ランちゃん……本当に鋭いね…』



〖いや、待ち伏せされた家には帰りたくねぇだろ…って、コレが言ってっから。〗



『…これ?』



トントン
〖コレ。〗










あ、ワイヤレスイヤホン…?


って事は誰かと通信中って事?










〖ああ、相手は俺のヒロだぞ。〗



『俺のって……僕、本当にとらないからね?』



〖ああ、やんねぇから大丈夫だ。〗



『もぉ……んふふ♪』



〖で、どうしたいんだ?〗



『あ、うん。あのね?これから連絡してみようと思うんだけど…もし会える事になったら一緒にその人の所まで行ってくれないかな?
で、それランちゃんのお仕事的に大丈夫?』



〖俺達は問題ない。
あの逃げた奴が知ってるこの場所にはいない方がいいと、ヒロも言ってるしな。
よし、じゃあさっさと連絡しろ。〗











ハハハ。

なんか、ランちゃんの言い方ってツボるんだよねぇ…





でも、うん…ありがとぉ。


あ、会った事もないヒロちゃんもありがとぉ。






僕、やっぱりね?ランちゃんに楽しませてもらったとしても、こんな時に部屋で1人で寝れる気がしないんだよね……







だから……









タン  タン…



purururu-purururu-pu……










《はい。》



『もしもし…櫻木 翔琉?』



《フッ、ああ。
智早から電話もらえるなんて珍しいな?もう家に着いたのか?》



『……会いたい。』



《!》



『今から…櫻木 翔琉に会いに行っていい?』