※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























~Blue~







凄く不思議な感覚だった…




窓の向こうは雨が降っているのに、さっきまでの薄暗さもなくて今は明るく、水滴も一粒一粒が光輝いているように見える…


お天気雨の時のようにも見えるけど、それともまた違って…綺麗だと見いってしまうような…感じ……








そして、その雨が打ち付けるはずの音も僕には聞こえなくなっていた…


外ではあんなに雨が降っているのに、さっきは雷までなっていたのに……






どうして……?









フワッ…


それに、この真綿のような物で包まれているような感覚はなに…?





暴れた時にソファーから落ちたのか今は床に座っている状態で、自分が座っていると分かるんだけど…軽くなって少し体が浮いているような……そんなよく分からない感じ……


頭では驚いているんだけど、それが全く嫌じゃなくて寧ろ心地いいから受け入れている…みたいな…?











どちらにしろ、はっきり見えているし、はっきり頭で考えられるし、周りを感じられている…

そして外の雨音が聞こえなくなっただけで、この家の中でしている足音や、ちょっと遠くの話し声もちゃんと聞こえている…






おじさんの奥さん、洗濯物が濡れなくて喜んでる…


他にも人がいるの…?




誰かの話し声…




そして直ぐ近くから感じる視線…









さっきは嫌な事を思い出して、そればかりが頭を占めていたけど、今は雨が降っているのにこんなに落ち着いて周りが見える…










『…壱智さん…おじさん…ごめんなさい。』



〖あ!智君!…ホッ、良かった…
ううん、いいんだよ智君。
僕の方こそ焦って思わず体を押さえちゃってごめんね?
惺史君に言われて、あ!って気づかされたよ…更に嫌な気持ちにさせちゃってごめんね?〗



『っ…そんな事……これは全部僕が…思い出してしまう僕が…弱くて悪いから……』



〖そんな事ないよ!智君が悪いわけない!〗











…ううん……僕だよ……



蒸し暑い日に雨が振りだすとどうしてもあの日を思い出してしまう…

忘れる事ができなくて、さっきみたいに暴れて周りに迷惑かけて…




全部僕の所為…

僕が弱い所為……










「…多野君……“君も”もしかして…」










…え?


あ、おじさんはあの事を知らないんだった……







……






こんな変な行動をとったんだから、おじさんにも説明…しなきゃなのかな…


でも……







ギュ…

こんな僕を知られるのが…嫌われるのが怖い……







 



【…お父さん、彼を抱きしめてあげて。】



『っ!』



「…え?」



【そして俺の時みたいに声をかけてあげて。】



「!」











……俺の時…みたいに?















「そうか……そうなんだね…
そんな所まで君達は同じなのか……
多野君?おじさん、君を抱きしめてもいいかい?」



『っ……あ、でも…僕……』



「おじさんが触るのは嫌かい?」



『違っ!嫌じゃないです!…でも僕…は__ 』



「いいんだ。何も言わなくていい。」




スッ_ギュゥ…

「…多野君。よく耐えて頑張ったね。
よく、人生を投げ出さずにいてくれたね…。
そのお陰でこうして君に出会えた…本当にありがとう。」



『!』



「おじさんは君に出会えた事が嬉しい。
君がここにいてくれるだけで嬉しい。
君とこうして話ができる事が嬉しい。
…こんなおじさんだが、多野君さえよければこれからも仲良くしてくれるかい?」



『っ……』



「駄目かい?」



『…ダメなんかじゃ…ないで…す…』



「そうか。嬉しいね。ありがとう。」

















僕の涙腺は壊れてしまったみたいだ…




さっきは無性に悲しくなって泣いて、今度は、“よく耐えて頑張った” なんて、否定される所かこんな僕が誉めてもらえるとは思わなかったから…嬉しくて涙が止まらなかったんだ……












「多野君。壱智君も言っていたが、君はなに一つ悪くはないんだよ。
それに、君は弱くはない。
辛い事が君の身に起きたのに、ほら、こうして私達の前にいてくれてるじゃないか。
君のは弱さなんかじゃない。
ただ、自分を守っていただけなんだから。
だから、私達に君が謝る事は1つもないんだ。
いいかい?もう私達の前で自分を責める言葉は言わない事。できるね?」



『っ……は…い…』



〖…フフ。館長やっぱり“お父さん”だね。〗



「え?…あ、強く言い過ぎたかい?」



〖ううん。智君も分かってくれてるはずだよ。
今もきっと…フフ、嬉しい言葉を聞いた涙だろうし。〗











…うん、当たってる。













「…そうだといいけど……ああ、でも泣かせ過ぎてしまってるね。
これは困った…」



〖え?あ、惺史君に怒られちゃう?〗












…また…サトシ……


僕の事を言っているんじゃない事は分かるけど……












「いや、あの子は“泣けるのはいい事”というあの子の主治医の言葉があるから、泣く事には肯定的だよ。
…昔から私の前では泣き言も、涙さえ見せてはくれないのにね……」



〖…そう、なんだ……〗



「そうなんだよ…。
で、その当人は何処に行ったのかな?」



〖あ、気づいたら隣にいなくて…
この雨音の所為かな?
僕、惺史君が動いたのにも気づかなかった…〗











……え?

壱智さんには雨の音が聞こえているの?







じゃあどうして…僕には聞こえないままなの?




僕だけ?

こんな事って…ある?












「…あの子、私が探すと出てきてくれないんだよ。
昔は違ったけど、今は面白がっているみたいでね?
しかも本当に見つけられないからいつも同じ所をグルグルするはめになるんだよ。」



〖…フフ♪でも館長嬉しそう。〗



「あ、分かるかい?
フッ…こんな歳だけど、息子と遊んでいるようで楽しくてね。」



〖フフ♪館長可愛い~♪〗



「こらこら、おじさんをからかっちゃいけないよ。」



〖はぁ~い♪ごめんなさ~い♪〗













…やっぱりさっきの人を“息子さん”って言った……


あの人も“お父さん”っておじさんの事を呼んでいたし…







でも息子さんの名前は耕太さんだよね?

それなのに、名前が“サトシ”さん…?





耕太さんじゃないの?

写真で見た耕太さんにそっくりだったよ…?







あ、でも耕太さんは亡くなってるって……









……あ、双子とか?


それなら似てて当然かも…うん。









…あの人…僕と同じ名前のサトシさんにもう1度会いたい。


会って聞きたい事があるんだ。








どうしてあの時 “大丈夫。ここには君を傷つける人は誰もいないよ。“ と、僕が何に怯えているのが何故分かったのか…とか……




それとサトシさんには関係なくて、僕の不調かもしれないけど、サトシさんが現れてから、聞こえなくなった雨音とかについて何か知ってたりするのかどうかを…












『…あの……』



「ん?ああ、落ち着いたかい?」



『…はい……何度もすみません……』



「いや、いいんだよ。
でも、目が赤いし腫れてしまったね…」



『あ……ゴシゴシ。』



〖わ、智君ダメだよぉ?
擦ったらもっと赤くなっちゃうからね?〗



『…あ……そうでした……』



〖フフ。それでどうしたの?〗



『あ、えっと__ 』




スッ

『ゎっ…』



〖あっ♡〗



「あ。」













僕がサトシさんの事を聞こうと思った時、目の前に黒い物体が現れた。



そしておじさんと僕の間で右に左に揺れる細長いしっぽ…






…黒猫?





あれ?

でも、猫を飼っているような雰囲気はなかったような…











〖わぁ~マソラちゃんだぁ♡〗












あ、壱智さんが名前を知ってるって事はやっぱりこの子おじさんの家の猫なんだ…












「やあ真空君、いらっしゃい。
おじいちゃんもおばあちゃんも真空君の事待ってたんだよ。」












…あれ?

“いらっしゃい”…なの?











「あ、多野君?紹介するね。
この子が以前話していた私達の孫の真空君だよ。
あのハンカチの柄は似ているだろう?」












…えっと……あれはそういう意味だったの?


黒猫に似ている孫じゃなくて、黒猫が孫…って事か……













‹ ミャァ ミャゥ~ゥ!›



〖あれ?なんかマソラちゃん怒ってる?〗



「あ、もしかして……」



スッ! _ストン
『…え!』



‹ ミャァァ…›



「やっぱり…」



〖あ、もしかして館長がさっき言ってた“困る”というのはマソラちゃんの事だったの?〗



「そうなんだよ…」


















え、何が“やっぱり”で、何が“そうなんだよ” なの?


僕、全然分からないよ?










‹ ミャァ~ゥ?›










あ、ハンカチより本物の方が圧倒的に可愛い…

それに空のような綺麗な青い瞳……







って、違う!



可愛いんだけど、僕の膝の上にいるこの子はどうすればいいの?

僕、猫と触れあった事すらないんだけど……




触ってもいいの…?













‹ …ンミャ…›












あぁ…なんか頭下げてヘニョって感じになっちゃったんだけど……










〖館長、僕もマソラちゃんにわざとじゃないって伝えるからね!〗



「助かるよ…孫に嫌われたくないからね。」



〖きっと分かってくれるよ!〗



「うん、ありがとう…」















えっと誰かぁ……どうすればいいか教えてよぉ……