※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























~Red instead of Blue~






「その通りだよ末本君。
私が話したいのは今後の事…そして1番優先したいのは智君に会って謝りたいという事だ。
風磨と一緒にな…。」











…智に謝りに行く…だと?











《…は?そいつと?
なに言ってるんだ?そいつはあいつ同様に警察に捕まえてもらうんだよ。
無理に決まってるだろ?》



 <っ!>



《というかそれ以前に俺がそいつを智に会わせる訳ないだろ。
親父まで馬鹿な事を言うなよ。》



「…そう言われるとは思っていた。
だが…風磨にやり直すチャンスをあげてくれ。」



《…やり直す?何をやり直せるっていうんだ?
こいつは一方的に智を苦しめ続けたんだぞ!》



「……」



《親父もこいつがした事は潤から聞いただろう!?
何年も精神的に苦しめるだけじゃなくて、自転車のブレーキにも細工させていた!
あのままその自転車に智が乗っていたらどうなっていたと思ってるんだ!》



 <ち、違っ…俺はそこまでしろなんて__ >



《黙れよ!だとしてもお前がやれと指示したんだろうが!》



  <っ……だけど…俺は……>



《っ!お前またぶん殴って分からせてやる!》



 <ヒッ!>



ガバッ!
《!?》









潤!?

おい!なんでヘッドロックするみたいに腕で俺の口を塞いでんだよ!!










〔…ったく。だから、それじゃいつまで経っても話が進まないんだって。〕



ジタバタ
《モガモガ!ゥーゥー!》



〔…風磨、俺はお前の兄ではないから手はあげないけど…大分怒ってる。〕



 <潤…さん……>



〔智君が直ぐに気づいてその自転車には乗らなくて済んだが、乗っていたらどうなったと思う?
転んで怪我、最悪…命をおとしていたかもしれないんだぞ?
分からなかったのか?考えられなかったのか?〕



 <だから俺は本当にそこまで言ってないんだってば!>




〔だがお前は自転車を壊せと友達に指示した。
それは、そういう事が起きても別にいいと、自分が犯罪者になってもいいと思ったからだろう?
じゃなきゃ出来ないよな?〕



 <…犯罪者……俺が…?>



〔なぁ、風磨。そこなんだよ。
こんな状況になってもお前の全く反省してない態度や言動が、俺を苛つかせる。
…おじさん、俺も翔の意見に賛成ですよ。〕



「末本君…」



〔おじさんには申し訳ないけど、今の風磨を智君に会わせるなんて俺も全力で阻止します。
これ以上彼を傷つけるなら俺も黙ってはいない。
証拠と証人を引き連れて、俺が風磨を警察に引っ張って行きます。〕











潤……










「…末本君、それは私が共に行く。
私は父親だ…こんな馬鹿な事をしでかした息子を連れて行く義務があるからね。」



〔おじさん…では…〕



「ああ…風磨を警察に連れて行く前に智君に謝らせようと思ったんだ。
色々と終わった後では遅いと思ってね。」



〔…そうでしたか。〕











……











 <っ!父さん…それ本気なの…?俺を警察に…って…>



「…ああ、翔が言う前から考えていた。
まさか家から2人も警察のご厄介になるなんて……いや、私の兄弟達も含めるとそれ以上だな……
どうして……こんな事に……はぁ…」



〔…心労、お察しします。〕



「…ありがとう末本君……」










親父……


俺は怒りで周りが見えてなかったが、こうやって潤と話す親父を見ると、顔色が悪く思える…



しかも一気に老け込んだような気さえする……







そりゃそうだよな…


妻だけじゃなく自分の兄弟の事、そして息子の事…と心労が積み重なっているんだ…





それに、今回のこの騒動の所為で親父の会社は…たぶん……












 <父さん…俺、嫌だよ……嘘だって言ってよ…>



「……」



 <ねぇ父さん!俺を守ってくれないの!?>












あいつ!まだあんな事を!!










バタバタ!
《ゥーゥーゥー!!》



 <!>



〔はいはい、どうどう。〕



《ゥーゥー!!》










離せ潤!

やっぱり殴らないとこいつは分からないんだ!











「…風磨。親は子供には平穏無事に成長してもらいたいと願うものだ。
いくつになっても心配はするし、何かあったら守ってやりたいとも思う…私はそうだ。」



 <だったら!>



「だが人として間違った事をした時に正すのもまた親の責務だと私は思っている。
子供の罪は親の罪…一緒に背負うべきだともな。」



 <っ……>



「風磨、父さんはお前を見捨てたりしない。
なぜなら私はお前の父親だからだ。
今までも、そしてこれからも息子の成長を願う親だからだ。」



 <……>



「風磨、父さんが恵まれているのが分かるか?」



 <…え?>



「…こんな事になっても、息子の側にいれる。
息子が肉体的にも精神的にも成長していく所を見守っていける。
何かあった時は直ぐに行動し寄り添う事だってできるんだ。
……そうできない父親が…息子1人を残し亡くなってしまった人を知っているから、父さんは本当に恵まれていると思うんだ。」



 <!>



「お前が清子から、貴弘君…智君の父親の事をどう聞かされてきたか分からないが、彼はとてもいい父親だったんだ。
確かに若い頃は”組“と呼ばれる所に入っていたが、智華…私の妹と出逢い2人の将来を考えるようになると、陰口を叩かれない仕事に就こうとした。
そして、智君を授かる頃にはきっぱりその組は辞め家族の為に汗水垂らして必死に働いたんだ。
それのどこが普通の父親と違うというのだろうな…」



 <……>



「そして智華が若くして病気で逝ってしまっても、貴弘君は弱音をはく事なく必死に日々を頑張っていた。
彼には智君という、自分が守るべき存在がいたからだ…
まだ2歳だった智君の子育てにも手を抜かず、仕事も真面目にしていた。
私は、そんな彼を純粋に凄いと思ったよ…
そしてどんなに妻を…そしてその間に出来た子を愛しているかも分かった……」



 <……>



「智君もそんな父親が大好きだった。
そしてまだ幼いというのに、母親がいない事の不満も一切言わず、健気に父親が仕事から帰ってくるのを待っていたんだ。
時々様子を見に行っていた私は、その幸せそうに笑う2人を見てとてもいい家族だと思ったものだよ。
……だが、不幸は突然訪れた。」



 <……>



「貴弘君は建設現場での仕事…所謂鳶職だったんだ。
あの日は低気圧で物凄い強風になると予報されていた。
勿論、危険な仕事や作業は中止になり貴弘君達も資材を纏めたり重りで固定したりと対策は万全だった。
そして天候が本格的に荒れ始め早く帰宅するように言われ、現場から帰ろうとしていた時に…危険だからと通行上にしてあった道に傘をさした下校途中の小学生が入って来てしまったんだ。
傘で看板もロープも見えなかったのか、急いでいたのかは分からないが、大人が危ないと叫んでも雨の所為でその子達には届かなかった…
そして一層風が強くなった時に、どこかから大きな看板が飛んで来た。
それは、建設現場を覆っている幕に1度当たってから子供達の方へと向きを変えた…」



 <!>



「…咄嗟の事で動けない大人が多い中、貴弘君だけは走った。
そして、その子達を守るように覆い被さり盾になったんだ。
…貴弘君は救急車が来るまでずっとその小学生の子達の事を気にしていた。
怪我していないか…とか、大丈夫か…とか、自分の事は差し置いて…
同僚に、喋るな動くなと言われていても、その子達の心配ばかりで、救急隊の人が”子供達は大丈夫ですから“と言われるまで心配していたそうだ…
そして貴弘君が救急車に乗せられ、病院に着く頃にはもう心臓は止まっていた…
病院で心配蘇生されても、彼はもう戻ってこなかったんだ…」



 <っ!>












…この智の父親の話しを俺は親父から聞いていた。



その時の俺も、この潤のように涙を流していたな…






潤、もう俺を押さえてなくていいのか?


でも、仕方ないよな…





今はそれ所じゃないよな…










さっきお前のハンカチを借りてしまったから、ティッシュを置いといてやるからな…
















「…風磨。清子から貴弘君のどんな話を聞いたかは知らないが、この話しを聞いてもまだ貴弘君を悪だと決めつけるか?
子供を助けた彼の悪口を言えるか?」



  <っ……>



「…救急隊の人が最後に聞いた貴弘君の言葉は、”智、今帰るからな“ だったそうだ…。」



  <っ!!>



「…風磨、最後まで息子を想っていた彼の遺した物を、非道に盗った者が罪に問われるのは当然だと思わないか?
父さんは間違っているか?」



  <……ぅぅ…>



「そして、そんな父を1人家で待ち続けた息子を…
大好きな父までも亡くし絶望の中、それでも頑張ってきた子を更に苦しめるのは間違っていると思わないか?」



  <ぅっ……ズズ…>



「…この事は翔も知っている。そして清子も…
だからこそあれ程怒り、罵倒したのだろう。
風磨、お前が誰に何をしたか…
そしてそれが許される事なのか…もう1度自分でちゃんと考え反省しなさい。」



  <…父さん……ズズ…ごめんなさい……>



「…それを本当に言わなきゃいけない人に言える日が来る事を父さんも…願っている……」














…今、親父がチラッとこっちを見やがった。






謝らせてやってくれ…という意味で俺に言ったんだろうけど、俺にそのつもりはない。


風磨が本当に自分のした過ちを悔いているのか、この段階ではまだハッキリと分からないからな。







それに1番は智の気持ちだしな…


智が風磨に会いたくないと思っていれば、俺は一生会わせないつもりだ。







だが、親父には会って貰えるようにそれとなく頼んでおいてやる。

たぶん金の事も親父には考えがあるだろうしな…




智の為になる事ならその位は俺も譲歩してやるさ。









…よし、もういいな。












カタンッ

《潤、行くぞ。》



〔…え?〕



「翔…もう行くのか?」



《ここにいても苛つくばかりだからな。》



「そうか…」



《…親父には連絡はする。
だから勝手に現れたりしないでくれ。
これ以上智を苦しめる訳にはいかないんだからな…》



「ああ、分かっている。頼む…」



《ああ…
それと今後の事も連絡をくれ。潤に勝手に連絡するとかも無しにしろよ。
それじゃなくても我が家の恥を見せたり迷惑をかけているんだからな。》



「ああ。…末本君、本当に今日は申し訳なかったね。」



〔あ、いえ…こちらこそ何だかすみませんでした…〕



《潤!潤が謝る必要なんてないだろう!》



〔え?…あ、うん……〕



《じゃあ行くぞ。》



「…翔。」



《……》



「智君をよろしく頼む…」



《親父に言われなくても分かってる。
俺が大切なのも守りたいのも智だけだからな。》



「…そうか……」



《…フン。》



〔あ、ではおじさん失礼します。
くれぐれもお体にお気をつけ下さい。〕



「…ありがとう、末本君。」














挨拶なんていいのに…


そう思ったがそんな真面目な所も潤なんだから仕方ないと、俺は1人スタスタと玄関に向かった…







2人で外に出てタクシーをひろう為に大通りに向かって歩いている途中、俺達は無言だった。

というか潤が色々と考える事があるみたいで難しい顔をしていたんだ…






だけど、今回の事で礼がある俺は重い空気の中そんな潤に話しかけた。












〔…誘いは嬉しいけど、また今度でいい?
今日は流石に…疲れた。〕



《…本当にすまなかった。
風磨の話しだけだと思ったのに、あんな事まで潤に聞かせてしまって…》



〔いや、俺の方こそごめん。
完全な部外者なのに…〕



《本当に潤には感謝してる…
この礼は必ずするから。》



〔…じゃあ奢ってもらえるのを期待してるよ。〕



《ああ。その時は智と3人で会おうな。》



〔っ!ああ、じゃあ楽しみにしとく。〕



《…おい、俺だけじゃ不満みたいじゃねぇか…》



〔え?分かった?〕



《おい!》



〔ハハハ!そりゃ智君に会えるのは嬉しいからさ。
それに、俺にも癒しを別けてくれたっていいだろ?〕



《…潤……あのな?その事なんだけど……》



〔ストップ。〕



《!》



〔言っただろう?今日は流石に疲れたって。
また後日、その話しは俺が笑えるようになった頃にまた聞かせてくれ。〕



《…潤……》



〔お、タクシー来た。
翔、途中まで一緒に乗っていこうぜ。〕



《…お前ん家逆方向じゃん。》



〔タクシー代も期待していいんだろ?〕



《…ったく、仕方ねぇな。》



〔ハハハ!サンキュー!〕











タクシーの中ではさっきまでとはうって変わり、2人で話して帰った。

だが、さっきまでの内容とは違い仕事の話しだったのは、潤のいう”疲れた“という事なんだろうな…と、俺は思った。







そして潤をマンション前で降ろし、山風家へと向かってもらっている途中、俺は智にメッセージを送った。



”今から帰るよ“と…







20分位で山風家の前に着き、タクシーを降りる前に俺はバックミラーで1度自分の顔を確認した。



…潤にもああ言われたからな……







2、3度口角を上げたりして確認したあと、よし大丈夫だな…とタクシーを降りた俺。




そのタクシーのドアが閉まる音と同時位に奥の玄関のドアが開き家の中の明るい光が漏れてきた…


それと同時に俺の方に駆け出してくる愛しい姿を見つけ、俺の足も自ずと前に出ていた……










タッタッ
『翔さん!』



《智っ!》



ガバッ
『お帰りなさい翔さん!』












…ああ……やっと落ちつける場所に帰ってこれた……











《ただいま智…》