※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























~Red instead of Blue~








キレるなって……そこまで潤が俺に言うって事は……









《そんなに…なのか?》



〔翔の沸点を間近で見てきた俺が言う事に間違いがあると思う?〕












そう…なんだよな……





潤には、俺の怒りの沸点どころか、良い所も悪い所も全て把握されているようなもんだ。


それこそ俺の女の趣味や、遊びと割りきってヤりたい放題していた学生の頃の事も…なんなら弱味になるような事も…







そこまで俺を知ってる潤がこういうんだから、間違いないんだろう…







だけど、俺は聞かなきゃならない。




大丈夫だ…

俺は次男に鍛えられてるんだ。




だから……




グッ…


俺はキレずに耐えてみせる…












《潤!その条件の__ 》



〔よし、昼飯にしよう。〕










……は?










《…いや潤、俺は直ぐにでも話を__ 》



〔いや無理だね。〕



《なんでだっ!?》



〔それ。〕



《は?》



〔気負いすぎて既にキレかかってんじゃん。〕



《っ!》



〔俺、部屋の中荒らされんの嫌なんだよね。
だから、昼飯にして少し落ち着こうよ?
別に話さないとは言ってないんだからさ。〕













そう言って潤はキッチンに向かった。


5分位カチャカチャと何かを準備して、戻ってきた手には2つの湯気が出ているスープカップ。










〔ってか足崩さないと痺れてやばくね?〕



《…え?あっ!》










潤に言われて気づいた俺は直ぐに足を崩したけど、時既に遅しで……










《ぐあっ……っぅ…》



〔ハハハ!〕










自炊をする奴はやっぱり違って、潤はてきぱきと皿やら何やらを準備してくれていた。

そして並べた弁当を前に俺の腹も鳴ったから、一緒に飯を食うことにした。







カップの中は意外な事に味噌汁で、洒落た物を作る潤には似合わないなと思いながらもズズッと啜るとなんだかほっとできて落ち着いてきた。


味噌汁は偉大だな…なんて思ったりも……









量が多いと言っていたが、俺も食った事で綺麗に平らげた容器を潤が片付け、今度は珈琲を俺の前に置いてくれた。




スン…

…ちょっと贅沢になったよな、俺。





さっきの弁当も美味かったし、この珈琲だっていい匂いがするのに、山風家の食事と珈琲には勝てないんだよな…




ま、あっちはプロだもんな……

って、最初はそれを知らずに俺は失礼な事を言ったんだけどな…






なんて思っていると……












〔…俺さ?正直に言うと、翔は否定すると思ってたんだよね。〕













潤が珈琲のカップを置いて、真剣な顔で話しかけてきた。












《…否定?…ってか何の話を__ 》



〔いいから黙って聞いて。〕



《っ!…はい、すみません。》



〔…はは!本当に翔は変わったね!
今までなら絶対につっかかって返してたのに…やっぱ山風さんていう人は凄い人なんだね。翔をここまで変えるんだから。尊敬するな、俺。〕











いや、長男はいいとしてもあの次男は……尊敬は無理だと思う。












〔あ、話し戻すよ。
あのさ?翔が否定すると思ったのは、智君への好意の感情なんだ。〕



《…は?》



〔ほら、智君は可愛い顔しているけど男の子。
翔は、男相手に気持ち悪いと思ってただろ?
だから、そこは否定してくると思ったんだけど……認めてんだから本当に驚いたよ。〕



《気持ち悪い…って……》



〔それを翔は俺と智君の前で言ったんだよ。〕












《男同士なんて俺には理解できないし、自分がと想像しただけで気持ち悪いけど、他人の性癖に何かを言うつもりはない。》





……ああ、そうだ…俺は潤の前で確かに……













《す、すまなかった!
でもあれは潤に対して言った訳じゃなくて__ 》



〔分かってるよ。
それに翔がそう思ってるのも気づいてた。
うまく隠してくれてたみたいだけど、一瞬の間だったり視線の泳ぎ方で俺には分かったさ。
何年の付き合いだと思ってんの?〕



《っ!すまない潤!俺気をつけてたのに__ 》



〔あ!別に責めてる訳じゃないって。
それでも変わらず翔は俺と友達でいてくれたし、そうやって俺には否定せずに気を使ってくれてるのも分かったから逆に嬉しかったくらいだしさ。〕



《そうだったのか……》



〔だからこそさ、今回は翔は否定すると思ったんだ。
男同士は理解できないって言った…自分の事だから。〕



《っ……》



〔あの時話して翔が俺に嫉妬してる事なんて直ぐに気づいたよ。
でもそれは、可愛がっていた子を取られたから…かと最初思ってたんだ。
だけど、智君から“もう連絡してこないで下さい…本当にごめんなさい” ってきた時に、気づいた。
そうさせてるのが翔で、そこまでする翔はただ可愛がっていた子を取られる事への恐怖や嫉妬じゃないって。〕



《……》



〔だけど翔はなんでそんな嫉妬するのかも自分では気づいてないだろうなって俺は思った。
男同士は否定的な翔だから、そんな所に考えは及ばないだろうなって…〕



《……》



〔だから福岡で俺は翔に話したんだ。
俺もちょっと…いや、凄くイラついてたからさ?翔が少しでも悩んで苦しめばいいって思っちゃったんだよな。
それで分からないままグルグルして最終的には俺に聞きにきて、その時俺は突きつけてやろうと思ってたんだよ。
“智君に近づく俺に嫉妬してるお前のそれは恋愛感情だよ!”って。〕



《……》



〔それで翔は“あり得ない”って否定して、じゃあ…とその代わりに俺が言った“可愛がっていた子を取られそうで悔しいんだろ?”というのに翔は納得して、智君への態度を改める事になる……っていう予定だったんだけど…〕












予定の話しかよ……











〔だったのに……はぁ。まさか否定せずにそんなにあっさり認めるとはね…〕












否定か……






最初は、まさか俺が?って思ったさ。



だって俺は男への恋愛感情とか一切持ってなかったんだからな。

言い方は悪いけど、生産性も何もないって思ってたし…。






でも潤に言われた言葉を考え続けて、気づいた。


そう、本当に色んな事に気づいた。







智を守ってやりたい事には変わりない…それこそ初めて会った時みたいに可愛がりたいし、甘やかしたいし、我が儘も聞きたい。





だけど今はあの頃よりも、もっとしたい事が増えてるんだ。






智が他を見てると俺の方に顔を向けたくなる。


智が兄弟の誰かと楽しそうに話していると、間に割って入りたくなる。


智が笑いかける相手がなんで俺じゃないと悔しくなってくる。










そういうものが次男の条件を守っていたら次から次へと俺の中に沸き起こってきた。


その度にあの不快な“ギギッ”という音が響いた。









だけど、大人しく次男の条件を守っていたら智の方から俺に話しかけてくれるようになった。


そして、俺に笑いかけてくれるようになった。




あの頃のように…




すると俺の中の不快な音はしなくなり、代わりにカチカチと規則正しい音が鳴り始めた。





前にもこんな事があったと思い返して見れば、それはどれも智と一緒にいた時だった。


智に苛ついていたのに、智が俺の心配をしたり智が俺の事を考えているのだと分かると、治まったように不快な音はしなくなった事があったんだ。







そこで漸くその音の正体に俺は気づいた。


そして潤の言葉の意味も合わせて理解できた。





俺は嫉妬して潤には会うなと智に言ったり、潤には智にこれ以上関わるなと言ったんだと…


そして自分では気づいてなかったが、俺が嫉妬している事を分かった潤は俺に智の1番近くにいて、会いたい時に会えるから”恵まれている“と言ったんだと……









自分がそうなるとは思わず、まさに否定的だった俺だけど、自覚したらのみ込むのは早かった。



だって答えが分かったから…






あの頃よりも、智の笑う顔が、横顔が、照れているように視線を外す仕草が俺には眩しく見えていて、それをもっと見せて欲しいと思った。

それも”誰か“じゃなくて、”俺だけ“に…





そう智に対して思う気持ちをなんと呼ぶかの答えが…。














《…潤。歯車が合ったんだよ。まさにカチッ!って感じに。》



〔……〕



《そしたらもう否定も何もなくなった。
だけど、俺は男が好きという訳じゃない。
智だから好きだと思えた。
もう俺は男でも女でも智以外はいらない。智だけがこの手の中に欲しいんだ……》



〔…あんなに女の子を取っ替え引っ替えしてた翔が……〕



《っ…》



〔あんなに、女の子に本気になられたら縁を切ってきた翔が……〕



《うっ…》



〔否定的だった男性相手に…しかも高校生の可愛い男の子に本気になるとは……〕



《ぐっ…》



〔…はぁーーー。〕



《じゅ、潤……?》



〔…でも、ま。
これで智君を守れるならそれで俺はいいかな。
智君がこれ以上悲しい思いをしないようにって、翔に言ったのは俺だしね。
…うん。智君が泣かなくてすむなら…俺はよくやったって事だよね。〕



《潤…お前本当に智の事が好きだったんだ___ 》



〔あ!ちょっと!
俺はまだ好きなんだから過去形にしないでよ!
誰かさんに邪魔されたけど、俺はまだ智君への想いは継続中!〕



《…あ、悪い…》



〔俺達はライバル。OK!?〕



《お、オーケー…》



〔よし。
でも今はライバルだけど共同戦線はってるから。
智君をこれ以上泣かせない為に。〕



《っ!じゃあ!》



〔でも忘れないでよ?
今日もその山風家で智君と会うんでしょ?
翔が仏頂面のままいったら智君がどんな顔になるか考えてよ?〕



《っ……潤、お前もしかしてその為に俺にキレるなって言ったのか?》



〔俺は智君の悲しい顔も辛い顔も見たくないから。
好きなんだから当然でしょ?〕











潤……お前って奴は……











〔まぁ、でも…俺が陰でこんなこそこそして智君の事を調べてたって知られたら、いくら優しい智君だといっても嫌われるんだろうけどね…〕



《そん時は俺も一緒に謝る!嫌われるなら俺も一緒だ!》



〔っ!〕



《でも好きだと想う気持ちは嫌われたとしても変わらない!そうだろ潤!!》



〔…アハハハ!
それを翔が言う?散々俺の邪魔をしたくせに偉そうに!〕



《ぐっ……だからそれは本当に悪かったって…ごめんって…》



〔ハハハ…でも、そうだよね?
好きな気持ちは変わらない。ううん、変えられないよね…まだ……〕



《ん?》



〔いや。じゃあ…俺の知ってる事を順に話していくよ。
翔に言った”根本“の本当の意味も分かると思うから。〕



《本当の意味…?》



〔うん…。
俺が智君の事をこっそり調べようと思ったのは、智君の切り裂かれた制服を見た時からだった。
何か危ない事に巻き込まれているんじゃないかって…。
それにあのアパートに行った時に、智君が物凄く外を警戒しているのにも気づいた。
だから俺は_____ 〕
















潤の長い話を、爪がくい込むくらい手を握って聞いた俺は…


潤の言う“根本の本当の意味”が分かった……







そしてその“根本”を知った時、俺は怒りと共に涙が零れ落ちた…



俺の知らない所で智を苦しめてきた“根源”が俺だと分かったからだ…






そして何も知らなかった俺の罪も明らかになり…俺は、唇を噛み締めながら自分の太腿を拳で叩くのを潤が止めるまで辞められなかった……