※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























~Red instead of Blue~






智のバイト先である “I'm home ” というパン屋と洋食屋が一緒になった店は週に2日定休日がある。



飲食店で週に2日というのは驚きだけど、それだけ採算がとれているという事なんだろうな。

まあ確かに、智を迎えに行った時に昼を過ぎた時間だというのにほぼほぼ満席状態だったか…









その店が休みの日、水曜と日曜は俺も山風家にお邪魔できるようになっている。

というかさせてもらっている…だな。






折角の休みだというのに俺の分もご飯を用意してもらっているんだから。



だからせめて、智に会うのはその2日で我慢しようと思っていたんだが……






今度の土曜の夜から泊まりたい事を長男に電話でお願いした時に、智の食欲が落ちて…という話を聞いて居ても立ってもいられなくなり、会社から出ると山風家の近くの商店街で桃を買って山風家へと向かっていた。


なんで桃かというと、前に持っていったスイカを智が嬉しそうに食べていたと聞いて果物にしようと最初から決めていた事と、見た目がなんか智みたいに可愛いと思ったからだ。






そして箱に入った桃を持って山風家に向かうと丁度キングが前を歩いて家に向かっている所だった。



店は?と思ったけど、家の前で鍵を開けるようとしている所だったから後ろから近づき声をかけると……









「うわぁぁぁ!!」









と、こっちがビックリするくらいの声を出された。


そしてキングに説教されたまま家に通されリビングへと向かうと空気がちょっと張りつめているように感じた……



この家ではそんな事珍しいのに、もっと珍しいお客さんがいた。






それが智の隣にくっついて座っていた、智と同じくらいの男の子。




その子と目が合って一瞬、ドキッとした。

その目が俺を睨んでいるように見えたからだ…





だがその視線はフッと外されたから俺の見間違いかと思った。







だが……違った……









智の友達だとすると、俺が知っているのは“二之宮”という子だけ。


“もらったから”と智が2人で写っている写真を見せてくれた事もあって、憶えていたから彼に名前を言ってみたんだ。





合っていた事に、俺凄いじゃんと思っていると彼は俺に話しかけてきた。


俺は当たり障りのない事を言ったつもりだった…




だけど……










ダンッ!
〈お前が言うな!!〉











と、勢いよく立ち上がり、さっき睨まれたのが間違いじゃなかったという目をまた俺に向けてきた…






二之宮君の言う言葉に俺の頭は疑問符だらけになった。


だけど言葉はしっかり入ってきて……











〈あんた今すぐ智の前から消えてよ。〉











そう言われたのも分かった…







だから俺は段々と腹がたってきていた。




なぜこの子にそんな事を言われなきゃいけないんだ…と思った。

俺達の何を知って“解放”なんて言葉を言っているんだ、そっちこそふざけるな!と…







だけどその苛立ちは、智が止める必死な声とその智を見ながら涙を流す彼の姿を見てなくなっていった…



そして逆に俺が追い込まれていった…











〈…あんたがいるから1人じゃなくて良くなったはずなのに…それなのに…なんで智が1人で辛い思いしてなきゃならないんだよ……もう十分辛い思いしてきたじゃんか……〉











まるで、俺の罪を言われているみたいで…



そして、智が “僕はそれでいいの” と言った事で尚更その罪が重くのし掛かってきたみたいで、俺は脚が床に埋まったみたいに動けなくなった…







だから、彼が俺の横を通り過ぎて行く時も、智がその後を追いかけて行く時もただ目で追う事すらできなかった…













俺は智の中学の入学式にも、卒業式にも出た事はない。

文化祭や体育祭など智の学校の様子は聞いた事はあったけど、行こうとは思わなかった。





それは、俺はまだ大学生でそんな場に俺が行っていいのか分からなかったし、一緒に暮らしてもいない俺が行くべきではないと思ったからだ…



それと…

智を施設に入れた俺を…俺達家族を悪く言われるんじゃないかと恐れたからだ……










智の高校の入学式の時は、何も知らされていなかった事に苛ついて行こうともしなかった。


お前にとって俺はそんなものか…と思っていたからだ。











だから彼が言ったように、智が辛い思いをしているなんて考えもつかなかった……



“十分辛い思いをしてきた” 彼が言った通り、智は1人だったのに……










バシッ!
《っ!》



  ❬……❭



バシッ!!
《痛っ!に、2回も…なんで背中叩くんですか!》



  ❬そうか痛いか。❭



《はぁ?おもいっきり叩かれたら痛いに決まって__ 》


 
  ❬そうやってお前は痛いと正直に言える。
だが言えなかったのは誰だ?
1人にして言わせてやれなかったのは誰だ?❭



《っ!》



  ❬二之宮君に言われた事を考えたいなら余所でやれ。
家にはお前みたいな、しけた面した奴は置いておけないんだよ。
その顔を多野君に見せるつもりか、お前は?少しは考えろ。❭



《……》



「…誠兄……この状況って……」



  ❬ん?ああ、修伍。気にするな。❭



「でもさ…多野君もあの子も……」



  ❬本当に修伍は優しいな。
兄ちゃん、修伍のそういう人の痛みが分かって心配してやれる所が大好きだぞ。❭



「な…////!
い、壱智兄に言われるならまだしも誠兄にそんな事言われたら気持ち悪くて鳥肌しかたたないからな////!」



  ❬うん、うん。お前のそういう恥ずかしがる所も可愛いぞ。
だけどな…?“気持ち悪い”はなくねぇか?
兄ちゃん悲しいぞ?
昔はあんなに、誠兄ちゃんだーい好__ ❭



「わーわーわー!やめろって////!
とにかく、詳しい事は後で俺達に説明しろよ!
そんでこれ和菓子!
あとそこの俺の後輩もよろしく!じゃ店戻るから!」



  ❬はいはい、いってらっしゃい。❭












次男に思いっきり叩かれたからなのか、キングがバタバタと出て行く頃には俺は動けるようになっていた。



そして、長男と一緒に戻ってきた智をできるだけ普通の顔で迎えられた。





でも智は違ったみたいで、呆然…そんな言葉がぴったりな顔で長男に支えられながらリビングに戻ってきてソファーに座った。




そして俺が“智”と呼びかけると、一瞬ビクッとして顔をあげた。


その顔は何かを必死に耐えているような、泣きたいのに我慢しているような…そんな顔だった……








その様子を見た次男は、俺を見て顎だけで玄関の方を指した。


ここはたぶん、その指示に従った方がいいだろうと思った俺は……









《智……俺、帰るよ。》



『ビクッ…』



《…美味しそうな桃があったから、後で皆で食べてくれな?》



『翔…さん……怒って……』



《違う…。ほら、今日は来る日じゃなかっただろ?
だからそろそろ帰らないとって思っただけだ。
智も皆さんも明日も仕事あるだろ?…だからな。》



『…もう……もう僕とは会って__ 』



《会いにくるよ。勿論だろ?》



『…本当……ですか…?』



《ああ。その為に今日は帰るんだ。》



『……』



《…智は俺と会ってくれるか?嫌じゃないか?》



『っ!嫌なんてない!だから僕は……僕は……』



《…そう言ってくれて嬉しいよ智。
じゃあ桃も食べて、ご飯も食べて俺が会いに来るのを待っててくれな?
寝込んでる智に会う事になるのは俺は悲しいぞ?》



『っ……はい…頑張ります……』



《うん。じゃあまたな智。
あ、見送りはいいからな?ここで…な?》



『…はい……おやすみなさい…翔さん……』



《…ああ、おやすみ智。》











俺は長男に一礼して玄関へと向かった。



その代わりに珍しく俺を見送ってくれたのは次男で、玄関から出ると…












  ❬あの判断で今は正しいだろう。お前がいたら多野君は気をつかってしまう。
最後のあの顔も無理して笑ってるしな。❭



《…分かっています。》



  ❬じゃあ多野君の親友が、どれ程多野君の支えなのかも分かってるな?❭



《……それも、分かっています。
智が友達と言ったのは彼だけでしたから。》



  ❬お前は覚悟はあるか?❭



《え?》



  ❬さっき二之宮君から言われた言葉にしろ他の…全てを受けとめる覚悟だよ。❭












全てを受けとめる覚悟……












バシッ!
《痛っ!》



  ❬ま、俺は君の味方はしないからこれ以上は言わない。❭



《は?いや、そんな事分かってますから……なにも叩かなくても__ 》



  ❬だからといって応援してない訳でもない。❭



《……え?》



  ❬多野君には幸せを知って欲しいからな。俺達みたいに。❭



《……は?》



バシッ!
《っ!また!?》



  ❬“頑張って足掻け”って言ってんだよ。
あ、そうそう。今日も来たんだし、別に無理して来なくていいぞ?
多野君の事は家の5人でしーっかり見とくから。❭



《は?》



  ❬じゃな!❭



《あ…》









…パタン










……くそ…あの次男。



何が無理してだよ?

俺は無理なんかしてねぇっつうの。





何度も何度も背中を叩きやがって……痛ぇなこのやろぅ…









でも……”覚悟“か……



あの次男”味方はしないからこれ以上言わない“って言ったけど、十分言ってんじゃんか。





”他の“ つまり、俺が知らない智の事を知るには覚悟が必要になるって事だよな……









覚悟……ね……












俺はポケットに入れていたスマホを取り出し、連絡しようと思っていてもなんだかんだ先延ばしにしていた男に電話をかけた。


発信音が鳴り、4コール目で出たそのちょっと警戒している声のそいつに…











〔……はい。〕



《…久しぶり。話があるんだ…潤。》











俺はそう言った……