※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



























  一陽来復  ~








カズさんが今日の依頼人…?


でも依頼人の名前は違ったような…





え?

態々偽名で俺に依頼したって事か?…何の為に?





ただ、この段階でも分かる事がある。





緑太。

依頼人は決して“シャイ”な人ではなかったぞ。










〈おい、いつまで立ってるんだ。
邪魔だ、早く座れ櫻井。〉



《あ、はい……っ!?》



〈…どうした?〉



《あ……》








似てる……




でも、違う。

俺が間違う訳ないんだ…









ガタ…
《…失礼します。》









カズさんに言われたから机を挟んで対面に座ってはみたけど……









〖モグモグ (º ﹏ º)〗









…どちら様なんだろうか。


美味そうにチョコレートパフェらしき物を食べつくそうとしてるけど…









〈…フッ。そんなに見つめてどうした?〉



《え?あ、いえ…》



〈…似てるから抱きつくかと思ったんだけどな。〉



《…え?》



〈フッ、なんでもない。
…ほら、サトシ。口にチョコレートがついてるぞ。〉



〖んー (º ⌓ º)〗



〈…はいはい、俺が拭くのな。〉










サトシ…っていうのか……




幼く見えるけど…やっぱり似てる…


似てる人がこんなに近くにいるのに…嵐は…いない……









〖…ゴクン♪あ~美味しかったぁ٩(ˊᗜˋ*)و〗



《!》



〈…良かったな。〉



〖うん♪でもマーの作ってくれる方がおいらは好き~(*´˘`*)〗



〈…それ、ここでは言わない方がいいぞ。〉



〖なんで~?〗



〈…人間は色々面倒なんだよ。〉



〖なにそれ~(๑•́ ₃ •̀๑)?〗



〈マーが喜ぶから、マーの前でだけいっぱい言ってやれって事だ。〉



〖あ、そっか~分かったぁ♪〗










…屈託なく笑う顔……




嵐は…どうだっただろうか?


嵐の笑った顔は___









〈櫻井、紹介がまだだったな。これは“サトシ”だ。〉



《…え?》



〖サトシだよ~(*´˘`*)〗



《あ、俺は櫻井 緋路と言います。宜しくお願いします。》



〖うん、ヨロシクね~♪〗



《はい。あ、あの…カズさん?
今回の依頼の件なんですけど…》










もしかして、このサトシさんが行きたい所があって、それに同行するという事なんだろうか?










〈せっかちだな。俺達と話すのは嫌なのか?〉



《え?あ、いえ!そうではないです!》



〈なら急かすな。この時間も踏まえてちゃんと依頼料は払うんだからな。〉



《はい…》










確かに今回は時間制になっている。



だから、俺が急かしたら駄目だよな。

何処に行くのか分からないが、向かうタイミングとかは依頼者が決めるだろうしな…









〈それに、今日はお前がサトシにお礼を言いたいと思って、こうしてチョコレートパフェを餌に此処まで連れてきてやったんだぞ?〉



《…え?》









俺がお礼…?


そこのサトシさんとは初対面だけど…お礼?










〈あるだろ?〉



《…すみません。その…仰ってる意味が分からなくて…》



〈フッ…分からないのか?〉



《…すみません。
失礼な事を聞きますけど、俺…どこかでお世話になりましたか?》



〈ククク。ま、言われても分からないのは当然か。
でも、役にたったんだろ?
あの強い力を放つ青い宝石は。〉








…青い…宝石…?



っ!!








《あの青い石!》



〈そう、あれだ。
あれは、サトシがある方にお願いして貰った物だからな。
だからお前はサトシに礼を言う必要があるだろ?〉










あの時、俺のポケットに入っていたあの青い石…



山に入る前に俺に近づいてきたカズさんが入れた物だと直ぐに分かった。

でも、あれが役に立つと言われたから俺は自分の物じゃないのに何の躊躇いもなく渡して……って!









《なんで青い石の事を知っているんですか!?》



〈はあ?
俺がサトシから預かった物をお前のポケットにこっそり入れたからに決まってるだろ?〉



《だからそれがおかしいんです!
なんでその事を憶えているんですか!?
皆、忘れているはずでしょう!?》



〈おい。俺がいつ“知らない”なんて言った?〉



《っ!?》











確かにカズさんに確認はしなかった……



先に緑太の話を聞いていたし、こっちに戻ってきた時に大家さん達も全くランの事は憶えていなかったから、皆もそうだと思っていた……





でも、まさか……









〈ああ、憶えてるさ。
彼と取引した事でお前達に依頼した事も、あの山に戻ると言われて送っていった事も全てな。〉



《っ!…どうして……》










どうして、ランを憶えているとあの時言ってくれなかったんだ……


言ってくれていたら、もしかしたら全部俺の作り上げた夢だったんじゃかいかって、悩んで苦しんだりしなかったのに……










《言ってくれれば…俺は……》



〈言った所でどうなる?〉



《!》



〈俺が、“俺は憶えているぞ”とお前に言ったとする。
…それで?お前は山に行くのを辞めたのか?
違うだろう?〉



《っ……》



〈それにもし俺が憶えているのに、一緒に暮らしていた相葉 緑太が彼を憶えていないとなれば、あの時のお前は更に八つ当たりしただろう?〉



《あ……》



〈だからあの時は言わなかったんだ。
“人間だから相葉 緑太も、潤も忘れている”なんて事実はな。〉



《人間だから…?》



〈ああ。
人間は弱い。だから山神の力によって簡単に記憶をねじ曲げられる。
ま、相手は“神”と名につく者…人間だけじゃなく力の弱い者は敵わないだろうけどな。〉



《カズさんは…》



〈お前…俺が弱く見えると言いたいのか?
今すぐ思い知らせてやろうか?〉



《っ!い、いえ…そんな事は___ 》



〖え~?おいらよりは弱いじゃん(*´˘`*)〗



《!》



〈…ここで口出ししてくるのかよ。〉



〖だって~、さっきから聞いてればさ~?なんかヒーが可哀想なんだもん(๑•́ ₃ •̀๑)
ヒーはショーに似てるから、カズはいじめちゃダメなんだからね~!〗










…“ヒー”って、もしかしなくても…俺の事だよな?










〈…チッ。〉










カズさんに睨まれて、なぜか舌打ちされた…


俺が…悪いのか?









〖ヒー、大丈夫だよ~♪
おいらもちゃんと鬼の彼の事は憶えてるからね~٩(ˊᗜˋ*)و〗



《っ!本当…ですか?》



〖もっちろんだよ~♪
彼から折れてしまった鬼の角を貰った事も憶えてるし、お礼にキラキラさんから貰っておいた青いピカピカもカズに持って行ってもらったのも憶えてるもん(*´˘`*)〗



《…は?》










キラキラとかピカピカとか…大分意味が分からないんだけど……









〈…彼と取引したと言っただろう?
それが俺達が探していた傷薬として使える彼の鬼の角との交換だったんだ。〉



《…あ!そう言えば!》



〈“キラキラさん”とサトシが言った方が、人間にも使える傷薬を作って欲しいと俺達に頼んできた…まあ、依頼人だな。
そして、そのお礼として“ピカピカ”とサトシが言った、あのお前に渡した青い宝石をくれた人でもある。〉



《あ、成る程…ご説明ありがとうございます。》









やっと話が分かった…









〖…おいらの説明じゃ分からなかったの(ó﹏ò。)?〗



《あ!いえ!そんな事は…》









こんな今にも泣きそうな顔をされて分からなかった…とは言いにくい……


この顔には弱いんだよな…










〈…サトシ。追加で何か頼むか?
ケーキとかもあっただろ?〉



〖食べる~٩(ˊᗜˋ*)و〗



スッ
〈じゃあほらメニュー見て決めろ。〉



〖分かったぁ~♪〗



《……》













カズさんに手渡されたメニュー表を嬉しそうに見てるサトシさん…


一瞬で表情が変わった…






俺よりケーキ……


ま、泣かれるよりはいいか……







ん?

でも、人は忘れてしまっている嵐の事をこの2人は憶えているっていう事は…サトシさんも人外という事か?


カズさんは吸血鬼…だったよな。

じゃあサトシさんは___








〈フッ。俺よりもはるかに強い化け物だ。〉









っ!


あ、そうか…カズさんは考えている事が分かるんだった…





…じゃあ、俺が思ってる事を答えてくれたりしないだろうか?








〈…おい。だから宝石の礼はどうした。〉



《……》



〈…ったく。
ま、後でしこたま言わせてやるか。
まず1つ目。山神によって人間の記憶をねじ曲げられたのは、意味がある。
そうしなければならない理由があるからだ。
そして2つ目。お前があの山にどうやっても入れないのは、我が子可愛さからくる山神の嫌がらせだ。〉



《…は?》



〈それから3つ目。
…あの方から頂いた、あの青い宝石があるのに失敗なんてあり得ないからな。〉



《…え?》



〈4つ目。たかが4ヶ月逢えない位でなんだ。
彼に施されたのは治療じゃない。
再生なんだからその位かかって当たり前だろう?
だから“こんなに待ってるのに”なんてお前が思うのは烏滸がましいからな。
大変だったのはお前じゃない。彼の方だ。〉



《!?》



〈そして最後だ。
今日の依頼…依頼人は俺じゃない。
俺はその依頼人から頼まれてお前に連絡したにすぎない。
最初と同じって訳だ。〉



《っ!…それは…つまり……》



〈お前、書いてあった依頼人の名前忘れたのか?〉









依頼人の名前は確か……









《…大野…藍……という女性…》



〖“あい”じゃなくて~“らん”だよ~(*´˘`*)〗



〈女なんて俺はどこにも書いてないぞ。〉



《っ!!》








ラン…?


じゃあ!

本当の依頼人は__








カランカラン♬







〖あ、来た来た~♪
じゃあランの分もケーキ頼もうっと٩(ˊᗜˋ*)و〗











入口の木のドアが開いて姿を見せたのは…









ガタッ!
《っ!!》



『…ヒロ、悪ぃ。待たせたな。』


















一陽来復
(いちようらいふく)

悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。
陰の気がきわまって陽の気にかえる意から。