※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























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会社を辞める!社長を辞める!俺はずっと家にいる!と言う桃井さん。


ニノさんは呆れたように額に手を置いてため息をつき、波多野先生はやっぱり苦笑い…






僕は隈が酷い2人に“社長を止めて下さい”と頼まれて、一応ぎゅっと抱きついて体は止めてみた。



どうするのが正解か分からなかったからなんだけど、どうやらそれで良かったみたい。

2人とも何度も頷いてくれたし。



そして縞夫木さんがコソコソと喋る事を教えてくれて、その通りに桃井さんに“スーツ姿で社長の桃井さんは凄く格好いい”と言った所…








《アキがそう言うなら俺は社長のままでいる!》









と、前言撤回してくれた。





桃井さんが社長さんを辞めたら、桃井さんの事務所や社員の皆さんが大変な事になる。

だからそれは本当に良かったと思う…






でも、少し想像してしまった。





桃井さんが仕事をしてなくて、ずっと側にいてくれる毎日の事を…





それもいいな……なんてね…
















その日から1週間が経った。








最近で1番変わった事というと、桃井さんが残業を一切しなくなった事。

あと、休日出勤も無くなった。






…僕、ちょっと嬉しい。








だけど、ニノさんの呆れ顔は毎日のように続いている。


それは朝、“今日も何処にも行くなよ?”とか、“笑った顔は余り見せるな!”と桃井さんが毎日僕に言ってくるのを聞いているかららしい。




そして桃井さんとニノさんは毎日の言い争いも欠かさない。









〈本当にウザい!
早く帰ってくるようになったくせに、何もせずに秋にベタベタして!〉



《はあ?ちゃんと見ろよ。
俺は、皿を出したりしてんだよ。今もこうして冷蔵庫からニラ出して役にたってんだろ!》



〈それはニラじゃなくて万能ネギ!
それすらも分からないんだから、秋にとっては邪魔でしかたないでしょうよ!〉



《ネギ……ふんっ!
少し間違っただけだろうが!
それに俺はアキに邪魔だなんて言われてねぇからな!》



〈優しい秋に言える訳ないでしょうよ!
でも確実に思ってるでしょうね!なんたって役立たずの冬司さんだから!〉



《なんだと!
俺だってやれば出来るんだよ!》



〈ご飯もうまく炊けない人がなに言ってるんですか、笑わせないで下さいよ!〉



《あんな1回失敗しただけの事だろ!》



〈その1回しか料理してないのは誰ですか!〉



《見てろよ!次こそは完璧にしてやる!》



〈はぁ~?やめて下さいよ。
腹痛で病院なんて、真っ平ごめんです。〉



《腹壊す前提で言うんじゃねぇ💢!》



〈だったら作るとかあり得ない事言うな!
それと、いつまでもネギ握ったまま立って邪魔してないでさっさと退けー💢!〉











揚げ物や炒め物をしてない時は、本当によく聞こえてくるその言い争い。



勿論、僕は邪魔したりしない。

これも“話す”だと思うから。





それに、聞いてる分には楽しいんだよね。

料理がサクサク進むくらいに。















桃井さんの残業が無くなったから、夜の授業も再開された。


そして僕はやっと、“泣いてもやめないで欲しい”というあの話を桃井さんに言えた。







それを言った時、桃井さんは蕩けるような顔で僕を見てくれた。

そして、僕が蕩けてしまうんじゃないかってくらいのキスをしてくれた。









チュ…
《じゃあ、デビュー祝いに…っていうのはどうだ?
ま、俺がもらっちまう事になるんだけどな?》



『…嬉しいです。
でも、どうして桃井さんが貰う事になるんですか?
僕の中に出してくれるんだから、僕が貰うんですよね?』



《…ぐあっ!》



『え?』



《や、やめろ…アキ……そんな純粋な目で俺を見上げるな……》



『…え?』



《ぐっ!…その、首をコテン…ってするのも無しだ。》



『…こてん?』



《っ!だからそれは無しだと言ってるだろ!
俺は今物凄く葛藤してるんだ!
だからちょっとは控えてくれ!》



『…葛藤…ですか?』



《ああ…。》



『…よく分からないですけど、分かりました。』



《ふぅ…》



『でも、こうして抱きついてるのはいいですか?』



《ぶはっ!!》



『?』



《…な、なかなかのSじゃねぇか。
いいだろう、もう少しなんだ。耐えて見せようじゃねぇか…。》



『…それはこうしててもいいって事ですか?』



《お、おお。いいぞ。》



ギュ
『フフ…嬉しい。桃井さん暖かいから。』



《っ!》



チラ…
『桃井さんも暖かいですか?』



《っ!!その上目遣いも反則だからな!》



『…え?』



ギュゥゥ!
《ああ、なんでお前はそんなに可愛いんだよ!バカヤロー!》










僕は最近、よく分からない事で桃井さんに怒られるようになったと思う。

怒られるというか、注意?みたいな感じかな。






あ、よく前髪も引っ張られるようになったかも。


この前も寝てる時に“伸びろ~伸びろ~”と真剣な顔で呪文を唱えるように言う桃井さんがいて驚いた。

















夏さんに会った日の事は、佐東さんから既に聞いたみたいだったけど、僕からもちゃんと桃井さんに説明した。


その時の桃井さんの顔は、怒ってるような困ってるような、なんとも表現しづらい顔をしていたけど…









《そのおばあさんの所は今度からは俺と行くんだぞ?
余計な心配を増やしやがって気に食わないが、ま、一応 竹本には“俺のアキが世話になったな”と連絡しといてやる。》










と、言ってくれた。





それだけで僕は嬉しかった。

2人で行けば、おばあさんに今一緒に暮らしている“僕の好きな人です”と桃井さんを紹介できる。


きっと、おばあさんは安心してくれると思うから…















そして今日、僕達は桃井さんの…じゃない。


“うち”の事務所に来ている。






10月の末…

僕のデビュー曲配信日の1週間前の今日、完成したというMVのお披露目会が事務所の一室で行われるからだ。






大きなスクリーンが見える真ん中の椅子に座らされた僕。

両隣にはニノさんと、桃井さんが座ってくれている。







このMVの事では色々あったらしい…



完成するまでは、桃井さん達にも見せてもらえないとか、期日は必ず守るから一切の口出し無用とか、他にも色々……




桃井さんは愚痴を言っていたけど、そういう時は必ずニノさんに叱られていた。

“バチが当たりますよ”と…







そんな中、僕はただ楽しみで仕方なかった。






“FREESTYLE”を調べた時に、イラストレーターの“赤井うさぎ”という人のデザイン画を見たから。



何かの広告だと思うけど、ライオンやキリンがカラフルな色づかいで格好いいというより可愛いという感じだった。

そしてその人は絵本も出していた。



赤い傘を持った兎が表紙の絵本。





この歳で絵本は…と思ったけど、どんな内容か気になって欲しいなと思ったけど買えなかった。

新品はネットですら取り扱ってなかったから。








だから、今日は凄く楽しみにしていたんだ。


その人が作ってくれたのが見れるから。











ドアが開いて、縞夫木さんと一緒に歩いてきたのはヒョロヒョロとした感じの人と爽やかに笑う男の人。


2人共スーツは着てたけど、桃井さんみたいにビシッとした感じじゃなかった。






その人達が僕達の前でお辞儀をすると…










「初めまして、私、FREESTYLEの加藤と申します。
こちらは中丸です。」



「中丸です。宜しくお願い致します。」









中丸さんと言う人が挨拶をすると、直ぐに持っていたパソコンにコードを差したりと準備を始めた。


そして加藤さんと名乗った人と一言二言交わすと…









「では早速始めますので電気を消して頂けますか?」








そう言うと部屋が暗くなり、スクリーンがよりハッキリ見えるようになった。






ドキドキが増す中、“ギフト”と書かれた文字が浮かび上がり、それがゆっくり消え黒くなるとあの曲のイントロが流れてきた。





それと同時に、黒い真ん中に小さい丸が出てきて、それが徐々に大きくなって明るくなっていく。





そして歌が始まる瞬間にスクリーンいっぱいになると、そこに映し出されたのは眩しいと感じる青い空と光に鮮やかな緑の木々。


そして写真を撮る時に逆光で顔が見えない時と同じような感じで、誰だか分からないけど、こちらに手を伸ばしているのだという事は分かる人……







それだけで部屋がざわついたのが分かった。


隣にいるニノさんも桃井さんも前のめりの体勢になったのが分かった。










そして僕も驚いた…。


だってこれはアニメーションじゃなくて……写真じゃない?






アニメーションのMVだと聞いていたから、ちょっとガッカリなんて…贅沢すぎて言えないけどね……