※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























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おばあさんに何度も名前を呼ばれ、ここにいる事を確かめられるように手を握りしめられたり、頬を撫でられたり…


おばあさんは涙を流しながら笑ってくれた……








ニノさんが買っておいてくれたお土産を手渡し、“絶対にまた顔を見せてね”と言うおばあさんに、僕も来る事を約束をした。





頭を下げて、夏さんと一緒に玄関を出ると、隣の夏さんはおばあさんと同じように優しい顔で笑ってくれていた。









〔また、会ってあげてくれな。〕



『はい。約束しましたから。』



〔ああ、そうだな。本当に…嬉しそうだったな、おばあさん。〕



『…僕の方が…嬉しかったです。』











もう会えないから、元気で…そんな手紙を送ったのに、ああして泣いて僕を迎え入れてくれたんだから……











〔そっか。良かったな、春。
俺も2人のいい顔が見れて良かったよ。〕










…これは、誰が考えてくれたんだろう……?



夏さんの所に行った時は、ニノさんだと思ったけど、このおばあさんの家は夏さんしか知らない…

でもおばあさんへのお土産を買ってきてくれたのはニノさんだった……








ニノさんと夏さんが連絡をとりあっていたのかな…?


あの夏さんのお店への予約の電話だけじゃなくて…?




じゃあニノさんは夏さんの後ろにちらつくあの人の事は…気にしてないって事かな……?











『あの夏さん__ 』



〔お、丁度車が来たな。
凄いな、何処かで見ていたみたいだ。〕



『……』



〔ん?どうした春?〕



『…夏さん……』



〔ん?〕



『…いえ、なんでもないです。』



〔じゃあ行こうか。〕



『はい。』









車に乗ると、またニノさんが“スッキリした?”と微笑んで聞いてきてくれた。



でもそれ以上は何も言わなかったから僕も何も聞けなかった。

隣に夏さんがいるから余計に…







そして、これでは終わらないだろうな…と思っていた僕の勘が当たった。


夏さん、おばあさんと会って、この街に来てこの人に会わない訳ないだろうな…と。










〈あれ?驚かないの?〉



『…はい。』



〈ま、そっか。
じゃあここは皆で行こうか。美味しいと噂の珈琲も飲みたいしね♪〉










夏さんが先にお店に入り、僕がその後に続くとマスターは驚いた顔をしながらも、急いでカウンターから出てきてくれた。


そして両手を広げたまま僕の方に歩いてきて…









グイッ!
「ぐへっ!」



〔やめろよ!なに、考えてんだ!〕



「感動の再会を邪魔するなんて酷くない!?」



〔うっさい!春に抱きつこうとするなんて変態!
そのニヤけた顔がムカつく!元からそういう顔だけど!〕



「悪口!ねぇそれ悪口だよね!?」



〔いいから早く仕事しろ!人数分の珈琲ね!〕



「珈琲は分かったから取り敢えず春君に抱き__ 」



〔するな!〕










夏さんはそう言って僕達を奥のボックスの席へと誘導してくれた。




だけど、僕はカウンターの前に立った。


マスターには突然辞めてしまった事への謝罪も改めてちゃんとしたかったから。


だけど……









『マスター…あの……』



「春君。僕は本当に嬉しいよ。」



『はい?』



「君にまたこうして僕の珈琲を飲んでもらえるなんて。」



『マスター……』



「事情は…なんとなく分かってるつもりなんだ。」



『え…?』



「春君の様子がおかしくなった事に、この僕が気づかないと思ったかい?
そしてそれが、誰が来てからそうなったか…分かってるつもりなんだ。」



『っ!』



「でも僕は夏生には何も言ってない。
言おうと何度も思ったけど、結局言わなかった。
春君が夏生に彼の事は言わずに出ていくという決断をしたのに、僕が言える立場には無いと思ったからね。」



『……』



「それに君から貰った手紙にも、何も書いていなかった。
僕ならいくらでも言えるのに、君は……僕への感謝の言葉ばかりで……」



『……』



「…そんなに頼りなかったかなと思ったよ。
頼ってくれれば…って。」



『違っ__ 』



「うん、分かっているよ。
僕は余りにも夏生に近すぎた。
そして当然の判断だよね…僕は彼の事も知っているし、ここにも来てしまうんだから……」



『……』



「だから僕は僕に出来る事をしたつもりだよ。」



『…え?』



「夏生に無理矢理ご飯を食べさせたりね。
ま、僕に出来るのはそんな事をしながら、夏生と一緒に君の帰りを待つ事しかないと思ったから。」



『マスター……』



「ハハ♪
ほら見て?こんなに話しているから夏生が凄くこっちを睨んでる。」



『…あ……』









振り返って3人がいる奥の席を見ると、夏さんが鋭い目をしてこっちを見ていた。










「今、珈琲を持っていくから春君は夏生達の元に戻っていてくれるかな?
じゃないと、僕夏生になにされるか……おぉ怖っ!」



『…フフ。分かりました。』



「っ!?」



『マスター?』



「あ、いや…うん。」



『?』



「春君?…君は今楽しいかい?」



『っ!……はい…楽しいです。』



「そうか……」



『…でも、あの頃も僕は幸せだったんです。』



「え?」



『マスター達がいてくれたから、僕はとても幸せでした。
感謝しています。本当にありがとうございました。
そしてこれからも感謝し続けます。』



「春君……」



『じゃあ僕は戻り__ 』



「春君!」



『はい?』



「夏生を…許してやってほしい。」



『え?』



「こんな事を僕が言うのもあれだけど、夏生は…何も知らない…。
今も知らずにいてしまっている事を許してやってほしい。」



『…違いますマスター。
僕が逃げたんです。
何も話さず…ただ、怖かったから逃げた……』



「でもそれは!」



『僕が決めたんです。』



「!」



『僕が怖くて優しい夏さんから離れる事を決めてしまった…
だから許しを請うのは僕の方なんです。
弱かった僕の……』



「春君……」



『それに、夏さんは知らなくていいんです。
だって、またあの頃のように、あの笑顔で僕に笑いかけてくれてるから。』



「君は…本当に……抱きしめていいかい?」



『フフ…夏さんが見ているから遠慮します。』



「え?ああ、そうだね。僕の身が危ない目つきだねあれは。」



『フフ。』



「春君、ありがとう。
そんな風に笑う春君を見れて僕は幸せだ。
あ!春君の好きだったケーキも用意するから座って楽しみにしてて♪」



『はい、ありがとうございます。』










その後は、人数分より多いケーキにマスターの美味しい珈琲を頂いた。



いつの間にかお店のドアには“close”の看板が掛かっていて、既にお店にいた人達が帰るとマスターも一緒に会話にはまったりして、楽しい時間は過ぎた。







お店から帰る時に、マスターは…












「無理にとは言わないよ…言えないからね。
でも、また顔を見せに来てくれると嬉しいな。
今度は春君の好きだったメニューを大量にご馳走したいからね♪」










そう言って、今度は両手を広げて待っていてくれた。




でも、やっぱり夏さんがそのマスターの手を叩き落とした…

そして、逆に夏さんに抱きしめられた。





夏さんとはここでお別れだから…







マスターが後ろで文句を言っていたけど、夏さんはそんなマスターを無視して僕に“またね”と言ってくれた。

それも、あの笑顔つきで……






佐東さんが止めに入ろうとウロウロしはじめて、ニノさんに服を引っ張られているのを見て、僕は夏さんから離れた。




“またね”…でも、きっとそう簡単には会えない。


だけど、そんな日が来る事を願って僕は……










『はい、夏さん。』










そう言った……。














マスターのお店から出て、車で向かったのは波多野先生の医院。



そこで仕事が終わった波多野先生を乗せて、僕達は4人でご飯を食べに行った。

今日、お店を選んだのはニノさんと波多野先生…






お刺身が美味しい和食料理屋さんだった…












〈どう、秋?美味しい?〉



『はい。』



〈良かった。〉



『ニノさん?』



〈ん~?〉








サクサクの天ぷらを食べているニノさんは、声だけで僕に返事をしてくれた。










『…今日のこれって……』



〈ん?ああ、俺達から秋への日頃のお礼かな?〉



『……え?』









僕が聞きたかったのは、夏さんとそんなに頻繁に連絡をとっていたの?という事だったのに、違う答えが返ってきて僕は少し驚いた。










「そうだね。
毎日ご飯やら洗濯やらしてくれる秋人君へのお礼だね。」



〈お世話になってるからね、俺達。だから今日は奢り。〉



「本当に秋人君には感謝しかないよね。
あ、これからも月に何回かはこういう事しようか?」



〈そうだね。それがいい。
秋にもゆっくり休む日を設けないと。〉



「大事だからね。心身共に。」



〈誰かさんがいると体は休まらないだろうし、今日みたいに俺達だけがいいよね。〉



「こらこら虹也君。それじゃ怒られるのが__ 」



〈卓巳先生よろしくね?〉



「やっぱり僕か~」



『あ、あの!』



〈ん?〉



『この外食の理由は分かりました。
出来る事をしているだけで、そんなに僕を気にかけて頂いていて、嬉しいです。
でも…その前の……』



〈ああ、あれね?〉



『はい。あれは…どうしてですか?
ニノさんが夏さんに会う事を考えてくれたんですか?』



〈俺と、卓巳先生だね。〉



『え?…お2人が?』



〈うん、竹本さんに連絡してくれたのは卓巳先生。
だけど、ヒントは違う人からもらったかな。〉



『…ヒント?』



〈そう、ヒント。
本当は最初、秋に何かプレゼントしようと考えていたんだよね。
日頃の家事のお礼にね。
だけど、物だと秋が何を貰ったら喜ぶか分からなくて悩んでて、知ってそうな人に連絡をとろうとなったんだよね。
それで、そこでもらったヒントが “物じゃなくて人” 、 “泣いたら笑える” だったんだよね。〉



『…え?』



〈彼、結構、意地悪な性格なの?
遠回しに言うから俺達は悩んだよね?〉



「そうだね。だけど完璧に当たってたね。
今日の秋人君はとてもスッキリした顔をしてるし、嬉しそうにも見える。
喜んでもらえたって事でしょ?」



〈そして、更に可愛いさに磨きがかかっちゃった…と。
ハァ~。冬司さんの猛獣みたいな姿が目に浮かぶ。〉



「アハハ♪仕方ないよ、こんなに可愛いんだから。」



〈あ!でも今日は俺と一緒に寝る予定だった!〉



「え~?それは聞いてないよ?」



〈秋からのお礼だから。〉



「ずるいなぁ~。」










…楽しそうに話す2人。

でも、僕は全然分からないまま……






ヒント?

物じゃなくて人?


それをいったい誰が……




あれ?

でも、あの“泣いたら笑える”って言葉は……







そんな事を考えていると、黙々と食べていた隣の佐東さんとニノさんのスマホがほぼ同時に鳴った。

2人とも音を出していたから、結構驚いた。







佐東さんは、“あれ?聡?”と首を傾げていて、ニノさんはスマホを見て明らかに嫌そうな顔をしていた。










〈…なんなの?野生の勘なの?〉









そう言いながら、鳴り続ける電話を無視したニノさん。


波多野先生は苦笑い…





という事は……と、思ってポケットを確認するといつの間にか電源が切れていた僕のスマホ。

慌てて電源を入れると、ピコン!と通知が入ってきた。






そこには7件の着信があった事を知らせていた……






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そして、今、8件目の着信が……







〈うわっ、ウザッ!
秋、冬司さんに俺達の邪魔するなって言ってやって!〉







む、無理ですニノさん……そんな事言えない……



でも、この電話に出るのが僕もちょっと怖い…な……