※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























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惺史は嘘をつけないって確かに聞いた……


でも“知らない”って…










『どういう事…?』



【場所とか、いつなのかは俺も分からないって事。
寧ろ、秋人は知ってるの?】









知ってるも何も……









『…あそこは僕の家の近く…』



【へぇ?そうなんだ。綺麗な所だね。】



『……本当に知らないで描いたの?』



【だから俺は嘘をつけないって。】



『じゃあ!…じゃあどうしてあの絵を描けたの!?
あんな岩の形も完璧で、あの波止だってそのものだった!
でもおかしいんだ…
あそこは地元の人間だって来ないし、写真なんて撮れる訳ない…
だってあの角度には崖しかないんだから!』



【…へぇ。】



『それに…それにあの波止に立っている人は……』



【ああ、あれは秋人でしょ。】



『っ!?』



【それは昨日、秋人を見て俺も確信した。】



『……僕をからかってるの?』



【……】



『あの場所が何処なのか知らないって言ったのに、僕だって分かったなんて……何がなんだか…もう……』










意味が分からなくて、僕は混乱していた…


惺史の“嘘をつけない”って言葉を信用したいけど、あり得ない事ばかりで…全部が嘘に聞こえてくるんだ……










【…俺は秋人を騙したいとか思ってないよ。】



『じゃあ僕にも理解できる答えを教えてよ!』



【答え…ね。
じゃあ話すから、秋人は俺が“嘘をつけない”って信じてよ。】



『!?』



【じゃなきゃ話してもきっと秋人は理解できないままだろうから…】











…どうして…惺史が辛そうな顔をするの…?



理解できなくて困ってるのは僕でしょ?

それなのに…どうして……











【…領さんから、俺の事なにか聞いてない?】











…成瀬先生から惺史の事?






〖弟は不思議な事を沢山してくれるんですよ。
まるで何もかも知っているかのようにボソッと的を得たことを言ったり、私にはどうして必要か分からない物を届けて欲しいと言ったりとね。
小野君の名前や顔すら本当に知らないだろうに…〗







…あ………









『…不思議な事を…してくれるって……』



【そうなんだ…】



『でも…』









〖疑う気持ちは分かります。
小野君にはとても不思議な事だらけでしょうから。
でも、私は言いましたよね。“弟は間違わない”と。
だから私は何の疑問もなく弟の言葉を聞くし、弟に渡してと言われた物は確実に渡します。
私は弟を一切疑いませんから。〗












『……惺史は間違わないから…一切疑わないって……』



【それは領さんが俺を何年も近くで見てきたから言えるんだろうけどね…
だから秋人は俺を気味が悪いとか、おかしい奴って思うだろうから、話が終わったらもう近づかなくていいから。】



『っ!』



【秋人が知りたい絵の事はこれからちゃんと説明する。
ただ…もし秋人がそれでも理解できなくても、嘘は言わないからそこだけは信じてくれたら___ 】



『ごめん!ごめん惺史!』











僕、惺史に酷い事をした…



惺史は不思議な事をしてくれるって、お兄さんの成瀬先生から聞いていたのに、その事を深く考えていなかった。


その“不思議”に込められてる意味をちゃんと分かってなかったんだ…







“気味が悪い”とか惺史に言わせちゃった…





僕にだって話したくない辛い事があるのに、僕は惺史にそれを強要したんだ…

他人に言いたくない事だって、知られたくない事だってあるはずなのに…









惺史を傷つけた……










『ごめん…僕……惺史を傷つけた…』



【……】



『自分を否定される事がどんなに……どんなに辛い事か…僕は分かってたのに……惺史に言わせてしまった……』



【……】



『…ごめんなさい………』



【…秋人は優しいね。】



『っ……そんな事ない…惺史を傷つけた僕は優しくなんて__ 』



【優しいよ。
だって、俺の為に謝ってくれて…泣いてくれてるじゃん。】



『え……』









惺史に言われるまで僕は気づかなかった…


手で触れればこんなに…濡れていたのに……









『ごめ…ん……』




フワッ_

『……ぁ…』











今度は透明じゃなくて、とても淡い薄ピンクのような色…

それが僕の体の線をなぞるように囲んでいた…




…春の日差しみたいに柔らかくて……優しい暖かさ…












【今の秋人にはそれかな。】



『え…?』



【見えてるんでしょ?】



『…これ……惺史が…してたの?』



【…うん。】



『そう…なんだ……惺史は凄いね…』



【…気味悪いと思わないの?】



『思う訳ない……こんなに…優しいのに…』



【……】



『ありがとう惺史…それから本当に__ 』



【もういいから今は泣きなよ。】



『っ……』










あの時、車の中で【もう眠りなよ】って聞こえて力が抜けていったように、今も僕は涙が止まらなくなった……





惺史は僕の前にティッシュを置いてから何も言わなかった…

何も言わずただ、僕が泣き止むのを壁に凭れて待ってくれていた……







成瀬先生の言った通りだ……




疑いようがないんだよね…

こんなに優しいんだから、疑う理由がないんだ…







惺史は不思議な事ができる人…

惺史は嘘は言わない…

惺史が言う事は真実…

惺史がする事は…間違わない……











『…惺史……』



【…涙、全部出した?】



『だし…た……』



【そう。】



『惺史…聞かせて。絵の事。』



【いいよ。】










惺史は絵を描いた時の事を話してくれた。



惺史はよく絵を描くそうで、“降りてくる”という表現を使っていた。

その“降りてくる”というのは、頭の中に既に完成された絵が…という事らしい。





でも、個人に絵を渡す時はその人を見たり話したりしてから描くらしい。

その人を見ると“降りてくる”からと…






だけど僕の時はそれすらも出来ないのに、絵が描けたんだそうだ…



なぜか…

それは……








『夢にみたの?』



【そう。】



『惺史の夢に…僕が?』



【それは違う。
夢を見て凄く綺麗だったから絵を描いた。
夢で見たままに。
だから、あの絵に描いた人物が秋人なんだと分かったのは秋人と会った昨日。】



『…誰か分からなかったのに、絵を僕にくれたのはどうして?』



【…フフ。それは心配性の夢の管理者が“その絵の行き先を知ってる”って言ったから。】



『夢の…管理者?』



【そう。】










…夢の管理者……?


夢っていうと、“夢を食べるバク”とか思いつくけど……




あの白黒のバクが喋るの?











【まぁ、そこは深く聞かれると俺は黙るしかできないんだけどね。】












あ、嘘がつけないから“黙る”って事か……



じゃあ本当の事を話すとまずいって事なのかな?

って、事は僕が知ったらダメな部分…?







でも、惺史を見てて思い浮かんだ人はいる…


あの時も“不思議”な事だったから……





あ、違う……

あの人は“人じゃない”んだった…







……あれ?確かあの時…










『…惺史は…“人”だよね?』



【俺は人間の母親から産まれてるからね。】



『知り合いに“人じゃない”って言う方はいる?』



【フフ。多くいるね。】



『っ!』



【特に猫公園には知り合いが多いよ。】



『猫公園に……って、それ猫!』



【うん。いつも行くと触らせてくれる。】











……これも真実なんだろうけど、なんかはぐらかされたような気もする。





でも、その事は話したくないって事なのかも…

それか、あの方の事は話しちゃいけない…とか……






それに確かめる方法はある。

もし惺史があの方と繋がりがあるのなら、“恩人”とまで言っている桃井さんに合わせれば………





…桃井さん…今、どうしてるんだろう……


桃井さんだけじゃなくて、ニノさんも…それに波多野先生も……







成瀬先生が連絡してくれてるみたいだけど……





僕がいないから…3人でゆっくりご飯食べてるのかな…




これから先……僕は……









『僕はどうしたらいいのかな……』



【それは秋人次第でしょ。】



『……え?』



【……】



『惺史…今___ 』



【もう絵の事はいい?】



『え?…あ、待って、まだ……』



【まだあるの?
俺、結構喋ったから顔の筋肉が痛いんだけど?】



『…顔の筋肉までって……一緒に筋力トレーニングする?』



【しない。】



『でも惺史見るからに細いし、した方が__ 』



【秋人に言われたくない。】



『僕は入院してたから…』



【じゃあ秋人が筋肉ムキムキになって俺より大きくなったら考える。】



『え?あ、いや…それは……厳しいか…な?』



【フフ。で、まだ絵の事で聞きたい事って何?
最後にしてね。
次は秋人が喋る番だから。】



『うん、分かっ………て、え?』



【普通そうでしょ?
それとも俺にだけ話させる気だったの?】



『いや…そういう訳じゃ……』



【じゃあいいじゃん。で、なに?】



『う……』








なんか惺史には逆らえないっていうかなんというか……











【秋人?】



『あ……うん。あのね?一緒に手紙くれたでしょ?
そこに書いてあった“むかえに行ってあげて” って…何の事?』



【ああ、それね。】



『うん。』



【なんとなく…かな。】



『え?』



【フフ。】



『あ!ちょっと惺史!真面目に答えてよ?』



【真面目に言ってるよ。それでも“なんとなく”なんだって。】



『…そうなの?』



【うん。
あの絵が咲いた時にさ、改めて見たらさ“ここだよ”って言ってるように見えたんだよね。】



『…え?』



【あの人物両手上げてたでしょ?
それが俺には“ここにいるよ”って手を振ってるように見えたんだよ。
そこにいるのを気づいて欲しいのか、あの場で誰かを呼んでいるのかは分からないけど……もし…必死に待っているなら迎えに行ってあげて欲しいじゃん。
だからなんとなくそう書いただけ。】



『……必死に待ってる…?』



【もしさ、両手を振って“ここだよ”って言いながら泣いて誰かが待ってたら…場所を知ってる秋人ならどうする?】



『!』



【…ま、これは俺が勝手に思った事だけどね。】











…でも、あれはあの頃の僕の姿……


海に向かって夢を描いて歌っていたいたあの頃の…楽しかった頃の僕の姿……





呼んでる…?
待ってる…?


誰を…?


どうして…?










【それでさ?
本当は秋人はあそこで海に向かって何をしてたの?】



『…僕は……あそこで歌ってた……』



【歌?そうなんだ。それはどうして?話してくれる?】



『…うん。僕は___ 』