※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~
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1日眠っていたというのは事実みたいで、立ち上がった時に僕はフラついてしまった。
でもその時に成瀬先生が僕の腰を支えてくれて倒れずには済んだ。
それで成瀬先生が意外に力持ちというのも分かったけど……
『…そんなに寝てたなんて……』
〖小野君には必要だったのでしょう。〗
『でも…こんなに迷惑をおかけしてまで……』
〖小野君は寝ていただけなので何も迷惑にはなっていませんよ。〗
『いや…そういう意味じゃ___ 』
スー
〖あ、廊下眩しいかもしれません。〗
『え……っ!』
成瀬先生が和室の戸を開けてくれたから、廊下の眩しい明かりに一瞬目をしかめてしまった…
でも慣れてくればもう問題なくて…
『あ…お家だ……』
広い廊下に、白い壁。
名前が分からない緑色の観葉植物はあったけど、なんか普通の家みたいで僕は安心していた。
〖フフッ。はい、普通の家ですよ。〗
『あ…すみません。あの和室でお布団なんて久しぶりで…旅館みたいだなと思っていて…』
〖落ち着きませんでしたか?〗
『いえ…あの…凄く落ち着くお部屋でした…』
〖それは良かったです。
お嫌でしたら他の部屋をと思ったんですが、今日もそこで大丈夫そうですね。
あとで布団のシーツを取り替えておきますね。〗
『え?あ、いえ…僕は本当に___ 』
〖長い散歩はまだ続いてますから、ゆっくりしていって下さい。〗
車移動だけじゃなく、こうして泊まらせて頂く事も“散歩” に入るの…?と思ってしまう…
それに成瀬先生は“散歩”といい続けてくれているけど…
これ…絶対僕があんな事を言ったからだと思う…
“僕はあそこに居ない方がいい” と言ってしまったから…
『……』
〖ああ、明るい所だとよく見えますね。
良かった。昨日よりは顔色が良くなっています。〗
『!』
〖小野君。リビングに行ったら食事の前に少しだけ体の調子を診させて頂けますか?〗
『…体の調子を…?』
〖ええ。小野君は寝起きですからね。〗
『…それは成瀬先生が診て下さるという事ですか?』
〖フフッ。私は弁護士ですので体の状態の事はちょっと。〗
『…ですよね……じゃあ誰が…』
〖勿論、本職の人です。〗
…本職って……お医者様?
お医者様って…もしかして___
〖大丈夫。波多野医者ではありませんよ。
彼等はここにはこれませんから。〗
『!』
〖フフッ。私は小野君の弁護士ですから、小野君の許可がない限り情報は漏らしません。〗
…そう言ってくれるけど、きっとこれも僕を気づかってくれての事なんだと思う。
弁護士さんとしての事情もあるだろうけど、それ以上に僕が嫌がらないかという事だけを考えてくれたような…そんな気がする。
成瀬先生と一緒に廊下を歩きついた先は、ドアで区切られていない大きな部屋だった。
ダイニングキッチンに、リビング、そして小上がりになっている畳の間……
全体的に和風っぽいのが落ち着くんだけど…広いからかちょっと恐縮してしまう……
〖じゃあそこのソファーに___ 〗
サッサッサッ_
「お飲み物をお持ちしました。」
『え…』
〖ああ、綾野君ありがとう。〗
「いいえ成瀬さん。」
『あ……貴方は車を運転してくれていた……』
「初めまして。私、綾野 豪 と申します。」
『あ…僕は……小野 秋人です。』
「小野さん、ご気分はいかがですか?
喉が渇いていらっしゃると思いますが先ずは白湯をどうぞ。
冷たすぎる物を飲むと胃が驚いてしまいますので。」
『…え?』
〖言っていたでしょう?慣れた人が料理を作ってくれていると。
それが彼、綾野君です。
彼に任せておけば心配ないですよ。さあ、そこに座って飲んで下さい。〗
『あ…ありがとうございます。頂きます。』
ストン…
ソファーに座ると、綾野さんが目の前にカップを置いてくれたから、僕は熱すぎないそれを飲み干した。
…やっぱり喉は渇いていたみたい。
そして、そのカップの中身が無くなったタイミングでまた綾野さんは新しく白湯が入ったカップを持ってきてくれた…
……凄い…見られてる感じはなかったのに…
『あ…りがとうございます…』
「いいえ。
小野さんは食べれない物はございますか?」
『え?…あ、ありません…』
「そうですか。
成瀬さん。お食事は栗原先生の診察の後…そうですね。20分後で宜しいですか?」
〖ありがとう、綾野君。〗
「では準備しておきます。」
そう言ってキッチンがある方に向かっていった綾野さん…
エプロンしてたし、このお家のお手伝いさん…とかなのかな?
〖綾野君は一家に一人欲しいくらいのよく出来た人だけど、この家のお手伝いさんとかではないですよ。
彼には誰よりも優先する人は1人と決まっていますから、その付き添いでこうして今日もこの家に居てくれているというだけですから。〗
『…それは、先程言っていた栗原先生という方ですか?』
〖え?…フフッ。その人は違いますよ。〗
…成瀬先生でも、栗原先生という人でもないって事は…じゃあ他にこのお家に誰がいるんだろう?
__パタパタ
〖あ、来ましたね。〗
『?』
パタパタパタ
「いや~ごめんね?待たせてしまったかな?」
…えっと……お風呂あがり…って感じでタオルを首から下げてるのこの人はいったい誰だろう?
〖紹介します。
こちらが先程名前が出ました“栗原先生”です。〗
「やあ、おはよう。栗原 一止と言います。内科医をしてます。」
あ、成瀬先生が本職と言っていたお医者様!
『は、初めまして。小野 秋人 です。』
「はい、小野君ですね。初めまして。
水分はとったみたいですね。
どこか体に違和感はありませんか?」
『…あ…いえ、大丈夫です。』
「それは良かった。
では早速で申し訳ないのだけれだ、少し診させてもらってもいいかな?」
『…え?…でも本当に大丈夫なんです…』
「え!もしかして君も医者は嫌いなのかい?
近寄るな的な感じかい?
それは困った…免疫があるからまだ平気だけど…」
『……え?』
〖イチさん。小野君が困ってますから意味の分からない事は言わないであげて下さい。〗
「あ!ごめんごめん小野君。
で、医者は嫌いかい?」
『っ!…そんな事はありません……』
「そう!それは嬉しいよ♪」
『……』
〖イチさん。〗
「あ、そうだったね。
えっと小野君?3つ、させて欲しい事があるんだ。
先ず1つは脈拍と血圧を測らせて欲しい事。
もう1つは目蓋を確認させて欲しい事。
そして最後は、その左手首の傷をみせて欲しい。」
『!』
「最初の2つは丸一日寝ていたから、君の今の健康状態を知りたいんだ。嫌かな?」
…それは分かるけど……左の手首の事はどうして知ってるんだろ?
見えないようにって、今もこうして肌色のテーピングを巻いている。
それなのに栗原先生は“傷”って言った…
怪我じゃなくて、傷って…
血が滲んでる訳でもないのに、どうして……
『傷って…どうして……知っているんですか?』
「え?ああ、それはね___ 」
‹ ミャァ~ ›
え?この可愛い声って…
「ハハ。おでましだね。」
『…マソラ…ちゃん?』
トットット
‹ ミャァ~ ›
「この子が教えてくれたんだよ。」
『え?』
「この子は“痛い”所が分かるからね。
だから君の痛いところも見抜いたんだよ。ね、真空ちゃん?」
‹ ミャ♪ ›
…そんな事できるの?
あ、でも匂い…とか?
いや…犬なら嗅覚が凄いとは聞いた事があるけど、猫はどうなんだろ?
「あぁ~可愛いなぁ~♪もう食べちゃいたい♪」
……え…
‹ ミャゥ… ›
「え?え?どうして離れてくの?真空ちゃんおいで~?」
‹ ゥミャ… ›
〖…ハァ。イチさんが“食べたい”とか言うからですよ。〗
「え?いや!本当には食べないよ?
真空ちゃんが本当に可愛いからつい食べちゃいたいなって言っただけで!」
〖あ、また。〗
‹ … ›
「え!あ、待って真空ちゃん!離れないで!
真空ちゃんに臭いとか言われたくないから、こうしてシャワー浴びて万全にしてきたのに!」
…そういう…理由なんだ…
でも、なんかこの先生……表情が豊かで……
‹ ミャゥ~💦 ›
「ああ!行かないで~」
面白いお医者様……フフ。
結局、マソラちゃんの姿が見えなくなってしまって栗原先生は項垂れてしまった。
でも、成瀬先生に低い声で“栗原先生”と呼ばれると、ハッとしたように顔を上げて、また僕に診させてくれる?と聞いてきた。
僕はさっきの栗原先生を見たからか、“お願いします”と診てもらう事にした。
1日起きなかった訳だし、こうしてお邪魔しているんだからこれ以上迷惑と心配をかけないようにする為にはそれが1番だと思ったからだ。
栗原先生に“腕を捲って”と言われた僕は迷わず左腕を捲ろうとした。
でも…
「そっちは傷の手当てをしたいから、できれば逆側でお願いできるかな?」
と、言われて少し躊躇いながら右袖をゆっくりあげて肘まで来た時に栗原先生が僕の手を上から優しく止めてくれた。
そして、肌に擦れないようにゆっくりと袖を戻してくれると…
「脈拍だけ測らせてね。」
と、微笑んで言った…。
それだけで、どういうお医者様なのか僕は分かった気がした…
栗原先生は本当に優しく僕に触る先生だった。
下目蓋の色を見る時も“触るよ?”と聞いてくれたり、左手首のテーピングを外してくれる時も“痛いよね”と言ってそっと時間をかけて外してくれたりした。
さっき栗原先生が僕に“君も医者は嫌いかい?”と聞いてきたけど、誰かに言われたのかな?
僕の左手首を見て、こんな泣きそうな顔をする優しいお医者様なんだから、それはないと思うんだけど…
そして、“痛いよね” とまた言われながら栗原先生に左手首を消毒されているのをじっと見ていた時、僕はフワッとした何かを体に感じて顔を上げた。
そこにはマソラちゃんを腕に抱く、僕くらいの男の人が立っていた……
『っ!』
僕はついその人とマソラちゃんを見つめてしまった…
急に現れたから驚いたというのもあるけど、それ以上にその人とマソラちゃんが透明なシャボン玉のような何かで覆われているように見えたからだ。
…あれ、なに?
僕が目を離さずに見ているからか、その人も僕を見続けていた。
でもマソラちゃんが動いてその人の首もとに顔を擦りつけると、その人はマソラちゃんの背中を撫でて、そして……
【真空を怖がらせたのは誰ですか?…栗原先生。】
この声…あの車の中で聞いた声だ……