※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























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吉岡さんは僕のリハビリを担当してくれる予定だった人…



そして…

僕にあの時火を見せてきた人…









『っ……ハァ……』









あ…どうしよう……思い出したら…怖い……









スッ_

『!』



〖これ香り袋だそうです。持ってみて下さい。〗










…え?


目の前に出されたのは、小さな黒猫の形をした紐がついているものだった。


そして鼻に近かったからか、甘い花のようなとてもいい香りがしてきたのが分かった。







僕はそれを弁護士さんから受け取ると、鼻にあてて香りを嗅いだ…








…なんの香りだろう?



キツ過ぎず、優しく感じるいい匂い…

こんな柔軟剤があったら直ぐに買いたいくらい…










〖落ちつかれましたね。〗



『え?……あ…』










僕は夢中で香りを嗅いでいたみたいで、そっちに集中していたからか、いつの間にか気持ちが落ち着いていた…










『あ!』









そして気付いた。

人の物なのに何度も鼻をつけて香りを嗅ぐという失礼な事をしていた事に…










『すみません!失礼な事をしました!』



〖その香り気に入って下さいましたか?〗



『はいとても!…あ、違う!これお返しします!』



〖いいえ。それは小野君にと言われて預かった物ですから良かったら受け取って下さい。〗



『…え?僕に…ですか?』



〖はい。〗



『…なぜ…僕に?』



〖“役に立つと思うから” と言われました。
あと、お見舞いの代わりだそうです。〗











…役にたつ?



確かに、既にこの匂いで落ちつかせてもらったから役に立ってるであってると思う…

それに、今手に持ってるだけでもじんわりと温かさを感じていて…それが不思議なんだ……



ホッカイロ…じゃないみたいだけど、どうしてかな?








それに、お見舞いって…










『…あの、これを本当に僕が頂いていいんですか?』



〖ええ。小野君が受け取って下さると喜ぶと思います。
それ、中の香りの調合もそうですが黒猫の入物も手作りしたみたいなので。〗



『え!?』



〖器用ですよね。〗



『…その……どなたが僕にこれを?』



〖ああ、私の弟からです。〗



『弟…さん…ですか?』



〖はい。〗









…どうして弁護士さんの弟さんが、僕にこれを?


それに、弁護士さんとも今日あったばかりなのにその弟さんなんて僕は知るはずもなくて…




それなのに僕にお見舞いなんて…






しかも、最近匂いに悩んでいた事が分かっているみたいにこんないい匂いの香り袋をくれるなんて…









『あの…弟さんって……』



〖不思議ですよね。〗



『……え?』



〖私もなぜ香り袋を持たされたのか分かりませんでした。
しかしそこに疑いは無かったんですよ。
彼が…あ、弟がする事にはいつも間違いがないんです。〗



『間違いが…ない?』



〖ええ。今も小野君がその香り袋で落ちついたのを見ましたから。〗



『あ…』



〖それに、先程私が“ある子に言われた”という話しをしましたが、その“ある子”も弟なんですよ。〗










それって、弁護士さんがさっき話してくれた“本人はどう思うかな” と言ってくれた人の事だよね?

僕の気持ちを汲んでくれた事を言ってくれて、弁護士さんの気持ちを変えてくれたっていう…





でも…

どうして会った事もないのにこんなに僕の事が分かるんだろう…



まるで僕の心が読めるみたいに…










〖やはり弟は間違えませんね。〗



『…え?』



〖小野君は吉岡の処罰など望んでない…そうですね?〗



『!』








…そう…だった。

弁護士さんに吉岡さんの事を問われていたんだ。




でも、それは僕が何かを決めていい事じゃないと思ってる。

僕はそんな偉い人間じゃないし、僕があの人から仕事を取り上げる事なんてできない…









『はい。僕は…何も望みません。』



〖…そうですか。
院長も小野君がどうしたいかで今後の事を考えると言っていますので、小野君がそう仰るなら私の考えで動きます。〗



『え!ま、待って下さい!』









それじゃあ吉岡さんもこの病院も___









〖悪い事をして何もしないという事はできないんですよ、小野君。〗



『そんな!』



〖落ち着いて下さい。〗



『でも!』



〖落ち着いて下さい。
私は小野君の力になると言いましたよね?
そして、弟の言葉で小野君を更に苦しめる要因がどんな事かを理解しています。
その上で、悪いようにはしないから私に任せて下さいと言っているんです。〗



『え…?』








どういう事…?










〖実は先に私は今回の事で吉岡と話をしました。〗



『!』



〖彼は自分の嫉妬の所為でこんな事をしでかしてしまったと言っていました。〗



『…嫉妬…?』



〖佐東君にだそうです。〗



『!』



〖佐東君の指導のもと着々と元気になっていく小野君を見て、悔しかったそうです。
自分は絶対に患者に必要とされる立場、自分がいないと駄目なのだと勘違いして調子に乗っていたのでしょう。
だから、自分の思い通りにいかない事に怒りあんな事をしでかした。〗










…やっぱり僕の所為だったんだ。




僕が佐東さんを頼ったから…

吉岡さんが苦手だと思って、佐東さんにリハビリを教えてもらう事をお願いしたから……








『僕の…所為です。
吉岡さんが怒ってあんな事をしたのは僕が___ 』



〖そうだとしても、彼がした事は本来許される事ではありません。〗



『でも僕が!……僕が吉岡さんにリハビリの指導をお願いしていたらこんな事には…』



〖吉岡は小野君が気を失い倒れた事で怖気づいて途中で逃げたようですが、当初の計画では、小野君が火が苦手なのを個人情報で知り、驚かせ慌てて転んだりしてまたどこか怪我をすればいいと考えたそうですよ。
そうすれば、佐東君の手におえなくなって自分を頼る事になるだろうと。〗



『っ!』



〖…それでもまだ吉岡を庇い自分の所為だと言いますか?〗



『……』



〖小野君が優しいのは分かります。
だから私はそういう人にはこう言います。
もし、それをされた相手が自分の大切な人だとしたらどうしますか?…と。〗



『っ!』



〖だから認めて下さい。
小野君は悪くない。そして佐東君もです。〗



『……』



〖小野君、“自分の所為”だと思い続けるのは辞めて下さい。
小野君がそう思い込んでしまっていたら、逆に貴方が傷つける側になってしまいます。
貴方が1人で歩いた時に自分の事のように一緒に喜んだという彼を…〗



『っ……佐東さん…』



〖彼が誰よりも経験があり優秀で、小野君との信頼関係も素晴らしく良かった。
その結果に吉岡はただ嫉妬してしまったんです。
間違いを起こす程、若く愚かだっただけです。〗



『……吉岡さんは…どうなりますか…?』



〖小野君が望めばどうとでもします。〗



『っ!…勝手かもしれませんが…何もなかった事にはして頂けませんか?』



〖小野君はそれでいいんですか?〗



『……怖かった…です。
正直、思い出すと…今も……怖いです。』



〖……〗



『でも…それでも……頑張って資格までとったお仕事を…僕は奪えません……』



〖……〗



『…ごめんなさい……』










もう、自分の所為だとは思わないようにする……


だってその所為で佐東さんが苦しむ事になるかもしれないから……






だから、この事は忘れる…

もし、吉岡さんに会っても平然としていられるように僕が頑張ればいいんだ……











〖分かりました。
院長には小野君がそう思っている事を伝えます。〗



『あ……ありがとうございます…』



〖小野君、そんなに気を張らなくて大丈夫ですよ。〗



『…え?』



〖吉岡は昨日付けでこの病院を退職していますから。〗



『え!?』



〖ああ、大丈夫ですよ。
彼の免許を剥奪する事はしていません。
退職も自分からという事にしましたので、再就職先もここから遠くの地でなら見つかるでしょう。
それも心配いりません。こちらでも彼の今後は調査しますから。〗



『…どうして……』



〖小野君はそう言うだろうと思って先に行動しました。
言ったでしょう?私は貴方の力になる為に来たと。
小野君が退院後も何の心配もなくここに通えるようにしたまでです。〗



『!』



〖それと小野君だけが苦しむ思いをするのは納得いかない方達が小野君の周りには多いので、その対策です。
あとは、私情も少し。〗



『…私情?』



〖ええ。
悪い事をしたと謝りたいという吉岡に、私は小野君に謝らせる機会を作らなかった。
“許しなんて貰えると思うな。一生その事を後悔していろ”…とね。〗



『!』



〖…フフッ。この位なら小野君も許容範囲ですよね?〗










…一瞬……凄く背筋がゾワッとした……








〖あ、そろそろ佐東君の所に行かないといけませんね。
小野君が聞きたいであろう入院費や通院にかかるであろう金額も既に調べてありますのでお答できますよ。
今日は邪魔な桃井社長もいませんから、病室でゆっくり話ましょうか?〗








…あれ?

今、“邪魔な”って聞こえた気が…








〖やはり今日に日にちを変更しておいて正解でしたね。
では、行きましょうか。〗









…あれ?

日にちを変更した…って…桃井さんがいない日を狙ったって事?




でも、桃井さんがいたら入院費の話もできない。

それに、吉岡さんの話だって……





あ、でも…桃井さんはこの病院を潰すみたいな事を弁護士さんに言ったんだった……

じゃあ桃井さんは“誰か”を知ってた…?










『あ、あの!』



〖はい?〗



『あの…吉岡さんの事を桃井さんは…』



〖“誰か”までは知りませんよ。
目星はついていたみたいですが、桃井社長は証拠を得られませんでしたからね。
だから私に依頼の電話ん寄越したんでしょうし。〗



『え?…じゃあ知ってるのは弁護士さんだけですか?』



〖あとは院長ですね。私が報告しましたから。
あ、桃井社長への今回の事についての説明は私に任せて下さい。
私の雇い主は小野君です。
小野君が言いたくない事なども心得ていますから。〗












…それは助かります。



でも……

本当にこの弁護士さんは何者なんだろう?





弁護士さんは証拠も見つけて、ここの院長さんとも話してくれて、吉岡さんの事も僕の気持ちを汲んで考えて行動してくれて、あと僕が気にしていた入院費の事も調べてくれたって事?

あ、古牧先生との書面もそうだ。





…いや、もしかしたら他にもあるかもしれない。






桃井さんから連絡があってからそれ全部をしてくれたとして……こんな短期間にいったいどれだけの事を…?











『…ブルッ…』



〖おや?寒いですか?
それはいけませんね。早く病室に行きましょうか。〗











桃井さんが言ってた“恐い人”っていう意味…なんか分かっちゃったかも……