※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























.•*¨*•.¸¸♬冬司side







俺の電話に思ったより早く出た竹本 夏生。


…仕事じゃないのか?暇か?





いや、そんな事よりもこいつにアキの事情を話さなくてはならないと思っていると、あっちから聞いてきた。








〔春に何かあったんですか!?〕









…話が早くて結構。



こいつには何の情報も与えてなかったから、俺が話す事全てが初耳なはず。

だが、一切言葉を挟まず最後まで俺の話を聞いていた。




そして……









〔その事なら俺が役にたてると思います。
直ぐに向かいますのでどこの病院か教えて下さい。
迎えは結構です。
こちらに来て頂くより自分から向かった方が早いと思うので。〕









…ムカつくくらいに呑み込みの早い奴だ。

…そして行動も早いときた。






“店長”と竹本夏生に呼び掛ける声が後ろで聞こえたという事は、今いるのはあいつの店だろう。


仕事中…それでもアキの為なら迷わないか。








……フンッ。とことん気に食わない奴め。











縞夫木が迎えに行く必要がなくなったから、俺達はアキの元に急いだ。


受付に聞くと、既に病室に移動していると言われ俺達も向かった。






そこには数名の医師と看護師、佐東が立っていた。


そして、真ん中のベッドには横になるアキ。




折角、点滴が外れあの細い腕にあった青い痣が治ったと思ったのに、またしなくてはいけないのか…








バッ!
「社長!申し訳ありませんでした!」



《…佐東。》



「俺がついていながらこんな事に…」



《…いや、お前は悪くないだろ。
すまなかった、冷静に考えれば分かる事だったな。
お前はアキが検査が終わったとは報告していない。
なら、こうなった現場にお前はいれなかったという事だよな。》



「!」



《悪かったな、佐東。》



「っ!いいえ!謝るのは俺の方です!
俺が…俺が無理にでも一緒についていけば…」



ポンッ
「!!」



《これからもアキを頼むぞ。
唯一、俺がアキに触れる事を無条件に許してやってるのはお前だけだからな、佐東。》



「っ…はい!ありがとうございます!」











スッ



…アキ。

顔色が青白い。




それに、いつものあの天使の寝顔じゃない。

辛そうな、苦しそうな、そんな顔をしている。







…虹也の時にも思ったな。


その苦しみを俺が引き受ける事ができたら、どんなにいいかと……






俺がアキの頬を撫でている時、1人の女の看護師が俺の方に向かって謝罪をしてきた。








(すみません!私の…私の不注意です!
小野さんを1人にしてしまったんです!本当にすみませんでした!)








確か、この看護師の事も佐東からの報告にあったな。




アキと俺の関係が気になるらしいが、余計な詮索はせず勤務態度は真面目、アキとの接し方も良し…だったか。





だが、だからといってこの女の評価が俺の中で良いとは限らない。

アキがこうなった事に、少しでも関わっているなら…な。









「社長。」







…チッ。

縞夫木め、俺がこれから何を言おうとしているか分かりやがったな。








「失礼。今後の事は小野君が目を覚まし事情を聞いてからこちらで判断させて頂きます。」



(あ…はい…)



「迅速に対応して頂いたと佐東から聞いております。
その事は感謝しております。ありがとうございました。
しかし、小野君が起きるまで皆様にここにいて頂くのは遠慮申し上げます。
どうぞ、お仕事にお戻り下さい。」



(でも…)



「絹屋くん、そうしてくれるかい?
こんな多人数で囲み小野君を驚かせる訳にはいかないからね。」



(古田先生…)



「小野君が目覚めたら知らせるから。
私は、いさせてもらうよ。いいかい王子?」



《…どうぞ。》










この中で唯一信用しているのは、この医者だけだ。


あとは邪魔なだけだからな。











コソッ…
「…社長。俺、少しあの時の詳しい話を聞いてきます。」



《…あの絹屋という看護師にか?》



「はい。」



《行け。》










どうやら、佐東も俺と同じ事を思っているらしい。

今回のこのアキの件は故意に起きた事だと…






病院側はどうやら、アキが自分で車椅子から転んでしまったと思っているみたいだが俺は絶対に違うと確信している。






先ず、アキの発作のようなものが起きた時に言ったという“火”という言葉だ。




それが苦手だという事は、俺と虹也は知っている。

俺達に迷惑がかからないようにと、アキが自分から言ってきたからだ。




あとは、“バス”とも言っていたが、アキがバス事故にあって怪我を負った事を考えれば恐怖の対象になる事くらい簡単に分かった。

だから俺達は徹底的にそれを避けさせてきた。






だが、その時にアキはこうも言っていたんだ。



“見なければ大丈夫なんです”と…。








という事は、アキは“見た”という事になる。



発作が起きる恐怖の火を、あの一般の者は入れない場所で実際に…








そしてそれが偶々見てしまったものじゃない事も分かる。





何故なら、倒れてしまったアキを1人放っておく病院関係者などいない。

車椅子にも乗って病衣を着ているんだ、直ぐにアキが患者だと分かるはずだからな。





だから、これは故意なんだ。








そして、そんな事をした奴も絞れてくる。




今回手術するにあたって事前に記入した病気遍歴やアレルギーなどを書く備考欄に苦手なものとして“火”とアキが書いた事を知りえる人物だからだ。




この病院の、しかもアキに関わる奴等の中にそいつはいる。


俺のアキを苦しめ、傷つけた奴が。







絶対に赦さねぇ…












コンコンコン


「…社長、もしかして。」








来たか。








《縞夫木、奴を中に入れろ。》



「分かりました。」









縞夫木が、扉を開けると息が荒い竹本が立っていた。


そして、近くまでくると額に薄っすらと汗をかいているのも分かる。





そして、アキを見てから俺の方に深く頭を下げた。







…チッ。

いちいちする事がムカつく奴だ。



どうせ、“連絡をありがとうございます”とでも言いたいんだろう。







今回は仕方なくだ。


俺はお前なんかに連絡はしたくなかったが、アキの為に仕方なく!だからな!





その意味も込めて竹本を睨んでいると、古田医師が“どちら様かな?”と聞いてきた。



それに答えるのは竹本。





…いや、竹本が答えるのはあっているんだろうが、古田医師がアキの手術をしてくれたと分かると“ありがとうございました”とかぬかしやがるから気に食わない!

しかも涙ぐんでいるから余計気に食わない!





アキは俺のだっつうの!でしゃばるなよな!!













だが、そのでしゃばりもアキが目を覚ました時には役にたった。






古田医師と竹本が話している時、アキは目を開けた。

だが、気づいた俺が声をかける前にアキの体は震えてきて息も荒くなっていた。






踠くように腕を振り上げようとするから、古田医師は点滴をしている腕を押さえ、俺達にも体を押さえるように言ってきた。

暴れては手術した箇所がどうなるか分からない…と、いう事だろう。





縞夫木は足を、俺は左腕をできるだけ優しく力を込める事に気をつけて押さえた。





だけど、竹本は直ぐにアキの顔の方に向かい、アキの目を隠すように手を乗せた。


そして耳元で…








〔春…。春、何も見なくていい。
ここは安全だ。怖いことは起きない。
大丈夫だ。だってここには俺がいるんだから。
ここは安全。もう大丈夫だからな春。〕



『ハァハァ…ハァ…ハァ…』



〔うん、そうゆっくり呼吸しような。〕



『ハァ…ハァ…』



〔春、俺が分かる?〕



『ハァハァ…はい…夏さん…』



〔うん、当たり。久しぶりで苦しかったよな。
でも、大丈夫だからな?ここは安全だから。〕



『ハァ…ハァ……はい…』



〔疲れたな、春。
少し休もうか。〕



『夏…さん……』



〔大丈夫だ。
春が何も見なくていいように、このまま隠しててやるから…〕



『…は…い……』











そう言って竹本はアキの目を片手で隠しながら、頭を優しく撫でていた…


その内アキは静かに寝息をたて、竹本が手を離して見たアキの寝顔は穏やかになっていた…







……チッ。

やっぱりムカつく奴だ。







だが、これで対処法が分かった。

もうこいつに用は無い!







《おい!竹本__ 》



「社長、お静かに。」



《あ?》



「起きてしまっても宜しいんですか?」











そう言って、縞夫木が指を指したのは俺の袖を握るアキの手だった。




……仕方ない、これもアキの為だ。







俺は何も言わず、指だけで縞夫木に椅子を持ってこさせるとそこに腰掛けた。

そして、アキの手から俺の袖を抜き、今度はしっかりと指と指を絡めて繋ぎ直した。





キュ…






…フッ。



安心しろ、アキ。


今度からは俺が、お前の見たくないものを全力で隠してやるからな。



だから今はゆっくり休め…



そして目覚めたら、この繋いでいる手を見ていつもみたいに恥ずかしそうに俺に笑ってくれよな……