※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~
.•*¨*•.¸¸♬
「ゆっくり、ゆっくり…そうです。」
グッ…
『…はい。』
「うん。いいです、いいですよ小野君!その調子です!」
ググッ…
『…はい。』
「大丈夫です!支える準備はできてますから焦らずゆっくり!」
グッ!
『っ…』
「お!おぉ!凄いです!立てましたよ小野君♪」
……ハァ…や、やった立てた。
「痛みはないですか?違和感は?」
『え?あ…大丈夫です…』
「あー、その言葉は社長に直ぐに信じるなと言われているんですよ。
ですのでもう1度聞きます。小野君どこかに痛みはありませんか?」
…“直ぐに信じるな” か……
僕って信用されてないなぁ…
『本当に痛みはありません。』
「はい、それは良かったです!
では、そのまま動かずに立ったままでいましょう。」
『…え?あ、はい。』
「大丈夫です。後ろにいます。
立っていられないと思ったら抱き抱えますので、いつ力をぬいて下さってもいいですからね?」
『…はい……佐東さん。』
「隆ちゃんと呼んで下さいと言いました!」
『…はい…隆太…さん…』
「隆ちゃんですって!」
このハキハキと話す僕より20センチくらい背が高い人が、佐東隆太さん。
4日前に桃井さんが僕に紹介する為に連れてきた人。
…驚いたけど、桃井さんの事務所の社員さんで僕の“お世話係” さんらしい。
そんな人、僕には勿体ないのでいりませんと言ったけど、僕の意見を桃井さんは断固拒否。
虹也さんに仕事が入った事で忙しくなるらしく、頻繁にここにいれなくなったからその代わりらしい…
その事にも僕は“1人で大丈夫ですから”と言ったけど、その言葉は桃井さんに睨まれて完全にスルーされた……
でも、こうして僕が3日で立てるようになったのも佐東さんのお陰だ。
早く立ってトイレに行きたい僕に“無理はさせれません” と言うこの病院の理学療法士の人をやんわりと遠ざけて、こうして僕に付き合ってくれたから…
バンッ!
(佐東さん困りますよ!またそんな勝手に!!)
…この、おもいっきりドアを開けて入ってきたのが僕のリハビリを担当してくれる予定の吉岡さん。
…僕も1度会ってるけど、ちょっと苦手かも…
「え?何か間違ってます?」
バタバタバタ…
(3日で立たせるなんて、小野君には早すぎます!)
「リハビリには本人の気持ちが1番大事だと思いませんか?」
(それはそうです。ですが__ )
「古田先生からも、波多野先生からもOKは出ていますよ?
伝わってませんか?」
(あ、いえ…それは聞いています。
植皮箇所も柔らかくいい状態なのでと…。
しかし、僕が聞いたのは徐々にという事ですよ?)
「はい、これも徐々に…ですよ?
マッサージをしながら少しずつ骨盤を動かして可動域を増やしこの3日で漸くここまでこれたんですから。ね、小野君?」
『あ、はい…』
「いや~本当に小野君は頑張ってくれましたよ♪」
(ですから!僕が言いたいのは……そう!
彼の担当は僕なんです!彼のこれからの日程も組んでるんですからもう勝手をされては困るんです!
僕の仕事を取らないで下さい!)
「俺は吉岡さんの仕事を取ってる気はありませんよ?
ただ小野君のしたいと思っている事のお手伝いをしてるまでですから。」
(たまたま介助の仕方を知っていたからといって、これは素人ができる事ではないんですよ!
ここは病院です!彼が入院している以上僕に預けていただかないと__ )
「リハビリをするもしないも本人次第だと思いますが?
それともこの病院に入院しているから義務だとでも言いたいんですか?」
(っ!)
『…あ、あの…佐東さん?』
「隆ちゃんですって。
あ、ずっと立たせたままですみません。
1度ベッドに座りましょうか?補助しますのでゆっくり腰を下ろして下さい。」
『え?…あ、はい…』
(佐東さん!ですからそれは僕の仕事です!)
「少しうるさいですよ。」
(!)
「ここは病室なんですから、少し考えましょうよ…ね?」
(っ……)
「はい、小野君はゆっくりどうぞ。」
僕は佐東さんに言われる通り、ゆっくりと腰を下ろした。
その間も佐東さんは僕の脇に手を入れていてくれて、その大きな手に安心できていた。
「おぉ!いいですよ小野君♪」
『あ、ありがとうございます…』
「と、いう事で小野君は少し休まれますが…吉岡さんはそもそも何をしにここにいらしたんですか?」
(はあ!?
僕はこれからのリハビリの事を小野君に話しにきたんです!)
「ああ、そうでしたか。
でもすみませんね?小野君はこの後診察が入ってますのでそれまでゆっくりさせてあげたいんですよ。
という事で、どうぞお引き取り下さい。」
(っ!!そうですか!
ならこちらにも言いたい事はありますので古田先生に先に僕から話をしておきます!)
「どうぞどうぞ。
あ、そうそう吉岡さん?
PTは担当制だとしても、患者が合わなければ直ぐに変えてもらえますよね?
だって信頼関係が1番ですもんね?」
(なっ!)
「あ、それと俺は素人ではないですから。
ちゃんと国家試験受かって働いていましたし。
言うなれば、吉岡さんの先輩…という所ですかねー♪」
(はあ!?)
「あ、すみませんね、お時間取らせちゃって♪
もう結構ですのでどうぞ行って下さい?」
(っ!!失礼します!!)
バタバタバタ
あ……行ってしまった…
スッ
「小野君、膝裏に手をいれますね。
そのまま少し横になりましょう。」
『……佐東さん…』
「隆ちゃんですよ~♪
はい、布団かけますね~」
『…ありがとうございます。あの、隆太さん?』
「隆ちゃん…は、難しいですかね?
じゃあ隆太で我慢しましょう!
それで、なんですか小野君?」
『あの…僕の所為ですみません。』
「え?」
『僕が…早く歩いてトイレにけ行けるようになりたいと言ったから…こんな事に…すみません、隆太さん。
この事で隆太さんがもし悪く言われでもしたらと思うと…僕…』
「…本当に、貴方という人は社長が言っていた通りの人なんですね。」
『え?』
「はは♪これは守りがいがありますね♪」
『…え?』
「小野君、俺の事は気にしないで下さいね。」
『え?…あ、でもそういう訳には…』
「リハビリというのは強制ではないんですよ。
辛いのも苦しいのも本人なんですから、始めるも続けるも辞めるも本人次第なんです。
でも、小野君はちゃんとした意思をもってました。
だから俺は、その意志を尊重し、少しでもそのお手伝いができればと自分で考えてとった行動です。
だから、誰に何を言われでも構いません。
だって小野君が、1人で立てた時に笑ってくれました。
もうそれだけで俺はハッピーですから♪」
『佐東さん…』
「“佐東”に戻ってますよ♪」
『あ…隆太さん…』
「はい♪」
『…本当にありがとうございます。』
「いえいえ♪」
『…それで、あの…この後も…指導をお願いできますか?』
「早くトイレまで1人で行けるようになりたいんですよね?」
『はい。直ぐにでも。』
「いいですね~そのやる気♪
でも、ここは焦らず…ですよ?
さっき、両足で立てた時にやはり左側に重心が偏っていました。」
『え?…そうでしたか?』
「意識していなくても、人はどうしても痛む所を庇ってしまいますからね。
でも、そのままでは予期せぬ場合に踏ん張りがきかず転倒してしまう事があります。」
『……』
「そんな顔しなくても大丈夫です。
小野君はちゃんと両足を地面に着けていましたから、脚を伸ばす事に恐怖というものがないと分かりました。
歩けるようになるのも早いはずですよ。
今度は重心を意識しながらその場で片足ずつ動かしてみましょう。
勿論、俺が補助につきますから。」
『ありがとうございます!』
「おお♪そんなに喜んでもらえるとわ。
本当に早くトイレに行きたいんですね♪」
『はい。本当に早く行けるようになりたいんです。』
もう4日連続で桃井さんにアソコを見られてるから…
「なれます、なれます♪
俺が太鼓判をおしますよ♪」
『……』
「あれ?どうしました?
まさかどこか痛みが出たとか___ 」
『あ、いいえ。痛みはありません。』
「ジー」
『本当ですから。』
「分かりました。では、どうしたんですか?」
『あの?隆太さんはリハビリを指導してくれる人なんですか?』
「あ、PTですか?
そうです、俺は理学療法士としてこの前まで他の大学病院で働いていましたよ。」
『…そんな人がどうして桃井さんの事務所に?』
「社長に“お前が欲しい”と言われたんですよ。」
『…え?』
「こう、両手を握りしめられて…“俺の所に来い”と。」
『……え?』
桃井さん…が……?
「はは♪冗談です♪」
『……は…い?』
「もう嫌だな~♪
あの社長が、男の俺の手を握りしめるなんてある訳無いじゃないですか~♪」
…いや……僕も男だけど、よく握りしめられてる気が……
「俺はただの転職です♪」
『…ただの…ですか?』
「そうです♪」
『…そんな資格を持っているのに…芸能事務所に?』
「そうです♪
待遇が良くて、しかもこうして小野君の役にもたててるんだから本当に転職して良かったです♪」
『…それは…本当にただの__ 』
「転職ですって♪」
『…因みになんですが、いつから桃井さんの所で仕事をされてるんですか?』
「入ってまだ1週間ですよ~。ピチピチの新人ですね♪」
『…あの、やっぱりそれって僕の___ 』
「ただの転職です♪」
『……理学療法士さんなのは?』
「はは♪偶々ですって♪」
…絶対に、偶々なんかじゃない気がする……