※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























~No.5~





真剣な表情。

そして俺達を急かすように立たせた理事長。





…俺はこんな理事長を初めて見た。



そして理事長をこんな風にするだけの何か…




いったい同じ特選科の奴は何をしたというのか?












同じ棟にある理事長室は生徒室からさほど離れてはいないから直ぐに着いた。


俺達は入れない理事長室。




だが理事長が開けたその扉を何の躊躇いもなく入っていく海寧。

そして伊吹も…





海寧はなんとなく分かる。

理事長に呼び出されてお茶をするくらいだからな…。




だが伊吹は?



まぁ、それは今はいいか。







俺達3人も先に入った海寧達の後に続き中に入ると、理事長室の重厚な机の周りに5人…。



校長、副校長。

それに生徒指導主事に学年主任…そして特選科1―Bの副担任。





担任がいないのは、その生徒と話しているのか…?




しかし1―Bの誰だ?

そして何をしたんだ?








「YOU達も座って。」








そう理事長に言われてすんなりソファーに座った海寧。


俺達もそれにならって理事長の前にひとかたまりに並んで座った。








『話して下さい。』



「OKだよ。
じゃあ、誰か詳しく説明してくれるかい?」



「理事長、私の方から宜しいですか?」



「頼むね。」



「はい。
では生徒会の皆様、私から説明させて頂きます。」







そう話し出したのは生徒指導の教諭だった。


副担は固まっているし、学年主任は汗を拭くのに忙しいみたいだ。



そう考えると1番事情を把握しているだろう生徒指導教諭が話すのは納得だな。










俺達に説明された話しはこうだ。






1―B、喜井 毅彦(きい たけひこ)。

そして、同じく1―Bの椎名 尊(しいな みこと)。






この2人の写真が撮られ学園に送られてきたらしい。



その写真が2人がただ並んでいるだけの写真ならこんな問題にはなっていない。







少しは躊躇ってもいいのでは?…とは思うが、余程信頼されているのか躊躇いもなしに理事長が俺達にも見せてくれた数枚の写真。


そこに写っていたのは、2人が男から紙袋を受け取ったり、話したり…そして、男に現金を渡す姿だった。





…これは___








〈…加工無しかは確認しましたか?〉



「はい。」



[本人達にはこの事を聞いたんですかー?]



「只今、担任と生活指導が1人ずつ話を聞いています。
ただ、ここに写っているのが大金と確認できるのでご両親に来て頂かなくては…と考えている所なんですが。」



『……』



《成る程。
だから俺達の元に理事長が走ってきたという事か…。》








…そういう事か。


対応が難しい相手だから、俺達にも同席しろという事か。



相手がもし逆上したりしても俺達がいる事で抑止力になるからと…。





俺達の家の名を使うって事か。









だが大抵の家は弁護士を寄越して終わりにするだろう。

騒ぎを最小限で済ませる為にな。




その場合は俺達が同席しなくても問題ないはず。





受け取った中身が何か…で状況は変わるだろうが、撮られたのはまだ明るい日中。

怪しい物ではないだろう。



それにこの2人は学園の制服を着ている。


こんな目立つ格好で何かを売り買いする程馬鹿でもないだろうし…。






それに、男が袋から現金を出して確認しているような所を撮られているが…引っ掛かる。


特選科の俺達が現金を持つか?




カードだろう?





喜井の家も椎名の家も特選科に入れるくらいの家だ。


それなのに現金を持ち歩くか?

俺達と同じで“狙われる”という事を多少なりとも教えられてきていると思うが…









「う―ん。
彼等はそう言うんだよ。
だから君達の力を借りたいとも。
でもね?私の意見は___ 」



『2人から話しは聞いていますか?』



「…詳しくは今、聞いている…そうだね?」



「あ、はい。理事長。」



「と、いう事らしいよ一ノ護君。」








理事長が海寧を“一ノ護”呼びとは…







『詳しく聞く前の2人はなんと言っているんですか?』



「やっていない。…そうだったね?」



「はい、理事長。
しかし現金を渡した事があるのは間違いないと。」







やっていない、でも間違いない…?


どういう事だ?




先ず“やっていない”とは何を意味している?

そして現金を渡した事は間違いないないとは何の為に?









『…やっていない。
そう2人が言っているのに、此処にいる理事長以外の方達はそれを信じていない…という事でしょうか?』



「「「「っ!」」」」



『副担任の先生、貴方もですか?
この中では1番、彼等を知る方…ですよね?』



「ぼ、僕は…その…新任で…その…」



『……』



《ピクッ!》









あ、これは少しマズイかもしれない。


理事長の後ろに立っている校長達は気付かないかもしれないが、俺達は気付いた。




…海寧が苛立っていると。





勿論、海寧が表情を変えた訳じゃない。

変わらず一ノ護 海寧でいる。





表情を変えたのは海寧の右隣に座っている陸都だ。

表情を変え、心配そうに海寧を見ている陸都…だから、俺達は気付いた。







『新任…そうですか。
でもその事と、週に何度も彼等と顔を会わせていることに…関係あるんでしょうか?』



「え…?」



『いえ、何でもありません。
気にしないで下さい。』



「え?……あ、はぁ…?」








…この学園の教師陣は優秀だと思っていたが、どうやら勘違いみたいだな。


こんな“新任”だからと、言い訳するような奴を入れるなんて。





大河だって、海寧が何を言いたいか直ぐに分かったぞ?









『それで理事長。
理事長の意見に僕は賛成です。』



「そうかい!」








…理事長は意見を言っていないけどな。


だが、海寧には何を言いたいか分かったという事か…








『協力もします。
しかし、後ろの方々は納得されていますか?』



「私が決めた事に反対なんて…できるのかい?校長?」







…さらっと脅したな理事長。








「いえ…反対などとは決して…。
しかし…この件はもう少し慎重になるべきでは…と考えております。」









こっちも額の汗を拭きだしたか…。



だが、ここまで俺達に話しておいて写真も見せておいて…今更何を慎重にするんだ?







〈…海寧、説明をお願いします。〉









…伊吹が先に言ったか。


そして伊吹も分かっているんだな。



曖昧にしか話さず、何かを必死に隠そうとしている校長達の様子に。




俺も思った。


そして聞くなら絶対に海寧の方だという事も…








『全部は分からないよ?それでもいいの?』



〈はい。お願いします。〉



『…ここに写ってる人物。
たぶん、先日辞めたここの元教員。』



〈え?〉
[覚えてない―]
《…こんな教師がいたのか。》








俺も知らない。








『普通科の担当は数学。受け持ちクラスは無し。
退職の理由は、一身上の都合。』








そう言う海寧は間違っていないだろう。


理事長以外は皆、驚いているからな。






…その男が誰かは分かった。


だが…








〔だったらそいつを呼び出して聞けばいいんじゃないのか?〕



[確かに!]



〈…いえ、それならその事も我々に言うはずでは?〉



《何も言わず、生徒2人だけに事情を聞いているという事は連絡がとれないとかだろ。》




『たぶんね。
…でも、それをすっ飛ばしても急いで彼等に詳しい話しを聞かなくちゃいけない理由が、ここ。』



〔どこだ?〕



『この下見て?
態々日付を入れて写真が撮られてる。』



〈…日付……その元教員はいつ辞めたんですか?〉



『この日付の前日。』



〔…6日前か?〕



『そう。
…理事長?確か、テストの1週間前でしたよね?
作られた全教科のテスト問題のデータが校長室の金庫に保管される事になっているのは。』








えっ!?









「その通りだよ。」








それって、まさか…









『それをこの元教員から買った…と彼等は疑われているんだろうね。
当たって…ますよね?』







…当たっているかどうかは、聞かなくても分かる。



そこで青ざめて立っている数人を見ればな…