※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





























『フンッフッフ〜♪』



《…どっちが嬉しいんだ?》



『どっちもだよ〜♪』









そう言ったウサギは、青い石のネックレスを持ち上げながら楽しそうにスケッチブックに絵を描いている。






惺史さんの所でのウサギの初仕事が終わり、綾野さんに送ってもらった俺達。

ウサギの仕事の日の流れがこれで分かった。








綾野さんには送ってもらうだけでなく、夜ご飯に食べて下さいとお土産までもらってしまった。



遠慮したんだが“お疲れでしょうから”と言われてしまい、まさにその通りだったから有難く頂く事にした。




何もしてない俺のはただの気疲れだが、疲れる1日になったのは確かで夕食を何にするかを考えてもいなかったから正直、助かった…と思った。



それに、他人の手料理は好まない俺だけど、知ってる人…尚かつ調理師の免許を持つ綾野さんの物はすんなりと受け入れる事ができたし、昼食を頂いた時も、ここは店か?と思う程美味しかったしな。










『できた〜♪』






ウサギが嬉しそうにスケッチブックを持ち上げながら言った。






描いていた青い石…あれは、黒猫に借りていた物を返そうとしたらうさぎ曰く“あげる”と黒猫から言われたそうだ。

“小さいけどフワフワが守ってくれるから” とも言われたそうだが…それに対しては俺は謎しか残らなかった。







高価そうに見えるそれを、俺はウサギに返すように言おうかと思ったが、ウサギの喜びようを見て言えなかった。


2号をもらった時並に喜んでいたからだ。




…ウサギは本当に自分が欲しい物の時にしか喜ばないと大量の服を買った時に学習した俺は、黒猫に礼を言った。



ミャァー



とは言ってくれたものの、それが返事だったかは分からない。










そしてその青い石を描いた、油性の色鉛筆とスケッチブックは惺史さんからウサギがもらった物だ。




…貰ったというか、惺史さんの作業部屋から勝手に持ってきたスケッチブックの最初に描かれていた黒猫の絵をウサギがえらく気に入った為に、惺史さんがその絵ごと譲ってくれたんだ。

そして、それならと自分用に新しく買った未使用の色鉛筆と共に…。






数億円…という言葉が頭を過ぎったが、ウサギがヒタ君1号と2号を同時に抱きしめた時のように嬉しそうに惺史さんに抱きついて喜んでいたから、俺は言いたい事を飲みこんだ。



…惺史さんの目も“無粋な話しはするな”と言っているような気がしたのもあったけどな。












…そう。
その惺史さんから言われた事を、俺はこれからウサギに話そうと思っている。


ウサギに恨まれるという事が無いようにと、その話しをする為に、ウサギが絵を描き終わるのをこうして待っていたんだ…












『陽太さん見て〜?
このサトちゃんがくれた色鉛筆、とってもキレイな色になるよ♪』



《…そうだな。
その石の色と同じで鮮やかな青色だな。》



『うん♪
このサトちゃんが描いたマソラちゃんの絵に似合うかな〜?
切ってペタってはってもいいかな?』



《…いいんじゃないか?
そのスケッチブックはウサギが貰ったんだからな。》



『うん♪じゃあ___ 』



《ウサギ。》



『なぁに?』



《その前に、そこに座って俺の話しを聞いてくれるか?》



『?』



《あのな…ウサギ___ 》















俺は、ウサギが13歳の時に姫乃の養子になってる事を話した。


何故、そうするのが得策だったのかを俺の意見とともに。





そして…


俺がこれからしたいと思っている事は………ウサギには話せなかった。








何故なら、姫乃の事を聞いた時、最初ウサギは驚いていたがその後に少し笑ってそれから泣きそうなのを我慢していたからだ…。



…もう、これが全ての答えだと思った。






ウサギの気持ちを読み取ろうとウサギの表情を観察し続けてきた俺が感じた、ウサギの気持ち…







《驚いたよな。》



『…うん…ビックリした……僕はお姫様と同じ“姫乃”で……お姫様は僕のお父さんになってくれてたの?』



《そうだ。…嬉しいんだな。》



『…うん……お姫様…僕の頭をなでてくれたの。
上手に字が書けた時とか “えらいな、頑張ったな” って言ってなでてくれたの…。
いろんな事も教えてくれた…。
僕が分からなくても “大丈夫だ、何度でも教える” って…』



《ああ。》



『…僕、その時嬉しかった……
それに今も嬉しい。
僕なんかのお父さんになってくれたんだって分かって…すごく嬉しい…』



《“なんか”じゃない。
姫乃さんは…きっと、ウサギだから親になろうと思ってくれたんだ。
ウサギだったから守る事のできる“親”になりたいと思ってくれたんだ。》



『……う…ん…』



《直接、姫乃さんに聞いてみるか?
俺の言った事に間違いはないと思うぞ?》



『ううん…陽太さんが言う事は間違いないから大丈夫だもん…』



《……》



『…でも、もしお姫様に聞いてもいいなら…これからも僕のお父さんでいてくれるか、聞いてみたい…』



《……》



『僕はこんなに幸せでいいのか…聞いてみたい…』









…いいに決まってる。


姫乃も殿居も…そして俺も、ウサギが笑ってくれる事を願っているんだ。




共通点などない俺達だけど、その1つだけは確実に共通しているのだから…









俺は自分の籍にウサギを入れる事を諦める事にする。



ウサギから父親を取る訳にはいかない。

そして俺はウサギの父親には決してなれないからだ。




父親ならこんなウサギにキスもできないのだからな…







チュッ

『ぁっ…』



《ウサギ、会いに行こうか?》



『…え?』



《京都に…ウサギの父親に会いに行こう。
そして“これからもよろしく”と言いに行こう。》



『…陽太さん…』



《ああ、それから殿居さんの事も気になるだろ?
それも確認してこようか。》



『殿さん…?』



《姫乃さんが父親なら、殿居さんは“母親”でいいんですか?ってな。》



『え?……殿さんお化粧するの?ひらひらのスカートはくの?
……殿さんに似合うのかな?』



《プッ!クックックッ…だから、それも聞きに行こうな?》



『え?…あ…うん…』



《でも、その前にウサギにお願いがあるんだ。》








あれは、その内容に未だに馬鹿げていると思う。



だが、これが唯一の手段になった今“納得できない”とは言ってられない。

法的効力がなくても、その証明書と優秀な弁護士がいればある程度は効力を持つだろうからな…。










『…陽太さんが僕にお願い?』



《ああ。公正証書を一緒に作ってくれないか?》



『こうせい……えっと…それなぁに?』



《ああ…よく分からないよなすまない。
分かりやすく言えば俺と結婚してくれって事だな。》



『……え?』