※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~




























画家…という人に知り合いもいないからだが、俺の勝手な想像では爺さんとかがなってるものだと思った。




それなのに、惺史さんの歳で画家?

いや、惺史さんの年齢をちゃんと聞いた訳じゃないが、きっとウサギとそう変わらないよな?


うん…成瀬さんの弟だし、きっとそうだ。





しかし、絵を描いて生計を立てていると綾野さんは言っていたが、惺史さんの絵は売れる絵って事だよな?





……。 



俺は “大野 惺史    画家” で検索してみた。


だが、ヒットするものは何もなく綾野さんの言い間違いなんじゃないかとスマホを見ながら思っていた。






「大野さんの名前ではヒットしませんよ。」



《…え?》



「検索されてますよね?」



《あ…すみません。》



「いえいえ。ウサギさんの働き先ですから気になさるのは当然かと思います。」



《……》    



「“天ノ 御空” で検索してみてください。」








俺の失礼な行動を責めるでもなく、綾野さんが出してくれたその名前…。



俺は“アマノ”という言葉に聞き覚えがあった。


姫乃が以前にその名前を惺史さんに向けて言っていたのを覚えていたからだ。




…という事は、姫乃は惺史さんと仕事の関係が以前にあったのか?



だが…



仕事で関わっただけで、あんな態度に出るか?

考えを改めたりもそうだが、確か此処に挨拶に行く時も成瀬さんに同行してもらったんだよな?



…完全にビビってるよな?




惺史さんが…っていうならまだ分かるが、逆なんだから不思議だ。






…うん、不思議だ。










俺がスマホに“アマノミソラ”と打ち込んだ所で、綾野さんが急に笑顔になり立ち上がった。

それからキッチンに歩いていく綾野さんの後ろ姿を見ていると___








〘…こんにちは。〙



《ビクッ!!》



〘…いや、そんなに驚かなくても。
それに呼んだの赤井さんですよね?〙









驚くなという方が無理だ!絶対!



また音もなく後ろに立たれたら、こうなるに決まっている。

それに、俺が呼んだというかただ挨拶を__






あ…?


呼びに行ったはずのあの2人はどうしたんだ?







《…お久しぶりです。お邪魔してます。
ご挨拶をしたいと思っていたのですが…あの、ウサギ達は?》



〘ああ…ウサギちゃんが動かなくなったから置いてきました。〙



《えっ!?》








動けないって?置いてきたってどういう事だ!?









カタン…

「大野さん、それでは赤井さんが不安になります。」



〘…そう?〙



「はい。どんな理由でウサギさんが部屋から動かなくなったのかの説明が足りません。」



〘……〙



「…話すのを面倒がっては駄目ですよ?
赤井さんは心配してらっしゃいますから。」



〘…この家の中でウサギちゃんの具合が悪くなったり、危険はないよ。〙     







…どういう事だ?







「それは私も分かっていますが、赤井さんは知りませんよ?」







…綾野さんも分かってるのか?






〘…ハァ。
ウサギちゃんは、絵を気にいってくれたみたいで動かなくなっただけです。
俺に“陽太さんの所に早くいって”って言うから、俺はこっちに。
そして今は真空が一緒にいてくれてます。〙



《!》



〘…理解して頂けました?〙



《あ、はい…なんか本当にすみません。》



〘…いいえ。〙



「赤井さんに分かって頂けた所で、大野さんはこちらを飲んで下さい。」



〘…綾ちゃんさ?
ウサギちゃんがああなるって分かってて部屋にこさせたでしょ?〙







…ん?






「フフ。殿居さん達からお話をお聞きして、きっとそうなるだろう…とは思っていました。
大野さんもそうですよね?」



〘…まぁ。〙



「…どうされます?
何処かの部屋をウサギさん専用にされますか?」



〘ウサギちゃんが描きたいと言ったらそれもいいかもね。〙








……?








《…あの、何の話しですか?》



「え?ご存知ないですか?」



〘……〙



《…はい?ですから何を?》



「大野さん?」



〘…俺、結構話したから次は綾ちゃんの番だと思う。〙



「…では僭越ながら私が。」



《?》



「ウサギさんは書道や絵が小さい頃からお好きだったらしく、殿居さんのお宅にあった大野さんの絵も何時間も飽きずに見ていたらしいです。」








…は?








「そしてその絵から何かを感じ取ったのか、数枚の絵を描いたそうです。
楽しそうに“これはこうなって、こうなるの!”と、まるで物語りを話すように。」



《……》



「そんなウサギさんを見た殿居さんは、自費出版でそのウサギさんの絵をまとめた絵本を作ったそうですよ。」



《絵本?》



「フフ。はい。ですからウサギさんは絵本作家さんなんですよ。」



《作家!ウサギが!?》



〘…いい絵本ですよ。
とても優しくて可愛い…ウサギちゃんみたいな。〙



「今は販売されていませんが、私達は特別に頂いてましたから知っていました。
今回、殿居さん方がいらっしゃった時にもお願いされたんです。
ウサギさんが大野さんの絵に感化された場合はどうか見守って下さいと。」









…もしかして、それでなのか?



姫乃達は、ウサギが惺史さんの所で働くと知った時に驚いたのと同時にあんなにあっさりと意見を変えた…。

惺史さんの描く絵をウサギが好きなのを知っていたから、ウサギには1番良い事だと瞬時に判断して…?






…それなら、あんな直ぐに意見を変えた事に納得ができる。


だが、“恩がある”とまで言う意味は分からかいままだがな…。








それにしても…






ウサギが絵本作家?

今は売っていないという事は前は購入できたという事だろうから、本当に作家デビューをしているんだな…。




…俺が知らないウサギの情報。




まだ、こんな調子で出てくるんだろうか?




その都度知っていけばいいんだ…なんて、俺は思えないから困る。


ウサギの事なら何でも分かっていたいし、知っておきたい。



本当にウサギの事に関してだけは、俺は心の狭い男になるんだな…。





こんな事を思っているのが惺史さんにバレたらまたきっと__






〘……〙



《ドキッ!》







…いや、今はなるべく目を合わせないでおこう。





そう思って手元のスマホを見ると、先程名前を打った“アマノミソラ”の検索結果が表示されていた。






…本当に出てきた。






天ノ 御空……一切素性が分からない謎多き日本の現代美術家。

その作品は世界的に評価され個展を開催すればチケットはほんの数分で完売するのが常…。


話題にもなった“夢現”という作品は国内の某ホテルのオーナーが数億円で買い取ったとされている。

他にもアメリカの資産家が10億で購入したとされているのが___








っ!

億!?



億単位の絵を描いてる人なのか!?




待て待て!

確かにここに載ってるこの絵は俺も見たことがあるような気がするが…億!?






それが本当なら成瀬さんが言っていた一番稼いでいるというのも分かる。


…分かるがあまりにも高額すぎて、目の前に普通に座っている惺史さんと結びつかない。



今日だって、胸元の伸びたような黒いロンTとジーパン姿だし…この人が本当に___





ハッ!ウサギ!!


その数億円の絵の元にウサギがいる!




何かあると決めつける訳じゃないが、ウサギが何かをやらかさないという保証もない!

特に何かに集中してしまってそれしか見えなくなっている時は、周りの物を気にしなくなってしまう事がある!




俺が側にいれば避けさせたり、ウサギから退けたりできるが今は黒猫しかいないんだ!







《あの、すみません!》



「はい、どうされました?」



《ウサギを直ぐに呼び戻___ 》






ガシャン!
 


《っ!?》







…今、小さい音だったが明らかに何かが倒れたような__









〘あ、キャンバス倒れたな。〙









っ!!