※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~
《会って下さり、ありがとうございます成瀬さん。》
…やっとこの日が来たという感じだ。
遠回りをしたが、成瀬さんが会ってくれると一止さん経由で連絡が来た。
場所は成瀬さんの事務所。
安全対策が出来ているからと此処を指定された。
…やはり成瀬さんも動向を伺う目がある事は気付いていたか。
平日の今日は一止さんは仕事だからこの場にはいない。
俺は午後から半休をとって、此処に2人で来ている。
…あの日、1人では駄目だと気付かされたから。
〔惺史君はどうだった?〕
《…印象ですか?》
〔そう。〕
《…不思議な弟さんでした。》
〔それだけ?〕
《…正直な所、理解できない事が起こったりしたので恐ろしく感じました。
辛辣な事も言われました。》
〔へぇ。〕
《でも…会えて良かったと思ってます。》
〔……〕
《彼の言葉は時に厳しかった。でも、冷たくはなかったんです。
常に言葉に暖かさと優しさがあったから…》
〔…最高の弟だったでしょ?〕
《はい、成瀬さんに外見も中身も似ていました。》
〔っ!…ハハハ!〕
《!》
〔ありがとう陽太君。
似てるなんて、凄く嬉しいよ。〕
《…兄弟…仲いいんですね。》
〔ハハ、こっちの一方通行だよ。
でも、惺史君に何かあればそれこそ容赦しないかな。〕
《…じゃあ、成瀬さんは弟想いの兄なんですね。》
〔だから、勝手にだけどね?〕
《…そうですか。
でも、彼…惺史さんは強そうですから“何か”は起きないんじゃないですか?》
〔強い?〕
〔あ、腕力がとかじゃないです。
失礼ですが、体つきは貧弱というか…心配になる程でしたけど、その…オーラというか何かが強そうに見えて“守ってあげる”というのが似合わない気がして……あの、伝わりますか?〕
〔分かるよ。
そして陽太君の言う通りだろうね。
惺史君は“守る側”に自分を置いているから。〕
《!》
〔だけど、強く見えても、必要なさそうに見えても中身までそうとは限らないよ。〕
《…え?》
〔自分を犠牲にしてまで無理をする子だから…。
だから側で常に見守っていたいんだよ。〕
《……》
〔惺史君が強く見えるのは、それは惺史君が弱さを知っているからだよ。
自分1人じゃどうにもならない事を経験しているから……だから、陽太君に何か助言してくれたんでしょ?〕
《!》
〔ふふ。分かるよ。連絡もきたからね。〕
《あ…そうか、それで…》
〔怒られたよ、惺史君にね。〕
《え!?何故そんな事に?
一止さんも俺も成瀬さんから話しを聞きたいからと頼んだだけで__ 》
〔うん、それはちゃんと言われたよ。
“陽太君には話しを聞きたいという意志がちゃんとあるよ”とね。〕
《!》
〔ただ、ちょっとこっちの配慮が足りない事を指摘されたんだ。〕
《配慮…ですか?》
〔“どんな仲であろうと、他人が、本人に許可なく勝手に過去を探られ知ったとしたら……俺だったら嫌だけど、まさかしないよね?” ってね。〕
《っ!》
〔…間違ってた事に気付かされたよ。
辛い過去だっただろうから、敢えて聞かさないようにと思って行動を取ったのに…ただの勝手な思い上がりだったね。〕
《……》
〔何より大事な本人の意志を無視していたんだからね…ね?ウサギちゃん?〕
『……え?僕を呼んだ?……なんのお話し?』
…俺はウサギと一緒に成瀬さんの所に来た。
何故そうしたのかは___
〔ふふっ。
その絵が気になる?〕
『カサブランカ!』
〔物知りだね。〕
『お花がそっくりだから僕でも分かったの♪』
〔ふふっ。〕
『あのね凄くキラキラしてるよ!
とってもキレイ……まるでさとちゃんと一緒にいる時みたい…』
〔じゃあそれを描いてくれた人に伝えておくよ。
きっと恥ずかしがるだろうけど、ウサギちゃんが言ったと言えばとても喜ぶはずだから。〕
『うん♪
とってもキレイなカサブランカを見せてくれてありがとうって言ってね♪』
〔うん。ふふっ。好きなだけ見てていいからね。〕
『うん!』
…今日の成瀬さんは穏やかだ。
俺とまた会ってくれると聞いて良かった…と思ったが、内心は完全に構えていた。
どんな謝罪をすればいいか考えていたが、その必要は無さそうだ。
…それもこれもきっと彼のお陰なんだろう。
ウサギが一緒に来る事は伝えていなかったのに、“二人とも待ってたよ”とこの部屋に入って言ってくれたのがその証拠だ。
ウサギが一緒だと前もって知っていたのは、彼から聞いたのだろうから…。
《先日、惺史さんに言われました。
“自分1人で話しを聞こうとするな”と…。》
〔……〕
《だから最初は、惺史さんに一緒に話しを聞いてもらえないか頼んでみたんです。
漠然と…本当に漠然となんですが、惺史さんなら一緒に話しを聞いて、もし俺が間違った事を口走ってしまっても“違う”と諭すように訂正してくれて“こうすればいい”と意見を貰えるんじゃないかって…》
〔でも断られた。〕
《はい…。惺史さんは__ 》
〘…は?俺じゃないでしょう?
一緒に話しを聞くのが誰かなんて、そんなの決まってる。
それとも貴方はこれから1人だけの将来を描いているんですか?
隣に彼はいないんですか?〙
〘俺の言葉が分かりにくかったのなら謝ります。
“間違えないで下さい”と言ったのは、貴方だけが前を向いていたのでは駄目という事です。
誰の手を取り、誰と一緒に前を向いて行きたいと考えているか……
その為には誰と何を分かち合わなければならないのかを“間違わないで下さい”という意味です。〙
〘陽太さん、ウサギちゃんは無知ですか?
ウサギちゃんは自分の意思を伝えられませんか?
ウサギちゃんは貴方に自分を教えたく無いと言いましたか?
…俺には、そうは見えませんよ?
俺にはウサギちゃんの目にもちゃんと貴方が映っているのが見えましたよ。〙
《__そう、俺に優しい言葉で気付かせてくれました。
本当は…
1人で背負う気なのか?
それは俺1人で背負っていいと思っているのか?
よく考えろ!
…と、言いたかったでしょうね…自分勝手な俺に。》
〔…惺史君は普段余り話さないんだよ。〕
《…え?あ、はい。一止さんもそう言っていました。》
〔でも陽太君には多くの言葉で伝えた。
それは君が本当にウサギちゃんを想っていると惺史君が感じ取れたからだと思うよ?
だから、言葉を伝える事で分かってくれるなら…と、話した。
だから僕も君とまた話す事を選んだ。
…優しいね、惺史君の言葉は。〕
《はい。
…だから、今日はウサギと2人で成瀬さんの元にこれました。》
『うん、来たよ。』
絵を満足するまで見たのか、ウサギが俺の隣に座った。
《…ウサギにはちゃんと話しました。
成瀬さんから聞く話しの事、そして何故その話しを俺が聞きたいかを。》
〔…ウサギちゃんは嫌じゃないかな?〕
『嫌…?』
《…成瀬さんは、ウサギの過去を話す事でウサギが辛くならないか、嫌な気持ちにならないか聞いてるんだ。》
『…えっと……』
《俺に言ってくれたみたいに成瀬さんに言ったらいい。》
『あ、うん!
あのね?僕、嫌だって思った事もあったけど…それでも嬉しいよ?
だって陽太さんが僕をいっぱい知ってくれようとしてるって事でしょ?
それに陽太さんには嘘は言いたくないもん。』
〔!〕
『それにね?
…ンフフ♪陽太さんも僕が知りたい事あったら陽太さんの事教えてくれるって言ったの♪
ちっちゃい頃の事は恥ずかしいんだって〜。
でも、僕になら教えてもいいって言ってくれたの♪』
《お互いを知るのは“一緒に”だからな。》
『うん♪一緒は嬉しいもん♪
だからね、ナルちゃんお話しして下さい!
ナルちゃんが僕の事を知ってたなんてびっくりだけど、きっと僕よりお話し上手だから、陽太さんの知りたい事教えて下さい。』
〔…うん、分かったよ。〕
『あ!でも……』
〔?〕
《大丈夫だ。鬼壬嶋の住所は聞かないから。》
『うん!ありがとう陽太さん♪』
《ああ、ウサギがちゃんと守ってる約束事だからな。
俺も守らないと、“一緒”じゃないだろ?》
『うん♪』
〔フッ…アハハハ♪〕
《…あの…どうしました?》
『?』
〔ごめんごめん。
いや、ここまで陽太君に惺史君の言葉が響いていて驚いてる。
でも……やはり先に会わせといて正解だったなと思ったよ。〕
《…え?どういう意味ですか?》
〔ん?
惺史君と話した事でいい変化があって良かったなって話しだよ。〕
《……それだけですか?》
『陽太さん…?』
〔…答えは急いで得てはいけないよ、陽太君。
急がば回れだよ。
意味の無い遠回りなんてさせないから安心して。〕
《…成瀬さん?何を…隠しているんですか?》
『?』
〔今はその事が重要なのかな?
ウサギちゃんとこれからを生きていく為の大事な時間だと思ったけど?〕
《…失礼しました。
話しをお願いします、成瀬さん。》
『あ…お願いします、ナルちゃん。』
〔ふふっ、はい。じゃあ何から話そうか?〕