※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~

























僕は物心ついた頃から不思議な夢を視ていた。




…決して良い夢ではないのに、必ず現実に起こる夢を。







最初はそれがどんな意味なのか幼くて分からなかった。

だから、驚きながらも覚えている限りを両親に話した。






僕が初めて視たのは、病院で母さんが医者の前で泣いている場面だった。

その隣には父さんがいて一緒に泣いていたんだ。






…その事を話した朝の2人の顔は忘れない。








それから半年も経たない内に母さんは病気でこの世を去った。









僕はこんなモノを視る自分が嫌になっていた。

良い事ならまだしも、怖い事ばかり…。






僕は徐々に眠る事ができなくなっていた。



眠らない体は辛い。

だけど、眠った方が僕には辛かった…。









父さんは大変だっただろうな…。



会社の社長をしていたから忙しいのは当たり前だし、母さんが死んでそう経っていないのに……オニモツノ僕までいたんだから。






…だけど父さんは決してそうは言わなかった。

でも僕を抱きしめて “父さんがいるからな” と言う父さんに、僕は申し訳なくて仕方なかった。






だから、余計に眠らないと決めたんだ。

僕が夢を視て魘されたりしたら、父さんは僕につきっきりになってしまって父さんまで倒れてしまうから…。






それから僕は演技をしていた。

ちゃんと寝ているから大丈夫だと…。





だけど子供の僕の演技なんて父さんにはバレバレだった。






それでも、僕は“大丈夫”と言い続けていたらとうとう体が限界になった。



動けない、何も食べれない…そうなった時の父さんの行動は早かった。

たぶん前から考えていてくれたんだろう。







その日の内には元、看護師の住み込みの人が家に来てくれたからだ。


そして、その女性の傍らには僕と同じくらいの男の子も一緒に…。












僕の看病もしてくれるその人にも僕は嘘をついていた…。




“大丈夫”  …それがその時の僕の口癖だったと後から言われた。








看護師だったから…処置が適切すぎたのか、僕は夢を視ない眠りを与えられたりしていた。





それでもたまに夢を視てしまう時は、自分が寝ていた事を後悔したりもした…。


隅で1人膝を抱えて眠らず夜を越す……








その何度目かの夜を1人で迎えていた時に、僕の部屋のドアが開いた。





そもそも僕はちゃんと話しもしたことなかったのに…

この部屋にも来た事なんてなかったのに……






君は毛布を持って僕の元に来てくれたね。







《助けに来ました!》







誰も何も言っていないのにね。







《俺はヒーローです!
お姫様を守るのはヒーローの役目です!》







戦隊モノにはまっていたんだろうね…。





君は持ってきた毛布を僕に巻き付けると、その上からきつく抱きしめてくれたね。






《俺がいます!
悪いやつは俺が追い払います!だから眠っても大丈夫です!》







そう言ったのに君は僕を抱きしめたまま先に寝てしまったよね?


だけど、腕は解かなかったね…。






僕にとって君は本当に小さいヒーローだったよ。




夢を視る度に何度、涙を流し目を覚ましたか分からない。

だけど、その腕の温もりと強さが変わらずにあったから俺は……夢を受け止めれるようになってきた。





そして、その1年後…


君は僕の“弟”になったんだ……









*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。













《兄さん、この伝票なんですが___ 》



『何かね弟君?』



《…保管していたのは三葉ですか?》



『そうだよ弟君。』



《…やはり。
だから何かを溢したようなこんなシミがついたんですね。》



『そうみたいだね、弟君。』



《……それ、いつまで続きます?》



『何がだい?弟君。』



《……はぁ。そんなに拗ねなくても。》



『……』



《兄さんが忙しそうだったから、呼ばなくていいと言ったのは…確かに俺だよ?
でも……そんな拗ねる程に会いたかったの?》



『バンッ!当たり前じゃん!』



《…どっちに?》



『両方に決まってる!
黒猫ちゃんも、惺史君もどっちも!!』



《…ちょっと灼けるんだけど?》



『うるさいよっ!
弟君だっていつもメロメロじゃん!可愛いもんね!?両方とも!』



《…確かに可愛いですけど___ 》



『ほらっ!』



《…兄さん以上がいる訳ないでしょう?》



『……』



《…楽しみをとった俺が悪かったよ。
でもそろそろ機嫌を直して?
いつもの可愛い顔で俺の名を呼んで……ね、壱智?》



『……ずるい…』



《ふふ。その顔もまた可愛いね?》








小さかった僕のヒーローは、弟になり今は……


僕の愛する人に成長していた。