※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~
智仁の悲痛な表情はその事をまだ諦めてはいない事を物語っていた…
その顔を見た章和は悲しくて俯き、松岡は手を硬く握りしめ、堪えるように智仁を見つめた…
剛志も泣きそうな顔で耐えている…
長世と晄一は心配でハラハラしていた。
皆が次の慧翔の言葉を待つ為に固唾をのんで見ていた…
「……そんな顔をさせてごめんね。
でも言葉を取り繕っても意味は無いし大澤君にはそのまま伝わってしまうから俺もそのまま言うよ?
…でもそんな顔をするって事はまだ想いは残ってるって事なんだね…」
『………』
「…じゃあ質問を変えるね?
大澤君はどうして自分の命を差し出すようなそんな悲しい事をしようとしたの?」
『………それが…約束だった…から』
「約束?」
『…うん………決まっていた事…だから…』
「何が決まっていたの?」
『…潤哉の為には……何でもするって…』
「…どうして?」
『僕は……潤哉のお兄ちゃんだから……役にたたないと…ダメだから…』
「…そう、言われたの?」
『…僕は…その為に生かされてるから…』
「それも…言われたの?」
『………うん…』
「大澤君はそれでいいの?潤哉の為なら何でも出来るの?」
『出来るよ?……僕のたった1人の大事な弟だから…潤哉の幸せが1番だから…』
「幸せ?潤哉の幸せが大澤君の望み?」
『…うん 』
「じゃあ大澤君は間違ってるって事だよ?」
『えっ…?……どうして…?』
「潤哉の幸せを願ってるって言ったけど、今、潤哉は泣いてるからだよ 」
『どうして?……だってさっき元気だっ…て…
…違うの?やっぱりどこか悪いの?
……僕の…僕のをあげるから!何でもするから!だから早く潤哉を__』
「違う!違うんだ!落ちついて!身体は大丈夫!どこも悪くない!」
『だって……泣いてるって……』
「身体が痛いんじゃない…心が痛くて泣いてるんだ…大澤君の事を想って泣いてるんだよ?」
『…僕の…こと?』
「そう…君を想ってるんだ。
今回の事で君の存在を知って、君がこれまでに潤哉にしてあげた事や、これからしようとしていた事を全て知ったんだ…それで心を痛めて泣いてるよ 」
『…知った…?』
「…知ったよ。全部。
自分の親が何をしたか、何を隠していたか、今までどんな嘘をついてきたか……
だから自分を責めてる。
君にとんでもない事をしたって知って、自分の所為だって責めてるんだ 」
『違う!潤哉の所為なんかじゃない…潤哉の所為じゃ……』
「うん。俺もそう思ってる。
でも潤哉は言うんだ…
知らなかったとはいえ君に助けられたのは事実だ。
その所為で自分は充実した楽しい生活を送ってこれた…その裏で君が苦しんでいる事を何も気付けなかったし何も知らなかった…
それが申し訳なくて自分が今ここで生きていていいのか…って 」
『違う!知らないのは……それは僕の所為だから…
潤哉は何も…何も悪くないのに…どうして……』
「潤哉は生きてるのが苦しいって言った。
沢山悩んだ…今も悩んでる。
でも、自分で終わりは望まないっても言った…
大澤君、何故だか分かる?」
『…?』
「潤哉は、君に助けて貰った命を無駄には出来ないって言ったんだ。
君が病弱な自分を変えてくれて、楽しい日々を過ごせたから、今度は君に恩返しをしたいって言ったんだ…
だから自分で終わりは望まないって…君に会ってちゃんと“ありがとう”を言いたいからって…」
『………』
「君の弟は君に似て優しいんだよ?
そして君を想ってる…。
さっき、泣いてるって言ったでしょ?
潤哉は自分の気持は決まってるけど、不安なんだって…」
『…不安…?』
「そう。君に会いたいって願ってるけど、君が嫌だって拒否られたらどうしよう?って…そう言われたら俺はどうしようって…そんな不安を抱えて泣いてるんだ…」
『…でも…僕は……』
「大澤君…もう誰も会ってはいけないなんて言わないよ?
もう君が名乗っても潤哉と会っても責める人はいないんだ…」
『…僕……』
「潤哉と会いたくはない?
…君が犠牲を払ってでも助けたい、守りたいと思った大事な弟が泣いてるんだよ?
その弟を放っておける…?」
『……櫻庭…さん……』
智仁は潤んだ目で慧翔を見た
慧翔は智仁の頬に手を当て優しく包むと微笑んだ…
『………僕…』
「うん…大丈夫。俺がついてる…」
『…本当に?…こんな僕でも望んでもいいの…?』
「勿論だよ!大澤君、自分を卑下しないで?
君は愛されているんだ。優しい君を愛したい人は沢山いるんだ。それを君には知って欲しい…。
だから、君が望む事を邪魔させないし、見守っていきたいんだ…。
君は君の望む人生を…生きて…いいんだよ?」
『…………潤哉に…言いたい…
泣かないでって……。
潤哉の所為じゃないって…』
「…うん。ちゃんと伝えよう?ちゃんと言葉にして潤哉に教えてあげよう?」
『……うん…』
「良かったね大澤君…君が間違った方を選択していたら潤哉はきっともっと苦しんでた。
幸せなんか感じていなかった筈だよ?
だから…生きててくれて良かった…潤哉もそう思ってるよ。勿論!俺も…ね?」
『……うん………うん……』
慧翔が優しく抱きしめると、智仁は慧翔の胸に顔を埋め声を出さずに涙を流した…
慧翔はそんな智仁に、もっと甘えるように泣いてくれたら良いのに…と思いながらも、自分の腕の中にいる智仁が愛しくて仕方なかった。
愛される事を知らない智仁に、これからもっと“愛”を教えていこうと、もっと泣きわめく程に自分を曝け出してくれる、甘えてくれる存在になりたいと改めて決心していた…
だが、今は、この腕の中にいる智仁を抱きしめていられる事に感謝感激し、嬉しさに顔がニヤけてしまうのを止める事は…出来なかった……
後ろで睨んでいる、複数の鋭い視線にも気付かない程に……