※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





















智仁が眼を開けた…


その事に章和も部屋にいた他の者達も皆喜び、涙を流す者までいた…
章和も涙を流しながら、智仁の名を呼んだ。
智仁から見えるようにとベッドに身を乗り出したが、智仁に反応はない…

智仁が見ているのは慧翔だけだった…
まるで周りにいる他の人が見えていないかのようなその姿に章和は戸惑い、慧翔に振り返った。

慧翔はそんな章和に大きく頷いた後にまた智仁に優しく笑いかけて言った…






「大澤君…俺ね、君に伝えたい事がまだあるんだだけどいいかな?」

慧翔がそう言うと、智仁は反応して口を動かした。

それは嬉しい事だったが、声は聞こえてこない…
でも慧翔は微笑みながら頷いている。

慧翔だけに聞こえる声…
その事をいち早く察した東矢間が章和を自分達の方に呼び説明した。
以前、病院であった事と一緒に…

章和は驚いた…
でも、自分にも似たような経験があった事を思い出した。
智仁が意識がない時に章和の考えが筒抜けだった事を…
だから直ぐに納得し、東矢間達と一緒に今は見守るしかないのだと自分に言い聞かせた…






「えっ?怖い?…どうして?」


『_____ 』


「大丈夫だよ。それに今、大澤君は俺の考えが詠めるでしょう?俺が嘘をついたら直ぐ分かるし、俺は君に嘘をつくつもりも、君を傷つけたいとも思っていない…分かる?俺の気持ちちゃんと伝わってる?」


『___ 』


「そう良かった…聞いてほしい事の一つは…潤哉の事だよ 」


『………』


「…潤哉の手術は無くなった。
元々、今すぐ手術が必要な状態では一切無かったらしい。
それを佐伯先生に確認しにいって分かったって言ってた。
今はもう病院から出てる…潤哉は元気だよ。
健康状態も問題ないんだ。」


『………』


「……大澤君、もう行かなくていいんだ…
もう君が犠牲を払う必要は無くなったんだ。
もういいんだよ?もう自分を見て、自分の事を考えていいんだ…
これからは君は君の人生を歩いていっていいんだよ?
その為には喜んで手助けする人達が大勢いるんだ…
皆、君の事を想っているんだよ?分かって…
どうか気づいて……」


『_______ 』


「どうしてそう思うの?資格がないなんて…ここに居る人は誰一人としてそんな事思っていないよ?」


『_____?』


「そう…君を想う人達が此処にはちゃんといるんだよ?
君の眼には何が映ってる?…ちゃんと見て?
此処に誰がいるか…。
聞こえない?
皆、君の名前を呼んでたんだよ?」


『____ 』


「まだ…怖い?俺はここにいる。
こうやって手も握ってるし君から離れたりしない。
気持ちもちゃんと繋がってるでしょ?」


『……コクッ』 


「うん。じゃあ、見てごらん?
大丈夫。皆、君が心配で心配で仕方ないだけなんだ…。
何も怖くない。ただ、君の声を聞きたくて待ってるんだ。
だから安心させてあげて?声を聞かせてあげて?」


『………コクッ』


智仁が頷くと慧翔は微笑みながら智仁の背中に手を当て抱くように起き上がらせた
そのまま智仁がフラつかないように肩を抱き支えた…

智仁は俯いたままだったが、慧翔が隣で 
“怖くない” と優しく言い聞かせると慧翔を見て頷き、それから視線を彷徨わせ、扉の前で固まっている男達に辿り着いた……


緊張が流れる空気の中、お互いの沈黙が続いた…

その中で章和が恐る恐る智仁に声をかけた…






「…トモ君…ごめんね……
俺、トモ君が嫌がる事をした…トモ君を行かせたくなくて酷いことをした…
ごめんね…ごめんトモ君許して……」

章和は涙を流しながら智仁に謝り続けた…
その脇では松岡も長世も唇を噛みながら章和の言葉に耳を傾けていた…


智仁は何も言わずただじっと章和を見ていた…

隣にいた慧翔が、クスッと笑い智仁を覗きこんで言った…






「大澤君、その言葉は章和には届かないよ?
声を出してあげないとね?
…それに、名前で呼んであげたら?
喜ぶとおもうよ?」


慧翔の言葉に頷いた智仁は泣いている章和を見て…






『………章…』

そう言って優しく微笑んだ

その言葉に章和は驚いたように目を見開き、次の瞬間大きな声で泣き出したと思ったら智仁へと掛けだしていた

慧翔が慌てて “やめろ!”と叫ぶ声も虚しく智仁に章和が抱きつくとバランスを崩しそのままベッドへと倒れ込んだ…

智仁の身体を支えていた慧翔も一緒に…






「危ないだろう!ベッドが柔らかかったから良かったものの、何処かにぶつけて大澤君が怪我したらどうするつもりだったんだ!」


「…グスッ……煩い!」


「煩いってお前!?俺は当たり前な事を言ったんだぞ!」


「グスッ…グスッ……煩い慧さんなんて、あっちに行け!…グスッ…邪魔!」


「はぁ――?邪魔ってなんだ邪魔って!
…つうかお前いつまで大澤君にくっついているんだよ!離れろよ!!」


「嫌だ!」


「嫌だって…何、子供みたいな事言ってんだ!!離~れ~ろ~!!」


「嫌だったら嫌だ!
…そんなに言うなら慧さんが離れればいいじゃないですか!
さっきから手握ったり、肩抱いたり、やりたい放題じゃん!
今度は私の番でしょ?だから、お邪魔虫はさっさと退散してくれませんかね?」


「おっ…前!誰がお邪魔虫だ誰が!」


「そんなの慧さんしかいないでしょ?
現に慧さんをこちらから迎えいれた訳じゃありませんよね?
ならやっぱり、お邪魔虫じゃないですか!
あっ!ちょっと…なにトモ君を抱き寄せようとしてるんですか!?
トモ君に触んないでくれます?誰か~殺虫剤持ってきて下さい!」


「俺は虫じゃねぇ!!」


「だから、トモ君に触んないで下さいって!
慧虫はしつこいですね~しぶとい虫は嫌われますよ?」


「人を“けむし”みたいに呼ぶな!何が慧虫だ!
しつこくて結構!お前に何て言われようが俺は大澤君を離さないって決めたの!」


「はぁ?勝手に決めないで貰えます?
そんな事慧さんには100年早いんですよ!
早く離れなさいよ!この場所は私の何です!
私がトモ君を守るんですから!」


「あっ!お前なに蹴ってんだよ!」


「虫は蹴られて当然です!」


「こいつ~~~!」



『…クスクス……』



「あっ!?トモ君!」


「大澤君!?ごめん!大丈夫!?」


2人は瞬時に飛び起きると智仁が無事かどうかを確認し始めた…
その2人の姿に智仁はクスクスと笑っている


その様子を見ていた東矢間、松丘、長世、剛志、晄一達は安堵と苦笑いを浮かべていた
でも誰もが、智仁が笑っている事に嬉しく涙ぐんでいた…


一通り痛い所が無いか確認し終わった2人は、お互いが牽制しあう中、相変わらずの定位置に場所を移し、智仁の手を片方ずつ握りしめた…






「本当に大丈夫?大澤君?」


『…うん……大丈夫…』


「全ては慧虫の所為ですから追い払っていいんですよ?」


『…うん……?』


「章!虫はやめろ!」


『……虫?』


「そうです慧さんは実は__」


「章っ!」


「もう、煩いですね~!やめて下さい!
トモ君の耳がおかしくなったらどうするんですか!?」


「あっ……大澤君平気?痛くない?大丈夫?」


『……大丈夫…』


「もうちゃんとして下さいよ慧さん!」


「分かってるわ!…つうかお前の所為だからな!」


「人の所為にするなんて…はぁ~情けない…」


「章っ!」


「だから!煩いわ!ちょっとは学習しろ!!」


「………スミマセン…」


『クスクス…』


「あ、トモ君が笑った。慧さんでも役にたつんですね~」


「あ~き~!はぁ~もういいわ…。
大澤君?今は…楽しい?」


『…2人の話は……楽しい…』


「良かった………。じゃあ単刀直入に聞くね?
大澤君はまだ終わらせたい?死 を選びたい?」


『っ!』


智仁がビクッと肩を震わせた






「慧さん!何言ってるんですか!?」


章和は驚いて慌てて慧翔を見た


だが、慧翔は章和の方を振り返ることもなく、真剣な顔で怯えた様子をみせる智仁を見続けた

そして視線を外す事無く更に言葉を続けた……