※これは妄想腐小説ですBL要素が含まれます
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~

























智仁のシャツの胸ぐらを掴み無理矢理に立たせた章和

強く引っ張られた反動と脚にまだ力が入らない智仁は蹌踉めいてしまった。
しかし、そんな事すらお構いなしに章和は掴む手に更に力を入れ智仁を引き寄せて凄い形相で睨んだ


智仁は何とか倒れないように踏ん張りながら締め付けられる痛みに顔を歪め、身長差のあまり変わらない章和の目を見た

その目は怒り蔑むような目だった…
この目を、以前も見たことがあり、漸く智仁は目の前の人物と何処で遭っていたかを思い出した。






「おい!章なにやってるんだ!」

慧翔が慌てて止めようと声をかけだが今の章和には何を言っても火に油状態だった






「うるさい!慧さんは黙ってて!」


「!!」


「…お前、なにをした?どうやって相田さんに取り入った!?」


『?』


「これ、相田さんのシャツだろ?なんでお前が着てる?
それに、なんでそんな格好でベッドに………
っ!?お前まさか!?」


『っ!!』

そう言うと章和は掴んでいたシャツを力任せに開き、留めていたボタンを引きちぎった

立っているのがやっとだった智仁はその衝撃で床に崩れ落ち座りこんでしまった



何とか両手で支えて床に顔を打ち付ける事は逃れた智仁だったが、ボタンが飛ばされた大きめのシャツは胸元がはだけ、左肩がずり落ち智仁の白い肌が露わになってしまった


その躰には清雅がつけた赤い印が幾つも点在していた
数日前と思われるものから先程つけられたと思われるものまで…智仁の白い肌がよりその赤い色を際立たせていた


それを上から見下ろしていた章和は更に怒りが増し許せない感情をむき出しにして智仁に迫っていった






「お前ーー!」


「章!止めろ!落ちつけ!」

また掴みかかろうとした章和に慧翔が後から肩を抑え引き止めた






「章!落ち着け!頼む落ち着いてくれ!!」


「邪魔すんな!」


「章!話をしよう!まずは話を__」


「話だって!?何言ってんだ!こいつは相田さんと!俺がどんな気持ちでずっといたか!それをこいつは!こいつは__」


「お前の気持ちは知ってる!だけど、彼は違うだろ!お前の気持ちに彼は関係ないだろ!?」


「無いわけない!見ただろ?こいつは相田さんと__俺には叶わないのに、どうしてこいつ何だよ!
ずっと側にいたのは俺なのに!なんで!なんでだよ!!」


「………章…」


離せよ…」


「…章?」


「離せって言ってんだ!」


「うわっ!」

章和は思いっきり身体を捩ると、抑えていた慧翔ごと吹き飛ばした
慧翔は急に振り払われた事によりバランスを崩しドアに背をぶつけ尻餅をついてしまった






「お前が悪いんだ…お前が相田さんを誑かした。お前が現れさえしなかったら…相田さんは__」


『っ!』


「おい!章!何して__」

章和は座り込んだまま此方を覗っていた智仁の腕をとり立たせると引き摺るようにドアへと向かった






「彼をどうするつもりだ?章!?」

慧翔は立ち上がり章和の行く手を阻むように手を広げて言った






「邪魔しないで慧さん…
此奴がいるからいけないんだ…此奴さえいなければ…相田さんは戻ってくるんだから__」


「章……?おい!しっかりしろ!何言ってるんだ!」


「……慧さん?俺の味方でしょ?邪魔しないでよ?」


「っ!ダメだ!章!」

慧翔は章和を思いとどませるように両肩を掴み押し返そうと力をいれた






「邪魔するなって言ってんだ!退けよ!!」


『!!』


章和は目の前にある慧翔の邪魔な体を押し退けようと腕を前にもってきた
だが、片方の手で智仁の腕を掴んでいた事を忘れていた為に、自ずと智仁までも引っ張られる事になってしまった


急に強い力で引っ張られた智仁はソファーの角に足を取られバランスを崩して蹌踉けてしまった
その勢いで章和から手が離れ次の瞬間…




ガッ! ガッシャーン ダッ!ダダン


大きな音が家中に響いた






「!!」


「おっ、おい!」

慧翔は驚いている章和の体を押し退け、直ぐさま大きな音と共に倒れた智仁の側に駆け寄った






「おい!大澤君!大澤君!」

慧翔は蹲ったままピクリとも動かない智仁に声をかけながら身体を反転させて顔が見えるように仰向けにした


仰向けにすると、智仁は右こめかみの上当たりから血を流し右腕には割れたガラスがまだ刺さっていた

ローテブルに勢いよくぶつかり、上に乗っていたガラス製の何かが床に落ちその上に倒れてしまったんだろうと推測はできた。
右側に傷が集中しているのは右側から倒れこんだから…だが、今はそんな事を考えている暇は無かった






「章!章!おいっ!どうすればいい!?頭動かして大丈夫か!?」

慧翔は智仁の頭を支えたまま章和を見たが、章和は茫然とその場に立ち尽くし、手を口に当てて智仁を見たまま固まっていた






「 章和!


「ビクッ!」

慧翔の大声に我に返り、章和は目線を慧翔に移した






「おいっ章和!お前に聞いてる!!どうすればいい?」


「ぁ……ま、待って 」

章和は漸く足を動かし倒れている智仁のそばにしゃがんで状態を見た






「そこ!ガラスがある!気をつけろ!」


「わ、分かった。……そのままちょっと待って 」


章和は智仁の左腕を持ち、もう片方の手を額に乗せると横たわっている智仁を頭の先からつま先までジッと確認するように見ていった

その間、慧翔は黙って側で見守っている






「…フゥ」

章和は智仁の体を見終わった後、目を瞑り一度息を吐いてから続けた…






「…頭は打ってない。でも衝撃で気を失ったみたい。それと右腕のガラスは抜いて大丈夫。大きな血管は傷ついてないから。」


「そうか!じゃ__」


「待って!素手はダメだ!あとキレイなタオルない?頭と腕に当てるから!」


「分かった!探す!」

慧翔は慌てて探し始める。丁度直ぐ側にボストンバッグがあったため中から何枚か白いタオルを拝借した






「あったぞ!これでいいか?」


「うん!じゃあ慧さん、そこ押さえてて!今ガラス取るからそしたら直ぐにタオルで圧迫して!」


「分かった!」


「じゃ、いくよ?せーのっ!」

章和はガラスをタオルの上から持ち、慎重に真っ直ぐ引き抜いた。そして賺さず慧翔が傷口にタオルを当てた。章和はその上から何かで巻き付けようとしたが…近くにいいものがなかった。






「章!ほらこれっ!」


「いいの?」


「今、そんな事聞くか?」


「あ、そうだったね…」


章和は慧翔から自分が身に着けていたネクタイを受け取ると智仁の腕に当てたタオルの上から巻き圧迫した

慧翔は腕の処置が終わると、もう一つのタオルを智仁の頭に置き優しく押さえた






「…章、この後は?」


「…救急車は呼べない……」


「なっ!そんな事言ってる場合か!?」


「…それでも…。呼べない…」


「章!!」


「…分かってる。宛が有るからそこに連れて行く 」


「っ!!…………分かった。じゃあ車を__」


「慧さん所の車は使わない。」


「じゃあ、どうするんだ?」


「大丈夫。もう表にいるから 」


「はっ?……お前いつの間に?」


「……。」


「……分かった、今は聞かない。それよりも時間が惜しい!早く彼を処置しないと…」

慧翔はそう言うと青ざめた顔色で意識をなくしている智仁を見た。
傷口からでた出血でシャツは赤く染まり、タオルも徐々に色が変化していっていた…






「……うん。じゃあ、これを巻いて?」

章和はそう言うとシーツを広げて智仁の躰を隠すように巻き付けた






「…よし、じゃあ行くぞ?」


「あっ!慧さん待って!」

慧翔が智仁を抱きかかえて立ち上がろうとした時、章和が声をかけた






「なに?」


「そっと、そっと運んで?」


「あ?」


「…左の肋骨………折れてる…」


「なっ!!………分かった。出来るだけやってみる 」


「…うん。お願い……」



慧翔は、慎重に智仁を抱きかかえ部屋を出ていった


裏口を出て表の玄関まで来るとカーゲートを開けて入ってきた白いワンボックスカーが停まっていた
その車体には何やら業者のロゴがプリントされていた


章和は先に車のスライドドアを開け、中の運転手と何やら話した後、また慧翔の側に戻ってきて一緒に歩いた






「慧さん大丈夫…?」


「ああ。彼は軽いから平気だ。…というか軽すぎる位だな。」

慧翔は平然な顔のまま軽々と智仁を横抱きし歩いていた。
しかし、車を見つけてからはその目が鋭く変わったのは言うまでもない。






「…章。後で話を聞かせて貰うぞ?」


「………。」


章和は無言のまま慧翔が乗り込んだ車のドアを閉めた。車が車道に出ると、カーゲートを閉じ賺さず自分は助手席へと乗った






「…じゃ、東矢間医院に向かって 」


章和は運転席に座る、帽子とマスクで顔を隠した者に声をかけると車は静かに発進していった…