※これは妄想腐小説です※
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~





















ホテルを出た車は会社に戻る筈だった行き先を変更し、松丘の自宅である一軒家の門前へと着いた


車を確認すると門が自動で開き、中に入るとまた自動で閉まった


舗装された道を行くと車は玄関の正面に横付けされる


純和風の大きな屋敷から使用人が数名出て並んで待っていた






「お帰りなさいませ旦那様 」

年配の男性が声をかけお辞儀をすると他の使用人も同じく頭を下げた


運転手が降りるよりも早く自分でドアを開け降りた松丘は、体を反転させて車の中から智仁を抱き上げて使用人に声をかけた






「先生は?」


「はい、お待ち頂いております。奥の和室に準備しておりますが、そちらで宜しかったですか?」


「ああ。それでいい。それと、もし来客があっても全て断れ 」


「畏まりました。他に必要な物が御座いましたら何なりと 」

使用人は再度頭を下げた






松丘が智仁を抱いたまま部屋に入ると、待っていた医者が立ち上がり智仁の顔を覗き込んだ






「そこへ寝かせて下さい 」

その言葉に松丘は智仁を布団にそっと寝かせた






「では、診ますので外でお待ち下さい 」

医者ががそういうと松丘は渋々部屋を後にし、2人が待つ隣の部屋へと移動した






「社長。はい、お茶です。…そんな怖い顔しなくても先生が診てくれてますから 」


「煩いぞ長世!この顔は元々だ!」


「そうでしたね~昔からそんな顔でしたね~」


長世が戯けたように言うが、松丘は何も返さず鼻息荒くお茶を啜りだした






「…彼はいつもこうなのですか?」

松丘とはテーブルを挟んで反対側に正座している岡多が口をひらいた






「いつも?って何の事?」

そんな岡多に松丘ではなく長世が聞き返した






「…ですから、いつもこんな風に倒れたりするのかと思いまして 」


「ないよ?」


「え?無いのですか?」


「うん。俺達の前であんな風になったのは初めてだね 」


「それは…驚きです。」


「ん?どうして?」


「お二人共冷静に対応されているので、頻繁にあるのだとばかり…」


「あ~。危惧はしてたけど、今回みたいなのは初めてだよ。
それに俺は冷静に努めているだけで社長は凄く焦ってるよ?
現に今もひと言も喋らないでしょ?
あの人いつもは煩い程喋るのに、こういう時は喋らないんだ。」


「…そうなのですか 」


「そうなの。余程心配なんだね~見てよ?
あの湯呑み割りそうな勢いで握ってるよね?その内割れるね 」


「…それは、危ないのでは?声をかけた方が…」


「無駄無駄!たぶん何言っても聞こえてないからあの人~頭の中は大澤君の心配でいっぱいだよ~きっと 」


「長世副社長は…?」


「俺も勿論心配してるよ?
でもたぶん…大丈夫だと思ってるから 」


「たぶん?」


「う~ん。まだ?って言った方が正しいかもしれないけどね…」


「それは…どういう____」



~♪~♪



「あ、ごめん!会社から電話だ 」

そういうと長世は謝りながら席を離れ廊下へと出て行った



岡多は長世が出て行ったのを確認してから松丘に視線を戻し話かけた






「…松丘社長?」


「……… 」


「松丘社長?
私も社長に連絡を入れたいのですが、席を外しても宜しいですか?」


「………」

岡多が松丘に問いかけるも返事が無い。許可が取れなかった岡多は連絡を諦めようとした時…






「………少し待ってろ 」


「はい?」


「連絡だ。櫻庭社長への連絡を少し待てと言っている 」


「……分かりました 」

松丘からの言葉に岡多は何かを察したのか短く返事をしてまた沈黙が続いた


それから約10分たったころ、長世が戻るのと同時くらいに看護師が部屋の外から声をかけた






「先生からご説明があります。どうぞこちらへ 」

その言葉に松丘は勢いよく立ち上がり、我先にと智仁の元へと急いだ






「先生!智仁は!?」


「松丘さん。患者の前ですよ?お静かに 」


「っ!すみません。それで…智仁は…」


「精神的な発作でしょう。今は安定剤で眠っていますが……気懸かりが……」


「何ですか?」


「松丘さん?彼の身内の方は?」


「……いません。」


「誰も?………そうですか 」


「どうしてですか?今は俺達が身内のようなものです 」


「……彼の躰の事はご存知で?」


「…知っています 」


「…そうでしたか。
兎に角、今は安静に。
点滴をしてはいますが、彼は痩せすぎです。こんな体で動けるとは……いえ、憶測はいけませんね。
彼の主治医はいますか?」


「…分かりません 」


「では、点滴が終わる頃にまた伺います。彼にも話が聞きたいので…」


「先生が主治医になってくださるんですか?」


「それは、彼次第です。私が決められる事ではありません。
でも、私でよければ力になりたいと考えています 」


「それは嬉しいです!」


「…ですから、それを決めるのは我々ではありません。」


「…すみません 」


「ふふ。では私は一度戻ります。また後で 」


「はい!ご無理を言ってすみませんでした。お送りしますのでこちらに 」


そう言うと松丘は医師と看護師を連れて部屋を出て行った






「ふぅ。取りあえず良かった 」

長世は、まだ顔色が悪いままの智仁の横に腰を降ろした






「松丘社長はあの医師とお知り合いですか?」


「ん?ああ、そうだよ!あの人のお父さんの代からお世話になっている。ま、俺もだけどね。どうして?」


「…初めて見たので…あんな松丘社長を 」


「あ~。俺達の憧れの先輩って感じだからね。昔から変わらないね~」


「…そうなんですね。それで嬉しそうに 」


「アハハ。患者がいる前で嬉しそうにするのもどうかと思うけどね~」

そういうと長世は智仁の頭を優しく撫で始めた






「…松丘社長もでしたが、長世副社長も__」


「長世でいいよ?副社長なんてただの肩書きだから 」


「…では長世さんでいいですか?」


「いいよ~で?何?」


「…長世さんも意外でした 」


「意外?」


「はい…そんな優しい顔をされる方ではないと思っていたので 」


「君は正直だね?アハハ。でも堅いね~俺ってそんなイメージだったの?あ、さっきも見せちゃったからか~」


「…はい」


「ま~、他所でなんて言われているかは知ってるよ?そっちが本当の俺でもあるから否定はしないけど 」


「でも、こちらも本当の貴方という事なんですね…」


「ハハハ堅いって~まっ、知ってる人は知ってるから別にいいんだけど…大澤君は更に特別なんだよね。俺も社長も 」


「彼に…何かあるのですか?」


「大澤君を知るとね、守りたくなるんだよ。
社長を見てて分かったでしょ?
勿論、他の社員も大切だ。一つの家族のようなものだからね。でも彼は……」


「更に特別…」


「君は知らない方がいいと思うよ?」


「そうでしょうか?」


「うん。君は櫻庭の人間だ。それにあの三男坊にも近いよね?確か大学の…」


「はい。歳は3つ違いなので私の後輩にあたります。」


「大学だけじゃないよね?昔から家族ぐるみの付き合いでしょ?君のお父さんも秘書なんだから 」


「…そうです 」


「だから、余り深く係わらない方がいいよ?
大澤君が倒れるとは思わなかったから、社長も期限を設けたけど、今はどうでるか…
君に当たり散らすかもしれない。帰った方が得策かもね 」


「いえ、それは出来ません。櫻庭の人間だからこそこの場に、彼の側にいなくては…」


「だから堅いって言ってるのにな~、ま、それを決めるのは俺じゃないんだけど…
1つ忠告してあげる!」


「なんでしょうか?」


「必要以上に大澤君に係わるのは止めた方がいいよ?」


「それは…どちらの意味でしょうか?」


「アハハ。君は勘もいいね~でも…どっちもだよ?」


「………」


「眉間に皺がよってるよ~?また俺の噂でも思い出してたりして?」


「…はい。考えてました 」


「アハハハハ。君は本当に正直だね~誤魔化してもいいもんなのに 」


「嘘は嫌いです 」


「いいね~そういう人、俺は嫌いじゃないな~」

長世は笑いながら楽しそうに言ったが智仁の頭を撫でるのは止めなかった






「…長世さん。それ松丘社長に怒られませんか?」


「ん?これ?だって社長がいない時しか出来ないからね~今の内にね~」


「……そう…ですか 」






長世が手を止めないのを見て諦めたのか、岡多は言いたい言葉をのみ込んで長世から少し離れた戸の側に腰を降ろした…