※これは妄想腐小説です※
~間違われた方、苦手な方はお戻り下さい~



















松丘が未だ苦しい表情のままの智仁を隠すようにロビーを歩きホテルを出ようとしていた時、漸く坂元支配人と数名のスタッフが追いつき声をかけた






「松丘社長!お待ち下さい!」


「待たん!何度も言わせるな!!」






松丘は振り返る事も歩みを止める事もせずに言った

だが、智仁を支えて歩いている為か歩く速度はゆっくりしていた

ドアマンに一礼されホテルを出ると丁度正面に停まった車から運転手が降り松丘達が乗るためにドアを開けた






「松丘社長!どうかお願いします!謝罪をさせて頂きたいのです!」






坂元支配人の必死な言葉に松丘は立ち止まり、声だけで返した






「謝罪?誰にだ!?」


「勿論!大澤君にです!我々がしたことは__」


「すまないが、今は受け入れられない 」

坂元支配人の話がまだ終わっていないのに松丘は言葉を被せて言った






「っ!?待って下さい少しだけでいいんです!大澤君に___」


「勘違いしないでもらいたい」

そう言うと、松丘は片手で支えている智仁ごと坂元支配人の方に振り返った






「受け入れられないと言ったのは、今、本人がそれを聞けない状態だからだ…」

松丘はそう言うと、智仁に視線を落とした

それにつられる様に坂元支配人も智仁を見た



その顔は蒼白く、呼吸が荒く苦しそうに目を瞑り微かに震えている
まさに、今にも倒れそうなのを必死に我慢しているようだった






「__っ!!」

坂元支配人が異変に気付き、智仁に駆け寄ろうとしたがそれを松丘が手を前に出し制した

そして少し屈み智仁に静かに言った







「…智仁?車に乗せるぞ?」

そう言うと松丘は智仁を抱き上げ車へと歩いた



智仁を車の中に寝かせると、待っていた運転手にひと言二言話し、車のドアを閉めて坂元達の元へと戻った






「彼は!大澤君は大丈夫なのですか…!?」


「見た通り大丈夫ではない。俺が抱きかかえて連れ出せればまだ良かったが、ホテル内では注目されるからな、遠慮してやった。
だが、智仁には歩かせた方が酷だったかもしれない…」


「い、医者を手配します!」


「必要ない。既にこちらで呼ぶように言った 」


「……そんな…」


「お前の気持ちだけ受け取っておく。
お前が大澤を気にかけていてくれた事も知っている。
大澤がそう言っていたからな。
それには感謝している。」


「そんなっ!!俺は何も!
大澤君の真面目で優しい人柄に私達は皆惹かれたのです。疲れた日でも、彼の側に行き挨拶を交わしただけで癒される。彼と話せるのはそんな貴重な時間でした。
感謝など……我々が感謝しているのに……

それなのに彼を酷い目に遭わせてしまった。
我々は償いようのない過ちを犯しました…
許されるとは思っていません。ですが直接謝りたくて…どうしても……」


「そこまで深く考えなくていいと思うが?」


「いいえ!我々の責任です。櫻庭で働く我々の……」


「…ふぅ。板挟み…という事か?」


「申し訳ありません」


「…いや。義理は大事だ。そう俺は思っているだけだが…。
ただ、大澤はお前に謝って欲しいとは思っていないと思うぞ?」


「……ですが!」


「今の間は、お前もそう思ったという事だろう?」


「………。」


「大澤の性格を知っていれば分かる事だな 」


「ですが…そういう訳にもいきません。間違った事をした我々が謝るのは道理です。現に大澤君は体調を崩している。精神的に追い詰めてしまった…そう感じます。だから謝らせて下さい。」


「……ハァ。お前達がそこまで分かるのに、彼奴らは1人も駆け寄ってきやしない。
お前達を見習わせたいな…
俺はスーツを着て、偉そうにふんぞり返っている奴が大嫌いだ!!」

松丘は腕を組み仁王立ちで言い放った。
そこへ…






「社長も先程、椅子にふんぞり返って座ってましたけどね?」

長世が笑いながら、岡多と共にホテルから出てきた






「遅いぞ長世!何をもたもたしている!」

松丘が睨むように長世を見て言い放つた






「そんなに待たせました?
いやぁ~馬鹿が呆然と立ち尽くしたまま動かなかったので、ちょ~っとだけお話を!」


「その馬鹿は今はどうでもいい!早く帰るぞ!!」

松丘の焦っている雰囲気を素早く感じ取った長世が聞き返した






「まさか…大澤君?」


「ああ!医者は手配した!早く行くぞ!?」


「了解 」

長世の短い返事に3人は車へと急いだ



車に乗り込んだ松丘が窓を開けて坂元に声をかけた






「支配人!大澤には話をしておく。
受け入れるか入れないかは大澤次第だが、まずは体調を優先させる。
それまでは…待てるな?」


「心得ております。どうぞ宜しくお願い致します 」

坂元達は頭を深く下げた


そして車が発進し、その姿が小さくなっていくが彼等はまだ頭を下げたままだった…