※これは妄想腐小説です※
バタバタバタバタバタバタッ
「所長!待って下さい!」
「無理!!」
「そんな顔で行ったら山中君が怯えますよ!?」
「顔なんて気にしてらんないから!それよりも早く!」
「待って下さい!リーチが違うんですから追いつけませんって!いいですか?優しく聞いて下さいね!?折角良い方に向かってきてるんですからっ!
所長!?聞いてますか?所長ー!」
バンっ!
「山中君!出てくって本当なの!?」
「っ!!」
涼は大きな音に驚いたのか体がビクッ!となり瞬時にベットの後ろに隠れてしまった
「所長!!あれ程言ったのに何驚かせてるんですか!!ごめんね山中君大丈夫だから出てきて?」
「………」
「ほらっ!所長のせいで怯えてるじゃないですか!謝って下さい!それに扉まで壊したんじゃないですか?力強いんですから気をつけてもらわないと!」
「ごめんね山中君!?でも俺急いでて、風見君から話聞いたよ!ここを出て行くってどういう事!?」
「所長!ストップストップ!近いです!そして圧が強いんですから!僕、優しくって言ったじゃないですか!」
風見は涼と清雅の間に入り肩を押さえて何とか停めようと踏ん張ってみるが、身長差がある為になかなか思うようにいかなかった
「風見君邪魔しないで!俺は山中君と話があるんだから!
山中君!ここを出て何処に行く予定なの?もしかして、昨日君を連れてきてくれた人の処じゃないよね!?」
清雅は風見の事は諸ともせずに涼に詰め寄り凄い形相で問いただした
涼は清雅の気迫に負けたのかおずおずとベットから顔をだし、コクッと頷いた
「本当に言ってるの!?昨日会ったばっかりの人でしょ!どんな人か知らないけど、君は騙されてるんじゃない!?」
「所長!!」
「何っ?だってそうでしょ!山中君はまだ子供なんだよ?それを___」
「トモ君はそんな人じゃないっ!!」
清雅の話が終わる前に涼が叫んでいた
清雅と風見は涼の声に驚いて振り返った
「…トモ君は騙すような人じゃない!
何も知らないくせに!そんな酷い事…言わないで!」
涼は必死に訴えるように言った。だが、手は震えていた…
「…ごめん。そうだね、何も知らないのに人を勝手に判断したらいけないよね…ごめんなさい。俺が言い過ぎました 」
清雅は苦い顔をした後自分の否を認め涼に頭を下げて謝った
「っ!ぼ、僕の方こそ生意気言ってごめんなさい…所長さんにはちゃんと謝らなきゃいけないって言われてたのに…」
「…?」
「…フゥ。何も言わずに勝手に抜け出したりして迷惑かけてごめんなさい…」
今度は涼が清雅と風見に頭を下げ謝った
「…言われてたっていいましたけどそれは…昨日の彼にですか?」
風見はまだ頭を下げている涼にむかって言った
「はい。トモ君に…言われたというか、しなきゃいけないと教えられました。」
「俺、まだその人の事分からないんだけど…詳しく教えてくれない?」
「…何を?」
涼は清雅の問いにどう答えていいか分からず清雅に聞き返した
「その…トモ君だっけ?彼はどこの人?」
「…知りません」
「えっ?知らないの?」
「…はい」
「知らないのにどうして…?」
「僕が…僕が一緒にいたいと思ったから……」
「…それでそのトモ君?が家に来いって言ったの?」
清雅の問に涼は何も言わず首を振った
「え?違うの?」
「…トモ君はそんな事ひと言も言ってません。
ただ僕が…ここを出てあの人の側に行きたくて。だから風見さんに出ていきたいって言ったんです…」
「そんな…どうして?ここは__」
「怖いんです!…僕は僕が怖いんです…
今、こうして話をするのも本当は怖い…でもトモ君と約束したから…ちゃんと話しをするって。
今は頑張って抑えてるけどいつ暴走するか分からない!もう前の僕には戻りたくないんだ!
やっとやっと見つけたのに…ずっとビクビクして隠れてた僕を見つけてくれた唯一の人に出逢えたのに…
お願いです。あの人のところに行きたいんです!あの人の側にいたい!
だから僕からあの人を奪わないで…お願い……」
涼は泣き崩れてしまい最後の方はずっと「お願い …」と懇願する声だけが聞こえていた
清雅はどうする事もできずに固まっていた…
自分にもそんな経験があるから分かるのだろう。
普通じゃない自分達が…ましてや15歳の子供が施設を離れて暮らす事がどんなに大変か…
しかも涼は力の加減が出来ていない。
教えてくれる人などいないから自分で何とか身につけるしかないのだが、涼はあまりにも外界との係わりを断って過ごしてきてしまった…
この施設はサポート体制もしっかりしているから今の状態で時間をかければ何とかなるとも思っていた
だが…涼はそれ以上に危うかった。心が限界なんだろう。清雅自身がそうであったように…
(まだ15歳の子が必死にお願いしているのに…俺は何も出来ないのかな…助けてあげたいのに…俺と同じにはしたくないのに…)
清雅は泣き崩れる涼の姿に自分の無力さを感じ心が締め付けられる想いだった
そんな清雅の顔を見て何かを汲み取った風見は、先程まで手にし、今はソファーの上に置いてあった袋を持ってきて涼の前にしゃがんだ
「山中君?これ買ってきたんだ…」
風見は袋ごと涼に差し出すと中を見るように促した
涼は俯いて泣いていた顔をあげて袋を覗くと、中には白い箱が入っていた
「…これは?」
「山中君用のスマホだよ!」
「…僕の?でも僕携帯壊しちゃうから…」
「それは前の山中君でしょ?これはね~衝撃吸収とかで廻りがゴムなんだよ!それにカバーも入ってるでしょ!気休めにしかならないけど二重にしたらどうかな~って思ってね!」
「…でも壊しちゃったら__」
「その時はまた買えばいいよ!二條さんとか詳しそうだから聞いて、専門の人に特別製を作ってもらったっていいし!
これを壊さないように使えたら、君の力のコントロールの練習にもなると思うんだ!
それに…これでトモ君とも連絡がとれるんじゃない?
できたら、山中君は嬉しくない?」
「嬉しいっ!」
涼はスマホを胸に抱き漸く笑顔で風見を見た
「…山中君?これだけは分かってほしい。
所長も僕達も君が悲しむことはしたくないんだ。君が笑顔でいれるために…僕達にも協力させてくれないかな?一緒に頑張らせてくれないかな…?」
「……トモ君の側に行ってもいいの?」
「でもトモ君にはその事話してないんだよね?じゃあまずは聞いてみないとね?山中君は連絡先とか知ってる?」
「うん!昨日教えて貰ったから!
えっと…あ!これ!この紙に書いて貰ったんだ!」
「そっか良かったね!じゃあ電話して聞いてみようか?」
「…電話は…ダメだから。メール!メールにする!」
「電話は駄目なの?」
「…うん。風見さんこれどうやるの?」
「あ~そうだね。充電して、設定しなきゃだね!僕が手伝うからまずはこの充電器をコンセントにさしてくれる?」
「うん!分かった!」
涼は余程嬉しかったのか笑顔で包装を解いてコンセントを探し始めた
「…所長。そろそろ泣き止んで貰えませんか?」
「う゛~~だって風見君があんな事言うから…グスッ
もう風見君が所長やればいいのに!俺なんて何も言えなかったのに…」
「それは所長が何かを感じ取ったからですよね?本当に優しいんですから…所長は……。」
「そんなことない゛がら~~グスッ」
「はい、まずは鼻かんで下さい!それと…」
「それと…?」
「連絡先入手しました」
「ん゛?」
「“トモ君”のですよ。ほらっ!…これで私達からも連絡できますね 」
「…抜かりがないね。だんだん章に似てきたんじゃない?」
「…それは遠慮したいです 」
清雅は泣いていた事が嘘みたいにアヒャヒャヒャと笑っていた