※これは妄想腐小説です※
バンっ!
車のドアを勢いよく閉めた清雅は一目散に入口へと駆け出した
「おいっ!清雅!鍵!!……ったく。」
「慧さん車どうする?」
「あ~いいよこのままで!それより行くぞ」
「うん。分かった」
慧翔と潤哉は車をその場に残し“グリーンハート”へと急いだ
「遅っせぇよ!この相バカがぁー!!」
大声と共に清雅が建物の中から吹き飛んできた。
「「マジッ?」」
扉の前に転がる清雅と、その清雅を怒った顔で見下ろしている章和を2人は交互に見た。
「待って!待って下さい!二條さん!それ以上やったら所長が__」
「止めないで下さい風見君!」
風見は再び殴りかかろうとしている章和の腰に後から腕を回し必死に踏ん張っていた
「殴っちゃダメですって!!」
「殴ってません!私は蹴ったんです!」
「いや、同じですからー!ちょっと!!そこのお二人も見てないで手伝って下さい!」
風見は助けを求めるように傍観している慧翔と潤哉に声をかけた。
「「あ…。ああ!分かった 」」
慧翔は章和の前に回り、潤哉は倒れた清雅を起き上がらせた。
「慧さん!何で止めるんですか!」
「いや、まぁ気持ちは分からなくもないけど…」
「櫻庭さん!?そこ肯定しないで下さい!」
「あ~ごめん。えっとな…章、俺も同じ気持ちだったんだ。でも章が先に手を出すとは…驚いた。」
「ちょっと櫻庭さん!?何言って__」
風見は驚いた顔で慧翔の方を見た
「いや、本当にそう思ったから言ったんだけど…でもな、今しなくちゃいけない事なのか?」
「はい…?」
「優先しなくちゃいけない事は何だ?って聞いてんだよ!お前ならわかるだろ…章?」
慧翔は章和を真っ直ぐ見て言った
「…はぁ。分かりましたよ慧さん。」
真っ直ぐ見てくる慧翔に章和は溜め息をつき、諦めた顔をしていった。
「うん。分かってくれたか」
「相バカの事は後で…ですね。」
「うん…?」
慧翔は笑顔で言う章和に『あれ?言い方間違ったか?』と疑問に思ったが
「終わった?」
潤哉の声でハッと振り返った。
「清雅!平気か!?」
慧翔は潤哉に支えられて立っている清雅に声をかけた。
「だ、大丈夫慧ちゃん。ちょっと…ビックリしただけ…」
「なら良かった。それで?…俺達はどうすればいい?」
「う、うん!まずは…風見君!詳しく教えて!!」
「っ!は、ハイ!!」
風見は今日あったことを4人に時系列と共に話た。
「なるほど…。じゃあ、出て行ったのは今から約30分前って事だな?」
慧翔は腕時計を見ながら風見に聞いた。
「はい!そうです!今、此処には僕を含めて3人だけなので、外に捜しにも行けなくて…二條さんに連絡しました」
「その判断は間違ってないと思う」
「うん。俺もそう思うよ。でも何処に行ったんだろう?」
「清雅、彼の行きそうな所は心当たりあるか?」
「それが…無いんだよね。涼君の地元はここら辺じゃないし、そもそもここに来てからは1度も外に出た事無かったんだ…」
「それは、厳しいな…。章、何か見えるか?」
「いえ。何も見えません。彼の力のせいでしょうね…」
「バチバチか?」
「バチバチというか…」
章和が答えに詰まらせると風見が変わりに話した。
「櫻庭さんはかくれんぼ得意ですか?」
「えっ?何の話してんの?」
「慧ちゃん…。あの子はかくれんぼが得意なんだ!」
「はぁ??」
慧翔は意味が分からないという顔で清雅を見る
「俺達は“鬼役”って事?」
潤哉が清雅に確認をとる。
「そうですね…それも相当難しい、かくれんぼになりますよ」
章和は面倒臭そうな顔をして首を横に振った
「更に意味がわかんねぇ!俺達が見つける側で、隠れてるのが彼なんだろ?ただの人捜しと違うのか?」
「違うんですよ慧さん…。見つける相手が我々には見えないからです」
「は?」
「涼君は居るのに、いないんだよ!」
「はぁ???」
「相田さん、それじゃ余計意味が分からなくなりますよ…」
「えっ?慧ちゃん分かんないの?嘘~」
「分かんねえよ!!何だその説明!誰かもっと分かるように説明しろよ!」
「……居るのに居ない。…それって、まるで透明人間を捜せ!って言ってるみたいだね。」
「潤哉君それだよ!」 「潤哉君それです!」
2人は声を揃えて言った
「透明人間って…じゃあ捜しようがねえじゃねえかー!!!」
慧翔は大きな声で叫んだ
「大丈夫です慧さん。手が無くも無いです。」
「は、い??」
その頃の彼は………
「はぁ…ここ何処だろ…?」
“グリーンハート”から20キロ程離れた小さな公園にいた
「逃げちゃった。また…。
でも僕のことなんて誰も……誰も……。
やっぱり僕は1人でいなきゃいけないんだ。
そうしないとまた……迷惑かけちゃう………」
彼は小さく呟いた。
まるで自分に言い聞かせるように、本当に小さな小さな声だった。
人は聞こえないだろう。そもそも見えもしない。
それでも、聞こえたものもいた。
ガサガサガサ
彼が座るベンチの横に植えられた檜が静かに葉音をたてた。