※これは妄想腐小説です※




















「えっ?慧さん!なにしてんの?」

潤哉は、頭の上に葉っぱが乗ったままの慧翔に驚き声をかけた。




「…いや、俺にも何が何だか…。」

慧翔も何が起こったか分からず、困惑した顔で葉っぱを払い落とした。



「何かこの木に怒られる事でもしたの?」


「いや~何もしてないけどなぁ……って、待て待て!木が何かするとかあり得ないだろ?何言ってんだよ。」


「そうかな~?明らかにこの木だと思うけど…」

潤哉は高い木を見上げて言った。





「やめてくれよ!俺がそういうの苦手なの知ってるだろ!?」

勘弁してくれよ~という顔をした慧翔が両腕を組んで擦っている。



「アハハ。ごめんごめん。そうだった。慧さんは目に見えない“何か”が苦手だったね。昔から!」


「そうだよ!苦手だよ!悪いか!?…きっと、リスとか何かがいたんだよ!!」

慧翔は少し怒ったような口調で潤哉にかえした。




「リスねぇ…。居たかなあ?」


「頼むやめてくれ!ここはリスにしとこう!な!?リスでいいんじゃないかと俺は思うけど!!」

慧翔は懇願した目をして潤哉に詰め寄る。



その姿は必死に見えて、未だ納得いかない様子の潤哉も可哀想になる程だった。





「…そうだね。リスにしとこうか!」


「ああ。困ったリスだよなぁ~」

慧翔は少しホッとした顔をしたが、直ぐにその場から離れた位置に移動していた。



その行動を潤哉は面白そうに笑ってみていた。






「あっ、慧さんこの大量の葉っぱってこのままでいいの?」

潤哉はさっきまで慧翔が立っていた場所を指さして聞いてみる。




「ああ。大丈夫だろ。まだ掃除の人が居るはずだし、支配人に頼んで言ってもらうよ。」


「えっ?掃除の人がいるの?庭師とかじゃないの?」


「違う違う。庭師は剪定の時とか、定期的に様子を見に来たりしか此処にはこないんだ。
だから、毎日の管理は基本こっちでやってるんだよ。
管理といっても弱ってないか異常が無いかとかだから、庭掃除担当の者に全て任せてるんだ。」


「庭掃除専門の人って事?」


「それも違うなぁ~。
このホテルは1つの会社に中も外も掃除を全て委託しているんだ。
だから、その会社に庭の掃除も任せてる」


「えっ?専門じゃないのに大丈夫なの?」


「別に庭師を雇っているから大丈夫だろ。
それに、落ち葉や風で飛んできたゴミを拾ったりとか見て回るくらいしかないはずだからなぁ~案外平気なんじゃないか?」


「へぇ~そういうものなの?」


「委託会社に選任は任せてあるからそこの心配はしていない。
現にこうしてこの庭は元気だろ?」


「確かに…。でも凄いねその会社!掃除に関して幅広く対応するんだね~」

潤哉は感心するように大きく頷いて言った。




「ああ。その会社、俺らの業界でも有名でさ~。社長も若いのに何か頼りがいあるし、仕事は臨機応変してくれるから引く手数多なんだよ。
俺も数回会っただけだけど、面倒見のよさそうな人だったよ!
ああいい人が社長だと社員もいい人が集まるもんなのかなぁ~」

慧翔は社長の顔を思い浮かべて言った。





「なんか興味湧いてきたかも。会ってみたいなその社長に!」

潤哉はまだ会った事のないその人を思い浮かべて言う。





「そんな簡単には会えないと思うぞ!なんせ忙しい人だからな」


「えっ?そんなに難しいの?」


「潤哉が考えている10倍は難しい…はず!」


「それは……俄然燃えるね♪」

潤哉は攻略が難しいゲームを前にした子供のように目をキラキラと輝かせた。




慧翔は火に油だったかと苦笑いを浮かべた。


(しかし、そう易々と潤哉に会われては困る。俺だって、アポをとるのに2週間以上かかった。それを簡単に会われたら…俺………。でも、こいつ勘がいいからなぁ~。パパッと会っちゃいそうなんだよなぁ~)


そんな事を心に想いながらいると潤哉が



「ところで慧さん。その庭掃除の人は今どこにいるの?
あそこだけ葉っぱが積もってるから違和感ありまくりだよ!早く片付けて貰わないと!」

慧翔が立っていた場所を見て言った。




「そうだな。早く連絡とんないとな」

慧翔はスマホを取り出しホテルのフロントの内線をタップした。









「でも、この庭に毎日これるのなら俺が掃除でも何でも引き受けたいよ♪」

電話の終わった慧翔に向かって潤哉が言う。





「いや。お前は無理だと思うけどな。」

慧翔は笑いながらかえす。





「何でよ?」


「この庭は綺麗な状態でお客様を見送りたいし迎え入れたい。
だから、自ずと朝が早いんだ。
お前は朝、苦手だろ…?」


「………たぶん無理だろうね。」


「諦め早いな!ハハハッ」


「残念だなぁ~。本気でちょっと考えてたのに…。
ああ、掃除できる人が羨ましくなってきた。
いいなぁ~その人。若い人だよね?」


「若い人?」


「あれ?違う?」


「……また、いつもの勘ってやつ??」


「そう思ったんだけど…違うの?」


「違う違う。掃除の人は草木に詳しいおじさんだよ!俺、最初に会ってるからね。」

慧翔がフフンと鼻をならして言った時





ガサガサガザ





また、桜の木から葉が揺れる音がした。






「!!!」

「もう何なんだよ~~~!」

ビクッとなった慧翔は潤哉を置いて1人逃げるようにホテルの方に走っていってしまった。






「………。」

潤哉はそんな慧翔の言葉を聞いて、また辺りをグルッと見廻した。



しかし、誰もいるはずはない。






「やっぱり慧さん何か怒られるような事したんじゃ…………」

1人取り残された潤哉は、走っていった慧翔の方を見ながら憐れんだ顔をしていた。