※これは妄想腐小説です※
















「どうよ?」

「……。凄いよ慧さん」

「だろ~!俺の力作♪」

「いや、慧さんは造ってないでしょ。」

「いや、そうなんだけどさ~此処までこぎ着けるの大変だったからなぁ~。」

「3年だっけ?」

「いや、4年ちょいかかった…」

「こんだけ凄ければ自信作っていうのも納得だよ!もう、此処に入った時から違う空間にいるみたいに感じるもん!!」

潤哉はグルッと一周見回して、更に目を輝かせた。





温かい日差しと、頬を撫でる風がより一層気持ちいい。










慧翔が《渾身の出来》と自負するこの庭は、慧翔が発案し木や花の配置、小川の流れる水路、その他諸々全て監督していた。



勿論、専門家のアドバイスや庭師との連携があったからこそ出来上がったものだが、その知識もアポイントも会社ではなく個人で得た物だった。



慧翔自身、長い年月をかけたこの庭には特別な想いもあるし、何より、癒されるのだ。
だから空いた時間があれば必ず立ち寄っていった。




そんな彼を見ている周囲の人間やホテル関係者からは《桜庭 慧翔のお気に入り》という別の名がこの庭につけられていた。






「ねぇ慧さん?あの噂の桜の木はこの奥にあるの?」

潤哉はキラキラと輝かせた目を慧翔に向けて問いかける。



「そう、この桜並木の先にあるよ。」

慧翔は今歩いている道の先を指さしてこたえた。




2人が歩く道の両側にはまだ背の低い、桜が等間隔に植えてある。


今は花が散り終わった後の為、濃い緑色の葉を枝につけている。








「ほら、あそこだよ。」

慧翔は顎を前にクイッと動かして隣に並んで歩く潤哉に言う。



右に左に忙しなく動いていた潤哉の顔が、慧翔の一言で前だけを向いた。


そして、歩調が早くなったのに当の本人は気づいていないようだった。


そんな潤哉の姿に慧翔は後ろから微笑んでついていった。








「……これが、あの噂の……」

潤哉は立ち止まり、目の前の20メートルはあるであろう大木をジッと見つめていた。





「そう。樹齢400年の桜の木。これを見たときさぁ、俺直ぐに______」


慧翔がこの桜の木との出会いを語りだそうとした時




「慧さん。ちょっと黙って。」

潤哉に静かに阻止された。




「…はい。スミマセン………」

潤哉の強い眼光で言われると、(誰も何も言えなくなるよな…)と思った慧翔だったが、口に出すことはしない。





潤哉は下から上まで見上げ、そして木の周りをゆっくりと観察しながら眺めていく。




それから数分。


潤哉は、何かに納得したかのような顔で、待っていた慧翔の側までやってきた。



「ありがとう慧さん。いいもん見れたよ♪」

潤哉はさっきよりも嬉しそうな笑顔で慧翔に話しかけた。


「気に入ったか?」

「勿論♪桜の花も見たかったけど仕方ないね。でも、これはこれで木そのものの力強さとかが感じられて凄く良かった♪あぁ~俺、通っちゃうかも~」

「潤哉がそうしたいならホテルには俺から話つけとくよ」

「本当に!?それ助かる!」

「ああ。いつでも来たらいい。」

「そうする♪でも、最初信じてなかったんだよね~慧さんの木に一目惚れした話!」

「ブッ!!一目惚れって何だよ!?」

「いやぁ~だってさぁ~この木に会いにいって、そしたら電話で《絶対連れて帰る!》って急に言ってくるんだもん!その後は木について熱く語り始めるしさぁ~正直返事に困ったよね…」

「仕方ないだろ!会ったら直感で思ったんだから!!」

「それが、一目惚れってやつでしょ?」

潤哉はニヤニヤしながら口を開けたままの慧翔を覗き込むように見る。





…慧翔は言われて初めて気づいた。




(俺、初めて一目惚れっていう体験したのが、“木”なの!?
それって…。
何か…、ショックだ……。)


慧翔は、ハァ~と、なで肩の肩を更におろし俯いてしまった。



その時、強風が吹いているわけでもないのに、バサバサと枝が揺れ動いて慧翔の頭に葉っぱが降ってきた。









「へっ???」


慧翔は目を見開いて何がおきたんだ?と辺りを見回した。