※これは妄想腐小説です※
彼の朝は早い。
今の仕事の都合上、日の出を迎える頃にあわせて朝の4時から始まる。
今までは、夜のシフトに入っていたが、ピンチヒッターとしてこの場所に派遣されていた。
彼の仕事は…
【おはよう。今日も良い陽気になりそうだのぉ】
〖クスクス〗
【なんじゃ?なんぞあったか?】
【おい?聞こえておるじゃろ?】
〖 _____、_______。〗
【当たり前じゃろ!分かって言っておるわ。儂を誰じゃとおもっとる?】
〖 ___?〗
【その通りなんじゃか、もう少しのぉ~…】
〖 __?〗
【ダメではないがのぉ。《桜の木さん》と呼ばれるのは…なんとも…むず痒い気がしてのぉ…。折角こうして話せるのにお主はいつまでたっても……】
〖 _______?〗
【お主が話さないのは知っておるとも。しかし、儂にはお主の“声”がちゃんと聞こえておる。前から言っておるだろ。儂らには人が発している“言葉”など意味がないのだと…。】
〖………。〗
【どうしたんじゃ?】
〖……考えてたの〗
【おお!呼び方をか?】
〖うん。嫌なんでしょ?だから何て呼べばいいのかなぁ~って…〗
【では、爺と呼んでおくれ】
〖爺?それはちょっと……〗
【ダメか?儂は良いと思ったがのぉ~】
〖う~ん…。じゃあ、桜のおじいさんでいい?〗
【まだ堅苦しい気がするが…】
〖フフッ。はい。決まりね!それじゃあ僕、他も見て回らないといけないからそろそろ行くね〗
【仕方ないかのぉ~。じゃが終わったらまた儂の所に寄ってくれるんじゃろ?】
〖うん。来るよ。そうしないと桜のおじいさん拗ねちゃうでしょ?〗
【儂がいつ拗ねたというのじゃ!?】
〖えっ?僕が最後にあいに行かない日とかあると、次の日怒ってるよね?最初に必ず文句言うでしょ?だから、拗ねてるのかなぁ~って〗
【す、拗ねとらんわ!!】
〖クスクス。は~い。そういうことにしておくね~。じゃあ、行ってくるね~〗
彼は優しく微笑むと、片手を挙げて手を振り、残りの仕事を片付けるために歩いていった。
【拗ねとらんからの~!!これ!聞いとるかぁ~!?儂はただ………】
桜の木は大きな音を出し彼の小さな背中に問いかけたが、彼は振り返らなかった。
【儂はただ…お主と少しでも長く一緒に居たいだけなんじゃがのぉ………】
見えなくなった彼をおもい、桜の木は悲しげに小さい音で呟いた…。
それを聴いていたのは、羽を休めに停まった数羽の小鳥達だけだった。