※これは妄想腐小説です※

















さほど遠くない会場へと続く通路には桜柄の絨毯が敷かれている。
3人は、そこを昔を懐かしみ談笑しながら進んでいた。


「そういえば、潤哉くんはどうなりました?」

章和が慧翔を見ながら訪ねる。


「うん。やっぱり来れないらしい。」

慧翔は少し残念な顔をしながら答える。


「えっ?潤哉クンこれないの!?」

清雅も眉尻を下げて聞いてくる。


「ああ。ちょっと仕事でトラブったみたいでさ…。忙しいのは知ってたから仕方ないよな…」

「えぇ。でも、1番楽しみに待ってたの潤哉くんですからね。さぞガッカリしてるでしょうね。」


ハァ~と2人が、1人来れない潤哉をおもっている時、ちょうど清雅のスマホが鳴った。



「あっ!ゴメン!俺だ。…………………!!」

清雅は表示された名前を見て、少し困った顔をした。


「清?どうした?」

慧翔はなかなか電話にでようとしない清雅に声をかける。


「う~ん。ちょっと話てくるね」

清雅は、困り顔のまま誰もいない隅に駆け寄り、話はじめた。2人は立ち止まり電話が終わるのを待った。


「…。」

「あれ?何か清雅、険しい顔してない?」

「…そうですね。」

「もしかして、問題発生?」

「はい。ちょっとバタバタしてるみたいです。」

章和は心配そうな顔で清雅が話てるのを見ていた。


「“森”の事だよな?」

「フフフ。慧さん“森”って呼ぶのすきですよね」

「俺にとってはあそこは“森”だからいいの!」


慧翔がいう“森”というのは清雅が運営している特別施設だ。
そこには小さい子供だけではなく、年齢もバラバラの大人達もいる。
だが、そこにいる人は皆、ある悩みを抱えていた。
そんな悩みを持った人達の拠り所として清雅は施設をつくった。

そんな場所を慧翔は“森”と呼ぶ。なぜなら___



「あっ、戻ってきましたね」

章和の視線の先を見ると、話が終わったのか、清雅がこちらへ歩いて来ていた。

しかし、何かを考え込んでいるようでいつもの明るい笑顔は無かった。



「……大丈夫なんですか?」

戻ってきた清雅に章和は心配そうに聞く。


「う……ん。」

やはり、どこか心ここに非ずだ。


そんな清雅に章和は何も言えないでいると


「何してるだ?早く行っていいぞ!」

慧翔が清雅に言った。


「えっ?慧ちゃん?」

驚いた顔をして、清雅は慧翔を見た。


「何年一緒につるんでると思っているんだ?章ほどじゃないけど、俺だってお前の顔みただけで解ることだってあるぞ!」

慧翔はフンッと鼻息荒く答える。


「えっ…でも…叔父さん達にまだ挨拶もしてないし、慧ちゃんの自慢の庭だって___」

「何言ってんだ?挨拶なんかいいんだよ。いつでも会えるだろ?それに、庭だって逃げたりしない。此処にくればまたいつでも見れるんだ!」

慧翔はまだ動こうとしない清雅に続けて言う。


「清!今、お前が1番に考えている事は何だ?此処に残ることか?」


「………!慧ちゃんありがとう!うん!そうだよね!慧ちゃん、章。俺、帰るね!!」

清雅は考えていた顔を上げ、少し嬉しそうに慧翔と章和の顔を見て言った。


「ああ。ぐずぐずしてないで早く行け!それと、何か手伝える事があったら連絡しろよ!」

「うん♪ありがとう!その時は連絡する!」

「待ってる。じゃな!」

「うん♪じゃ~ね~♪」

清雅は2人に手をふって正面入口へと向かっていた足をピタッと止め、また2人の方に小走りで戻ってきた。


「ど、どうした??」

慧翔は慌てて聞く。


「ゴメン!!慧ちゃん。お祝い言うの忘れてた~ホテルオープンおめでとう♪次こそは庭見に来るからね~」

清雅は、んじゃ!とまた2人に手を挙げて今度は小走りで帰って行った。


「今更かよ~~~」

慧翔は走って行く清雅の背中に笑いながら嘆いていた。


慧翔の隣で黙ったまま2人を見ていた章和も、あっ!と何かを思い出したように慧翔を見て


「慧さん。おめでとうございます」

頭をぺこりと下げて言った。



「お前もかよ~~~今更感半端ね~~!」


2人は顔を見合わせてアハハと笑いあった。