またまた原田マハさんの小説。

今度は絵画とは関係がない、と思っていたら、あら、途中で出てきました。

東山魁夷の「緑響く」。

読んでいて吐きそうになるくらい辛い壮絶ないじめからひきこもりとなった

24歳の麻生人生。カーテンの閉め切った暗い部屋でオンラインゲームに興じ、

昼頃起床して、コンビニのおにぎりを空腹を満たすだけに食す。

生活は父と離婚したシングルマザーの母親に頼るしかない状況の中で

突然母がいなくなった。

さて、大変。携帯と家賃は振り込んでくれるというが、これからどうしてよいのか。

ようやく真っ暗なアパートの一室から出た人生は、

今や音信普通になった、蓼科に住む父方の祖母、マーサばあちゃんを訪ねる。

テレビも電話もない蓼科の昔ながらの生活の中で、父の再婚相手の娘、

つぼみと出会い、さらに周りの人々に助けてもらいながら変わっていく人生。

同時に生活態度はもちろん言葉遣いまでも変わっているのが興味深い。

ふとしたことから、昔ながらの米作りに携わるようになり、

米と同時に人生やつぼみの人生も大きく成長していく。

母への感謝、募る想いもあふれ出すところで涙する。

マハさんの米作りの描写があまりにも素晴らしく、おにぎりが食べたくて

しょうがくなくなった。

 

この小説は、人生の成長記録もそうだが、ひきこもりや介護問題、農村問題、

そして認知症の問題までも描かれている。

 

東山魁夷の「緑響く」がどのようにこの小説を響かせているのか・・・。

すがすがしく、心があったかくなる本書。

さすがです。