偶然で驚いたが、著者、川上未映子さんは現在、読売新聞の朝刊で

「黄色い家」というタイトルで連載されている。

読売新聞の愛読者である私であるが、川上さんだと知りながら

本書を手に取ったわけでない。

読んでいくうちに、あれ?なんか物語の進め方や文体が読売新聞の連載と

似ていることに気が付いたのである。

何か、今惹きつけられるものがあったんだろう。

 

 

川上さんは大阪府生まれで、そのためか文章の中には所々大阪弁が混じる。

その上、地名も「笑橋」に変えているが、これは「京橋」?であったり、

天保山周辺の観覧車や海遊館のことなんだろうと想像できたりして

楽しい。

しかし、内容は、そんなに笑えるものではなく、結構ヘヴィーだったりする。

主人公夏目夏子は、大阪から小説家を目指して上京。し

かし、家賃を滞納するくらい生活がギリギリの状態。

冒頭に貧乏か否かを知るには、育った家の窓の数尋ねるのがてっとりばやい、とある。

夏子自身も窓がほとんどない家で生まれ、暮らし、働かない父親は蒸発、

母親と姉と3人で暮らしていたが、どうにもこうにも行かなくなり夜逃げし、

祖母の家に逃げ込んだという、すごいおいたちを持っていた。

成人し、中年に差し掛かっている中、

姉も女の子を産むが、父親は誰か分からず、場末のスナック勤め。

その女の子も高校生となった今、母親と半年も口を聞いていない。

あ、、、暗すぎる。読んでいて、なんて陰気な小説なんだろうと、何度も本を閉じた。

夏子は性交渉ができないことで唯一お付き合いした男性とも別れるが、

38歳のころ、自分の子供に会いたいと思い始め、精子提供で産むことを

調べ始めることから、少しづつ物語が方向転換していく。

見ず知らずの男の人の精子を提供してもらい、妊娠する・・・。

正直、考えたことがなかったし、そんなことをする人がいるということも理解できない。

でも、本当に子どもが欲しいと考えている人にとっては

そこまで追い詰められ、考えることなんだろう。

しかし、それで生まれてきた子供は・・・。

夏子は、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていくことで

自分をみつめなおす。

そして・・・。

夏子が子供を出産することも細かく描かれている。とても感動的であるが

昨今の児童虐待や育児放棄者も出産のときは、このように愛しさを感じたのでは

ないか、でもなぜそのようになっていくのか。

子どもを出産していない私にはきっと理解できないことなのだが

もし、子供を産んだ女性がこの小説を読んだら

どのような感想を持つのか興味がある。