誰でも思い出してほっこり幸せな気分になる時を持っていると思う。本書は、そんな甘酸っぱい幸せな日々が詰まっている。先生とはドイツ人医師シーボルト。お庭番とは長崎・出島にあったシーボルト先生の薬草園を作った園丁熊吉。熊吉を通してシーボルト先生と奥方、そして使用人たちがいきいきと描かれている。
物語は江戸後期。日本地図を国外に持ち出そうとした「シーボルト事件」でその幸せな日々は打ち砕かれていくのだが、先生を慕い、先生の希望(日本の草木をオランダに生きたまま送り届ける)を叶えるため心血を注いだ熊吉。その一途さから先生や奥方に信頼され、さらに先生の弟子たちにも信頼を勝ち得る。そのひたむきな一生懸命さが清々しい。そんな幸せの中でどうしてシーボルトは、日本地図を国外に持ち出すという禁制を犯したのか。もしかしたら、ドイツ人であるという差別(出島にはオランダ医師として派遣されていた)に対し、誰もが欲しがる日本の地図(沿岸の様子が分かれば貿易も戦いも有利になる)を盾に本国オランダで認めさせようとしたのではないだろうか。しかし、その行いにより、シーボルトを慕っていた日本の弟子たちそして熊吉までも厳しい取り調べをされることになり、中には切腹させられた者もいるという。
幸せの中にある人間の愚かさも描いているのでは、と感じた。

物語は江戸後期。日本地図を国外に持ち出そうとした「シーボルト事件」でその幸せな日々は打ち砕かれていくのだが、先生を慕い、先生の希望(日本の草木をオランダに生きたまま送り届ける)を叶えるため心血を注いだ熊吉。その一途さから先生や奥方に信頼され、さらに先生の弟子たちにも信頼を勝ち得る。そのひたむきな一生懸命さが清々しい。そんな幸せの中でどうしてシーボルトは、日本地図を国外に持ち出すという禁制を犯したのか。もしかしたら、ドイツ人であるという差別(出島にはオランダ医師として派遣されていた)に対し、誰もが欲しがる日本の地図(沿岸の様子が分かれば貿易も戦いも有利になる)を盾に本国オランダで認めさせようとしたのではないだろうか。しかし、その行いにより、シーボルトを慕っていた日本の弟子たちそして熊吉までも厳しい取り調べをされることになり、中には切腹させられた者もいるという。
幸せの中にある人間の愚かさも描いているのでは、と感じた。
