今年の桜の季節に購入した本書「道三堀(どうさんぼり)のさくら」。山本一力さんの本。ずっと山本さんの本を読みたいと思っていたのですが、機会がなく今回初めて読ませていただきました。読後の一言。登場人物全てが正直に生きていて、すごい良い。人間の弱さと強さ、許せることと許せないこと。やり直せることとやり直せないこと。出会いと別れ・・・。全て本書に詰まっている感じがしました。
物語は、東京・道三堀から深川へ、暮らしに欠かせない飲み水を届ける水売り、龍太郎を中心に描かれています。水売りという職業があったことに驚かされましたが、その水売りという仕事に誇りを持ち働いている龍太郎と同じ職場の人々。そして一日一日を懸命に生きている市井の人々。龍太郎には蕎麦屋の娘・おあきという許嫁がいるのですが、日本橋のある大店が蕎麦屋を出すという。出店にあたっておあきの蕎麦屋と大店とのやりとり、そしておあきと龍太郎との関係が、微妙に変化していく。本当の人間模様を描き出してて、おもしろい。せつなく、そして清々しさも残る本書。江戸の人々も今を生きる人々にも共通することが多いことにも気づかさせられました。
別の日にこの本の感想を書いたものが出てきたので・・・。
龍太郎とおあき、万事うまくいっていた仲が突如、団四郎の登場でうまく行かなくなってきた。結婚をしたいと両方の思いが一緒になるのはあるとき、タイミング。長い春は、ない。安っぽい映画のように、また元の鞘に収まってチャンチャンと終わらないのもこの小説の良いところ。龍太郎がおあきとのことの長いトンネルから抜け出すことができたのは、自分が本当やりたいことに気づいたから、というものすごくよかった。