ご多分に漏れず菓子好きの私。デパ地下に行くと売り場をウロウロ。それだけでもハッピーだけど、お菓子を買うとさらにハッピー。でも結局買ってしまうのは洋菓子。いちごのケーキやタルト、シュークリームにプリン・・・。お持たせでも見栄えのする洋菓子を選んでしまいます。この本を読むまでは。

和菓子の魅力が主人公、梅本杏子(通称:アンちゃん)がデパ地下の「和菓子屋 みつ屋」でアルバイトを始め、ひとつひとつ勉強していくことから描かれ始めます。地味だと思っていた和菓子の物語がページを読み進めるたびに溢れていきます。洋菓子にはない和菓子の歴史、奥深い魅力、美しさ。特に上菓子は、職人が知恵を絞り月毎に季節も考えられ作り出されています。大福やもなかなど馴染みのある和菓子にも物語があり、すぐにでも売り場に行きたくなるのです。

そして、ただ和菓子の魅力がつらつらと書かれているのではないのが本書。お客様が和菓子を選ばれるのに、なぜその商品を購入したのか、和菓子に託されたメッセージは?などなど殺人事件ではないミステリーというか、微笑ましい物語も展開されていきます。読中から和菓子コーナーに行ってしまったことから、本書のおもしろさは本物です。

 

和菓子のアン

 

和菓子のアン

坂木 司 著

光文社文庫