実は、百田先生の「影法師」を読むのは2回目。 以前読んでいたのですが、表紙が違ったので、本屋で中身を確認せずに購入してしまったのでした。

今回読むのをどうしようかと思ったのですが、しかし・・・今回も涙でした。1回目に読んだときとはまた違う感動。

物語は、北陸の小藩での物語。武士が生まれた家で階級分けされていた時代。一番格下の下士で出世は見込めないと思っていた勘一は、下級武士から筆頭家老にまで上り詰めていた。江戸から自分の藩に戻ると同時に、竹馬の友、彦四郎を探していたが、不遇の死を遂げていたことを知る。そして、その死を探るうちに自分の出世の秘密を知ることになる。すべてにおいて彦四郎が勘一を、そして藩の行く末を見越して起こした行動だった。

 

人は、こうまでして自分を犠牲にできることなのか。自分の命と引き換えに藩のために、また、その願いを友に託すためにできることなのか。そして、愛する人のために・・・。その答えは、近代にもあったと気づいた。それは、第二次世界大戦。国のそして家族、愛する人のために命をかけて戦ってくれた人々がいた。その人々の上に今の私たちがいる。そのことを、百田先生は、この影法師に、そして大ベストセラー作「永遠の0」で描いている。戦後、昭和天皇は身を挺して国民を守ってくれた。今一度私たちは、その物語ではない事実をもう一度見直すべきときに来ているような気がしてなりません。折に触れ読み返したい名作です。

 

影法師 百田尚樹著 講談社文庫