織田信長、豊臣秀吉、徳川家康・・・と続く戦国時代。主人公を支える脇役たちにスポットライトをあてた歴木小説を数々読んできたが、本書は、さらに掘り下げた名脇役たちを描いている。「信長の棺」「秀吉の枷」「明智左馬助の恋」と本能寺三部作で話題を呼んだ加藤廣さんの本。読み応えのある「平手政秀の証」「伊吹山薬草譚」「山三郎の死」「天草挽歌」の四編が収められている。中でも「平手政秀の証」は、織田信長の守役だった平手政秀の自害の謎を解明。一般には、信長の寄行を戒めるために自害したと言われているが、実はそうではなく、信長の父が死ぬ前に長子信行よりも次男の信長を後継者に指名していたということを証明するためであったという。さらに、父の葬儀の際に抹香を投げつけたのは父の位牌ではなく、自分に内緒で葬儀を行った兄と母であったという。そのような節もあるだろう。だから歴史小説は、おもしろい。

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文春文庫