先ごろお亡くなりになった作家の山崎豊子さん。「白い巨塔」や「不毛地帯」「沈まぬ太陽」など映画やドラマ化された名作を数々世に送り出されていました。ただ、私は1冊も読んだことがなく、今回書店で特集されていたので、手に取ってみました。まずは、短編5編を集めた「しぶちん」を。・船場狂い ・死亡記事 ・持参金 ・しぶちん ・遺留品の5編。どれもこれも、正しい船場言葉や大阪弁が使われていて大阪人の私にとってはすんなり頭に入って情景が目に浮かぶようでした。どれもこれもどこか大阪人の愛嬌と心意気、奥に秘められた思いが満載で読んでよかったです。中でも持参金と遺留品は、山崎さんがちょっとしたスリラーとおっしゃっているだけあって、最後になるほど~との思いを持ちました。私はこの5編の中では、遺留品が一番好きです。秘書であるヒロインが、突然の飛行機事故で亡くなった社長を偲ぶ話。子供がいない社長の遺留品にドライ・ミルクの缶があった。生前は人格者として尊敬を集めていた社長だったが、この遺留品のために、周囲は隠し子の存在を疑い始める。仲の良い夫婦というのは虚像だったのか?ヒロインはその謎を突き止めようとするのだが・・・。最後の終わり方もいやらしくなく、すっきり感があります。
山崎さんの文体はどれもこれも正しい日本語と船場言葉と大阪弁を教えてくれるようです。それもそのはず山崎さんは毎日新聞に所属していて、あの井上靖さんの指導を受けられたとか。今度はしばらく山崎豊子さんの本を読み進んでいくことにします。