本屋さんで本を選んで購入。そして、読み進める。なんて幸福な時間なんだろうと思う。私の選び方は、帯や解説を少し読むのはもちろんですが、だいたいは「ぱっと見て」です。だから読んでみてのお楽しみ、が多いのです。
今回は、本の表紙に魅かれて購入。
物語は、東京の半導体メーカーに勤める田宮里江子。東京支社勤務となり、ひょんな事がきっかけで、大学時代の親友聖子の夫・長谷川岳志と10年ぶりに遭遇する。岳志は、親友の恋人でありながら、初対面でいきなりプロポーズしてきた男であった……。再会してもなおプロポーズする岳志の申し出にはじめは、無視し続けた里江子だったが、親友聖子から、もう姿を現さないでほしいと懇願され、アメリカに。しかし、離れてみて岳志が言い続けていた通り「運命の人」だったことが解り始める里江子。気づいたときには、岳志は、帰らぬ人となっていた・・・。
新聞各紙(讀賣新聞、日本経済新聞)で取り上げられ話題となった恋愛小説。何度も読んで、何度も涙するという読者が続出した。ということだったが、私は、少しも涙はおろか、感動もしなかった。

不倫の常套句「運命の人」・・・を連発するこの手の小説には、正直腹立たしさを覚えこそすれ、感動はない。聖子と岳志の関係は、置いといて、この夫婦には子供が2人おり、その子供たちの気持ちはいったいどうなるのだろう。「運命の人」と、本来はもっと崇高な言葉であるはずなのに、こう軽く連発され、子供たちはきっと納得するはずはない。また、自分の想いを遂げられなかった岳志は、自死を選ぶ。これも言葉が出ない。自死を選んで何が解決するのだろうか。かなりガッカリした作品であった。


白石一文著
鉄筆文庫